センゾク。1

女性もえっちな妄想をしてもいいんです。
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アダルトな読み物のお部屋

センゾク。1
2021年07月10日 10時26分
ファーストレディ69

1.

 ピンポーン──
「‥‥んっ?今はぁ‥‥1時かぁ。まぁまぁ寝たな‥‥。はぁーい。」
 彼は目をしばたかせながら、むっくりと起き上がった。昼下がりの光が部屋にさんさんとさしこんでいる。
「おーい。カヲルー。いますかぁ?」
(んっ?ちょっと落ち着いていて柔らかいこの声は‥‥)
 彼が開けたドアの先に、声の主がオフホワイトのコートにチョコレート色のブーツ姿で立っていた。カシミアの深紅のマフラーがダークブラウンの髪と色白の肌に良く映えている。
「恵‥‥。ひさしぶりじゃん。入んなよぉ。」
「‥‥ゴメン。もしかして寝てた?」
 ぼさぼさ頭に白いTシャツ、グレーのスエットズボン姿の彼を見て、彼女は申し訳なさそうに謝った。
「んー。仕事終わって帰ってきたのが今朝の8時で‥‥。おぉ!これはっ。」
「昨日作りすぎちゃって‥‥。食べるかなぁと思って。」
 彼女は持っていた容器を差し出した。
「へー。肉じゃがぁ。俺、恵の作った料理食うの初めてだよなぁ。どれどれ‥‥」
「おなか空いてるの?」
「最後に食べたのが昨日の昼飯。」
「‥‥適当に用意しとくから、着替えておいでよ。」
「はーい!。着替えてきまーすっ。」

 コートを脱いで部屋にあがり、別室の彼にキッチンの使い勝手を聞きながら食事の用意をしている彼女は椎川恵27歳。そして恵のインターホンで起こされ、着替えている彼は城山カヲル29歳。ブレイク目指して奮闘5年目の歌手である。

「はい。出来ましたよー。」
「いただきまーす。おっ、なかなかじゃあないですか。」

 二人の出会いは2年前、横断歩道の真ん中で楽譜を撒き散らして往生していた彼を、近くの会社で秘書を勤めている恵がたまたま通りかかって手伝ったのがきっかけ。いま豪快に肉じゃがを頬張るカヲルは、少し小柄だが大きな目のきりりとした顔立ちでまあまあの容貌、と言えよう。が、実際の彼は言動・行動共にかなりの『おっとり君』である。もっとも、本人はあまり自覚していないようだが。
 それゆえ2年前『歌手:城山カヲル』を知らずに『城山おっとりカヲル君』と出会った恵は、初めてライブで歌っているカヲルを観た時に本当に同一人物かと目を疑ったほどである。そのギャップときたら‥‥。
(普段もこの半分でもいいから輝いてれば、ねぇ‥‥)
 彼のライブを観に行って、恵がそう思ったことは一度ではない。
 それに対して秘書をしている恵は、仕事柄凛とした雰囲気を持ちながらも、笑うと何ともいえない愛嬌がある表情豊かなこげ茶色の目が特徴的で、本人は気づいていないようだが社内の男性の間でもなかなかの人気だ。性格はいわゆる『しっかり屋さん』で、ものの考え方は保守的ともいえる常識派。偶然カヲルの事務所の近くに恵の会社があるので、たまに仕事中の恵を見かけることがあるが、そつがなく万事整った仕事ぶりの様子に(ホントに俺より年下なのかよぉ‥‥)と、カヲルが思ったことは一度ではない。
 このように二人は仕事も性格も正反対。だけどおっとりしたカヲルとしっかり屋の恵はなぜか気が合い、勤務先が近いこともあって歳こそ逆だが、仲のよい『姉弟』のような友達づきあいをしている。

「あー。食ったぁ。いやー美味かったよぉ。」
「ふふっ。よっぽどお腹すいてたんだね。」
 またたく間にカヲルは肉じゃが定食を平らげ、恵はお茶を淹れるべく流しに立った。
 このようにいつもお姉さん役の恵ではあったが、今日はカヲルに相談したいことがあって彼を訪ねたのだった。内容が少々気恥ずかしくて恵は流しのほうを向いたまま話し始める。
「あのさ。カヲル。」
「んー?」
「相談があるんだけど。」
「なにさ?」
「私、この前結婚を前提にしたお付き合いっていうのを申し込まれて‥‥。どう思う?」
「‥‥どんな奴なの?」
「会社の社長の息子。優しくておだやかな人だよ。」
「恵はどう思ってるんだよ?」
 流しのほうを向いている恵にはカヲルの表情は見えない。ちょっと高めでおっとりとした彼の口調はいつもの通り。照れくさくて口にしたことはないが、恵は優しくてそこはかとなくセクシーなカヲルの声が大好きだ。
「んー。いい人っていうのは分かる‥‥。でもその先は‥‥」
「‥‥」
「‥‥ねぇ?」
「!!」
(えっ!?)
 突然、カヲルが恵の背中を抱きしめた。

どくっ‥‥。どくっ‥‥。

 多分いつもより強くて早い彼の鼓動が恵の背中を伝う。
「‥‥じゃあ、もうひとつ質問。俺のことはどう思ってるんだよ?」
 カヲルの声が少しかすれた。しばらくして彼は意を決したように息を吸う。
「‥‥俺は恵のこと友達だなんて思ってない。初めて会った時から好きだった。
 ずっと言えなかったけどな。でも今言わないと俺‥‥」
 カヲルは恵を振り向かせ、まっすぐな瞳で彼女を見据えた。
「カヲル‥‥」
 恵は突然の告白に驚いた。彼女を見るカヲルの瞳はまっすぐで切なくて、それを見た恵はなぜか彼と知り合ってからのことを次々と思い出していた。
 初めてカヲルのライブを観に行って別人のような彼に驚いていたら、いきなりステージの上から『恵‥‥。来てくれたんだぁ!』と叫ばれ、(数こそ少なかったが)熱狂的なカヲルファンに帰り道、囲まれてしまったこと。
 二人で飲んで終電を逃し、タクシーに乗ろうとしたら『星がきれいじゃーん。見ないともったいないよぅ。』と言うカヲルと一緒に星を見ながら電車4駅分もの距離を歩いて帰って、次の日会社を遅刻してしまったこと。
 いつもどっか抜けてて困った結果になってしまうんだけど、あの瞳で心底困ったように『あれー?ごめんっ。』って一生懸命謝るカヲルが何だかかわいくって、『しょうがないなぁ。』っていつも苦笑いして‥‥。
 思えばホントに嫌だと思ったことなんて一度もなかった。
 それだけじゃない。
 初詣で凶を引いて凹んだ時『もうすでに凶を引いたんだから、今年はそれ以上ヤな事なんてないよぉ。』と言っておごってくれた屋台のたこ焼きを一緒に食べたこと。
 仕事が失敗続きで自信をなくした時、じっと話を聞いてから『その自信のない状態が今の自分の実力だと思えば、がっかりしなくていいじゃない。』と言って優しくぽんぽんと頭を叩いてくれたこと。
 カヲルのちょっと不思議な言葉は、弱っている時の心にすごく温かくしみていつも元気にしてくれた。
 そして、出会った日に夢を追いかけてきらきらしている彼の目を眩しいと思ったこと‥‥。
(私、カヲルのこと‥‥)
 恵は自分の気持にやっと気づいた。いや、本当は不安定な夢を追うカヲルを男性として見るのが怖かったのだ。でももう──。
「‥‥私ずるくって、今までカヲルへの気持ちに正直に向き合えなかったんだ。」
 消え入るような声だったが、まっすぐな彼の心と瞳に精一杯応えたくて恵は正直に呟いた。
「恵‥‥」
 彼女が自分を『男』としてではなく、『弟』のように見ていた理由‥‥。二年間恵だけを見つめていたカヲルは、彼女の一言で全てを理解し、一瞬びくりと身を硬くしたが、
「仕事と自分に自信が出来てから気持ちを伝えるのが男の責任って、ずっとそう思ってた。今はこんな状態でしか言えなくてゴメン。でも恵を誰にも渡したくないし、俺は恵じゃなくちゃだめなんだ。順序は逆になっちゃったけど、俺、絶対頑張っていつか必ず仕事と自分に自信のある男になる‥‥。だから俺のそばにいて。」
と、言った。普段おっとりしてあまり物事に動じない彼の、初めて聞く震えた声だった。
「カヲル‥‥」
 恵は彼を見た。いつも優しく彼女を映す二重で黒目がちな彼の瞳も、今は震えている。
「‥‥私もカヲルじゃなくちゃだめみたい。今までずるくて、ごめん。」
 恵はカヲルの体にそっと腕を回した。もはや彼の瞳を失うことなど出来るはずがなかった。
「恵‥‥」
「‥‥ん。」
「愛してる‥‥」
 カヲルは恵の耳にそっと囁いて、薄くて形のいい唇を彼女の唇に重ねた。恵は少しの照れくささと、彼の温かさに包まれる心地よさに身を任せた。
「恵の唇ってやわらかいんだな‥‥」
 初めて味わう恵の感触に思わずカヲルはそう呟いたが、次の瞬間、彼は恵の口に舌を差しこんだ。初めて見せる強引なカヲルの表情に恵は少し驚いたが、同時にそんな彼も魅力的だ、と思った。彼の舌は彼女の舌に絡み、歯茎をなぞったり唾液をすすったりして優しく、でも息が出来なくなるほど貪欲に彼女の口内を犯し続ける。

くちゅっ‥‥。くちゅっ‥‥。

「んふっ。ん‥‥」
「んくっ。はあ、はあっ‥‥」
 そしてカヲルの舌が恵の上あごをざらりと舐めたあげた時、彼女の体に戦慄が走った。
「!!。んんっ。ああん‥‥」
(やだ、私‥‥)
 喘いでしまった恥ずかしさに、思わず恵が目をあけると、黒目が潤んでほんのりと上気したカヲルが熱っぽく恵を見ていた。その匂い立つような男の色気に満ちた顔に彼女の胸はどきり、と高鳴る。
「恵‥‥。俺もっと恵を知りたい。なぁ‥‥。いい?」
「‥‥ん。カヲルにだったら‥‥」
「‥‥サンキュ。」
 カヲルの唇は再び恵の口をふさいだ後、彼女の首筋や鎖骨のあたりをいつくしむようにゆっくりと這った。彼の手は優しく恵のシャツのボタンを外し、シャツはそっと恵の身体から離れて彼女の肌が外気にさらされた。
「きれいだ‥‥」
 そんなに大きくはないが形の良い胸、なめらかで白い肌、きゅっとくびれたウエスト。
 カヲルはシルクの下着に包まれた恵を見て、そう思わずにはいられなかった。
「そんなことない‥‥。私より綺麗な人なんていっぱいいるよ‥‥」
「‥‥分かってないなぁ。」
 彼は恥ずかしそうに目を伏せている彼女のブラの上にそっと手を添えると、ゆっくりともみ始めた。
「ん‥‥んっ‥‥」
「恵は誰よりも綺麗だよ‥‥。分かった?」
 実際カヲルにとって恵は今までの誰よりも綺麗で、愛しくて、そして欲情する存在だった。
「ん‥‥はあっ‥‥ありがと。」
 薄く目を閉じて頬を桜色に染め、鼻にかかったような甘い声‥‥。今まで知らなかった恵の表情を目の当たりにし、くらりとしたカヲルはたまらずブラの中に手を差し込んだ。
「あんっ!‥‥」
 カヲルの手が恵の胸を直接まさぐる。彼のぬくもりが自分の胸を這う恥ずかしさに恵は少したじろいだが、ほどなくカヲルは優しく彼女のブラを外した。

ちゅっ、ちゅっ‥‥。

 カヲルの唇が音を立てて彼女の乳首をついばむ。
「ああん‥‥。あっ‥‥」
「感じてるの?嬉しいよ‥‥。ねぇ、こうしたらもっと気持ちいい?」
 そう言ってカヲルは彼女の乳首に唇を這わせ、舌でコロコロと転がす。
「んんんっ!!。はああんっ‥‥」
「すげぇかわいいよ‥‥。もっと気持ち良くなってその声俺にいっぱい聞かせて‥‥」
 カヲルは存分に彼女の乳首を味わい、彼の唇は肩やおなかへと移っていった。そして彼の右手が恵の下腹部に届いた時、既にそこは下着の上からもはっきり分かる程ぬかるんでいた。
「あっ‥‥!」
「すごい濡れてるよ‥‥」
「相手がカヲルだから‥‥」
 カヲルの首に腕を回し、恵は恥ずかしそうに彼の耳元にそっと囁いた。
「‥‥俺の為にこんなになってくれてアリガト。」
 恵の言葉に胸がいっぱいになったカヲルは、左腕でぎゅっと彼女を抱き寄せキスをした。
(恵‥‥。もっと俺で感じて‥‥)
 彼は恵の下着に手を掛けて彼女の下半身をあらわにし、右の中指で花びらを縦に割ってゆっくりとこすり始めた。

くちゅっ、くちゅっ‥‥。

「んんんっ。はあっ。あん‥‥」
「恵‥‥。もっと足を開いて‥‥」
「いやぁんっ!!。恥ずかしい‥‥」
「恥ずかしい恵も大好きだよ‥‥。俺にだけ恵の全部を見せて‥‥」
 彼の甘くセクシーな声に逆らえず、恵は少しづつ白く形のよい足をM字型に開いていく。
「きれいな桜色だよ‥‥。濡れてキラキラしている。蕾がぷっくり膨れているね‥‥」
「いやっ。いやぁ‥‥」
 カヲルの恥ずかしい言葉にたまらず恵は顔を覆った。しかし体の奥からはじゅんじゅんと温かい蜜が湧いてくるのを感じる。やがて彼女の蜜が絡みついたカヲルの中指が、彼女の蕾に触れた。
「ああんっ!!」
 恵の白い身体がわなないた。身体の奥がかあっ、と熱くなる。
「‥‥ここが気持ちいいんだね。」
 彼女が乱れる場所を知ったカヲルは、しばらく流れ出る彼女の蜜をそこにこすりつけ、身体を桜色に染めて喘ぐ恵の様子をうっとりと眺めていたが、ほどなく中指を彼女の奥に挿し入れ、ゆっくりと出し入れをしはじめる。
「ああっ!」
 恵の中は温かくてとろとろで、ざわざわと彼の指を締め付ける。カヲルは人差し指を追加し、二本の指を出し入れした。
「はああんっ!。あんっ、あん‥‥」
 彼女はたまらずカヲルにしがみつき、彼の耳には恵の甘い声が響いている。
(あっ!)
 カヲルが起こす快感の渦に翻弄される恵の目に、彼の男性自身が飛び込んできた。
 小柄だががっちりして筋肉質のカヲルの初めて見るそれは、大きく力強く漲っている。
「ねぇ‥‥。どうしたらカヲルは気持ちイイの?」
「えっ。」
 恵の言葉にカヲルはびっくりしたが、同時に愛しさがこみ上げてきた。
「ありがとう‥‥。でも、俺は恵がよければそれで‥‥」
 彼女の柔らかい髪を優しくなでながら愛撫を続ける。
「でも‥‥」
「いいんだ‥‥」
 彼女はカヲルの優しさと愛撫に蕩けてしまいそうだったが、恵は潤んだ瞳でカヲルを見つめ、自分の中で初めて生まれた気持ちを彼に伝えた。
「‥‥あのね、カヲル。正直に言うね。私今まで恋人がいたこともあって、その‥‥カヲルが初めてじゃないの。だけど相手をこんなに愛しく思ったり、満たしたいって思ったのはカヲルが初めてなの‥‥。だから‥‥」
「‥‥」
 カヲルは手を止め、じっと黙って恵を見つめた。長い沈黙が二人の間に流れる。
(どうしよう‥‥)
 こんなにも彼を好きになってしまった今、恵はこの彼の沈黙が恐ろしくてたまらなかった。しばらくしてカヲルは小さくため息をつき、苦味と甘味が入り混じったような複雑な表情で恵の瞳をじっと見つめたままゆっくりと口を開いた。
「‥‥正直に言うと俺は今、恵の過去の男に猛烈に嫉妬している。どんな男だったのか、何人だったのか‥‥。気が狂いそうな位だよ‥‥。自分の過去を置いといて我ながら勝手なんだけどさ。けど、俺もこんなに人を好きになって愛しくて満たしてやりたい、って思ったのは初めてで‥‥つーか、出会った時から俺は恵だけのものになっちゃったっていうか‥‥。だからさっきの言葉、妬けるけどすげぇ嬉しかった。」
「カヲル‥‥」
 恵はカヲルが起こす嫉妬の甘美さと、彼の気持ちが自分と同じだということに驚いた。
「カヲルも私と同じことを?」
「‥‥そだな。」
「カヲルは私だけのカヲルなの?」
「そ。二年も前からね。」
 カヲルは額をこつん、と彼女の額につけて少し照れくさそうに言った。彼の気持ちが彼女の中に流れ込む。恵はカヲルの頬にキスをした。
「‥‥私もカヲルだけのもんだよ。カヲル以外考えらんない‥‥」
「恵‥‥」
 恵のキスで彼の中にも彼女の気持ちが流れ込み、カヲルは優しく微笑む。
「ん?」
「カヲル印だ。」
「えっ?」
 彼は恵の首筋に深紅の印を付け、ぎゅっと彼女を抱きしめた。
「恵は俺だけのもんだから、誰にも渡さなーいっ!」
「んもぅ‥‥。カヲルったら。」
「へへ。」
「よーし。じゃ、恵印だ。」
「おわっ。」
「ふふっ。カヲルもこれで正真正銘私のもの。誰にもあーげないっ。」
 恵も彼をぎゅっと抱きしめた。いたずらっぽくキュートに笑ってカヲルを見る彼女の瞳‥‥。カヲルは彼女からもらった『恵印』によって、彼女を失うかもしれないと震えていた自分の心がゆっくりと、でも確実に溶けきっていくのを感じていた。
「すげー所につけたなぁ‥‥」
「‥‥カヲルもね。」
「くはは。印は目立つ所につけないとねぇ。しかし明日は何着よう‥‥」
「ふふ‥‥。そだね。」
 二人はため息をつきながら笑った。とても幸せだった。
「よしっ!。じゃあ、今日はお互いとことん気持ちよくなるってことで!。気持ちイイことは正直に申告すること!。分かったぁ? 恵?」
「あははは‥‥」
「何だよぅ?」
「いつものカヲルだ。」
「いつもの?」
 互いの気持ちが通じて心の震えから解き放たれたカヲルは、いつものおっとりとした茶目っ気を取り戻しつつあった。
「さっきまでのカヲルはすっごくセクシーでカッコよかったんだけどなぁ‥‥」
「ふーん。セクシーねぇ‥‥。俺はしっかり屋さんの恵も、かわいい恵も全部好きだよ。」
(いつもカヲルは直球なんだよね‥‥)
 恵の顔が桜色に染まった。まっすぐな彼の気持ちと言葉に彼女の心も自然とほぐれる。
「‥‥私もホントはどっちのカヲルも好き。」
「でも今は俺の腕の中で乱れてる恵が一番好きだなぁ。」
「‥‥カヲルったら。」
「はやく俺が一番好きな恵に戻って。返事は?」
「‥‥はぁい。」
 カヲルは午後の光が射すベットに恵を優しく押し倒すと、彼女の身体中にキスの雨を降らせた。まぶた、頬、耳たぶ、唇、胸、肩、わき腹‥‥。彼の形のよい薄い唇が触れるたび、彼女の身体は敏感に反応する。ほどなく彼の唇は彼女の下腹部に近づき、彼の舌が彼女の花びらを割っていった。
「ああっ!!。ダメぇ!!」
「‥‥どうして?」
「だって、きれいじゃないし‥‥」
 こんなことになるなんて考えてもいなかった恵が最後にシャワーを浴びたのは今朝だった。それゆえ彼に口で愛されることなど考えるだけで彼女は恥ずかしくて泣きそうだったが、カヲルは全く意に介さない。
「かんけーないね。俺は恵の全部が好きだってさっき言ったじゃん。」
「でも‥‥」
「いいのっ! 恵はこうされるの嫌い?」
「‥‥」
「嫌じゃないんでしょ? 正直に!」
 カヲルは優しい瞳で恵をじっと見た。
「‥‥うん。すごく恥ずかしいんだけどカヲルにだったら‥‥」
 恵は彼の優しい瞳に包まれながら思ったことを素直に口にした。
「すっげーかわいいよ。よくできました。」
 カヲルは恥じらう恵の髪の毛をくしゃりとさせて頭をなで、彼女の股間に顔を埋めて周りからゆっくりと中心に向けて舌を這わせ始めた。しかしカヲルは彼女の敏感な場所にはすんでの所で触れず、また元の場所に戻っては何度もその周辺ばかりを攻め続けてゆく。恥ずかしくて仕方がなかった恵も、いつしか彼の巧みな愛撫に翻弄されていた。

くちゅっ、くちゅっ‥‥。

「んっ、はあぁ‥‥。カヲル‥‥」
「‥‥なに?」
「んっ、ああんっ‥‥。何でもない‥‥」
「そ。」
 相変わらずカヲルは丁寧に恵を舌で愛するが、彼女が待つ場所に触れることはない。

ぴちゃっ‥‥。ぴちゃ‥‥。

「ねぇ‥‥」
「なぁにぃ?」
「あのぉ‥‥」
「だから何よぉ?」
 カヲルはすごく嬉しそうに恵の焦れた様子を眺める。
 たまらなくなった恵はついにキレた。
「もうっ!。カヲルのいじわるっ!。知らないっ!!」
「恵ちゃーんっ?な~んで怒っちゃったのぉ?どしてぇ?」
 大きな目をくりくりさせて嬉しそうにカヲルがたずねる。
「‥‥」
「黙ってたら俺、分かんないなぁ‥‥」
「‥‥だって。」
 カヲルに焦らされ続けた恵の顔は上気し、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
(かっ、かわいすぎる‥‥)
「泣くなよぉ‥‥。ゴメンっ。『気持ち良くなる』って約束だったもんな‥‥」
 自分の愛撫に翻弄され、理性と情欲が交錯して涙ぐむ恵に、もはやカヲルはメロメロだった。

ずちゅ、ずちゅっ‥‥。

「あんっ!!‥‥」
 待ちかねていた場所への甘美な刺激に、思わず恵は歓喜の声を洩らす。
「んんっ。くちゅっ‥‥。んはぁ‥‥。恵の蜜、甘くて美味しいよ‥‥」
「いやぁっ、いやんっ‥‥。そんなぁ‥‥。恥ずかしいよぅ‥‥」
「恥ずかしいだけ?」
 カヲルは彼女の女核を舌でつんつんっ、とつつく。
「あああんっ!」
「ねぇ、気持ちいい?」
「‥‥すごいよぅ。カヲル。」
「どこが気持ちいいの?」
「そんなこと、あんっ、恥ずかしくて、言えないよぅ‥‥」
「じゃあ、やめちゃうよ?」
「はあっ、はあ‥‥。だめぇ。やめないで‥‥‥‥トリスが気持ちいいのぉ。」
「はっ?何?きこえなーい。」
「‥‥リスぅ‥‥」
「もうひと押しー。」
 かわいい恵の口から恥ずかしい言葉を聞きたくて、カヲルはついいじわるになる。
「もうっ!ばかばかばかっ!。カヲルのいじわるぅ!!」
「はははっ。ごめんごめん。恥ずかしそうに焦れてる恵って、ちょーかわいい。」
 カヲルは彼女のぷっくりと膨れあがったクリトリスを唇に含んで皮をむき、剥き出しのそれをちゅるりと吸った。
「いやああんっ!」
 恵の白い身体はびくびくっ、と震え、背中が大きくのけぞった。
「恵‥‥。あれ?もしかしてイッちゃった?」
 恵の様子にびっくりしたカヲルが顔を上げる。
「ん‥‥」
 恵の息はまだ整わない。どうやら1度昇りつめてしまったらしい。カヲルの手、唇、舌、息、声、瞳‥‥。彼が恵に触れるたび、彼女は彼の優しさに包まれて満たされていくのを感じていた。こんな気持ちは初めてだった。
(私もカヲルを満たしたい‥‥)
 恵は彼の男性自身を握った。
「おわっ。」
 突然の恵の行動にカヲルはびっくりしたが、体は正直にぴくりと反応した。
「ねぇ‥‥。さっきの質問の続き。カヲル、どうしたら気持ちイイの?」
 しっとりと潤んだ恵の目がちょっと恥ずかしそうにカヲルを見つめる。
「‥‥えっ。」
「‥‥約束でしょう? 正直に‥‥」
 恵はゆっくりとカヲルの肉棒を右手で上下にしごき、左手は袋を優しくもみしだいた。
「くうっ‥‥」
 愛する恵の愛撫は、カヲルにとって過去の経験など話にならない程、甘美で刺激的だった。
「ねぇ‥‥。気持ちいい?」
 彼の耳にふうっ、と温かい息を吹きかけながらため息交じりにそう呟いて、恵はカヲルの肉棒をしごく速度を早める。
「ああっ。んっ、んっ‥‥」
 思わずカヲルの口から喘ぎが洩れる。彼のそこは熱く、びくびくっと大きく漲っていた。先端からはぬるりとした液が流れて、にちゃにちゃと恵の手の動きを助けている。
「カヲルも濡れてる‥‥。感じてるの?嬉しい‥‥。ねぇ、次はどうして欲しい?」
「えっ?、あっ、ああ‥‥」
 カヲルは『濡れてる』などと言われてどきまぎした。恵の甘い光を持った目、上気した頬、吸い付きたくなるような柔らかい半開きの唇、どれもセクシーでとてもきれいだった。
「口に‥‥」
「んっ?なあに?最後まではっきり‥‥」
「恵の‥‥恵の口の中に入れたいんだ‥‥」
「‥‥ん。いいよ。良く出来ました‥‥」
 恵は男性を口で愛するのはグロテスクで好きになれず、実は今まであまり経験がない。
(でも、カヲルになら‥‥)
 彼女は手の動きを止め、彼の肉棒にゆっくりと顔を近づけた。そして先っぽに少しだけ舌を絡ませた後、ずっぽりと一気に根元まで口に含んだ。
「んんんっ!!!」
(どうしたらカヲルは気持ちいいんだろう‥‥)
 彼女はそればかりを考えて、彼の肉棒を根元まで口に含んだまま裏筋に舌をべっとりと這わせて動かしたり、少し頭を持ち上げて亀頭の裏の縫い目のような所を舌先でつんつんと刺激したりして、ぎこちないながらも懸命に彼を口で愛した。
「はうっ‥‥。はあっ、はあっ‥‥」
 彼の身体が直接感じる刺激と、瞳を閉じた長い睫毛の恵が少し厚めの唇で柔らかく彼の肉棒を包み込んでいるという視覚とが、カヲルの下半身に激しい快感を与え、彼の切ない声が部屋に響く。
(全然イヤじゃない。ああんっ、こんなに大きく‥‥。カヲルが私で感じているんだ‥‥。カヲル‥‥)
 恵は口で男性を愛することに嫌悪を感じない自分に驚いた。それどころか口内全体にカヲルを感じて、彼女の頭の中は彼への愛しさが激しく渦巻いていた。

じゅぼっ、じゅぼっ‥‥。

「んあああっ‥‥。くぅ‥‥」
 いやらしい音を立てて恵はゆっくりと頭を上下させる。恵の唇は少しきつめに絞られて彼の肉棒をじんわりとしめつけながら動き続けた。
「ああっ!!」
 すさまじい快感にカヲルは身もだえした。そんな彼が愛しくて、彼女は更に激しく彼を口で愛し続ける。
 しばらくするとカヲルは自身を恵の口から抜き取り、潤んで熱っぽい瞳を恵に向けた。
「恵‥‥。ひとつになりたい。いい?」
「うん‥‥。来て。」
「そうだ。ちょっと待った。今これつける‥‥」
 ゴムをつけようと引き出しをあけるカヲルの手を恵はやさしく遮った。
「‥‥何にも邪魔されたくない。カヲルだけを感じたいの。だからそのままで‥‥」
 潤んだ瞳で恥ずかしそうに呟く。
「でも、恵‥‥」
「カヲルは私と直接するのはイヤ?」
「ばか。んなわけねーじゃん。俺だって‥‥。でも恵の体、大切にしたいんだ‥‥」
「‥‥ありがと。カヲルの気持ちすごく嬉しい‥‥。でもね、今日は大丈夫だから‥‥」
「‥‥ホントに?」
「うん‥‥。カヲル。」
「ん?」
「いっぱい愛して‥‥」
 恵を抱いたカヲルの腕がびくりと震えた。
「ああ‥‥。めいっぱい愛するよ‥‥」
(一刻も早く仕事と自分に自信のある男に絶対なってみせる‥‥)
 目を閉じて自分に身を任せる彼女の前で、カヲルはそう心に誓った。
 カヲルは恵を優しくベットに倒し、彼女を見つめてキスをした。
 そして彼女の充分に潤った場所に彼自身を擦り付けて互いを潤す。
「はあんんっ、んっ‥‥」
 彼の感触に恵は熱くなる。彼女の中からは蜜がとめどなく流れ出していた。
「いくよ‥‥」
 カヲルは恵の耳元にそう囁き、ぐいっと腰を落とした。
「くっ‥‥」
「ああんっ!」
(スゴイ‥‥)
 恵にとって彼は今までの誰よりも熱く、硬く、そして大きかった。すっかり潤っているはずなのに、まだ彼の半分も受け入れられない。
「‥‥大丈夫?」
「うん‥‥。もっとカヲルを感じたい‥‥。来て。」
 恵は自分の身体の全てがカヲルを欲しい、と叫んでいるような気がした。
「ああ‥‥。いくよ‥‥」
「あっ!んんんんっ‥‥」
「ううっ‥‥」
 ずぶずぶっ、と鈍い音がして、やっと彼女は彼の全てを受け入れた。

どくっ、どくっ‥‥。

 恵は自分の中でカヲルが息づいているのを感じていた。体全身にカヲルの体温を感じる。
「カヲル‥‥。熱くて硬いよぅ‥‥」
「ん‥‥。恵の中、あたたかくてざわざわしてる‥‥」
「私ね、カヲルをいっぱい感じてスゴク気持ちいい‥‥」
「ああ。俺もすげぇ恵を感じるよ‥‥。でも、もっと‥‥。動くよ。」
「うん‥‥」
 カヲルはゆっくりと出し入れを始めた。
「んっ、ん、ん、‥‥」
「ああん、あっ、あああ‥‥」

ぐちゅっ、ぐしゅっ‥‥。ずぼっ‥‥。

 彼が彼女を突くと彼の体が彼女のクリトリスに当たって恵は淫らな声をあげ、彼が離れようとすると彼女の襞は彼を包んで名残惜しそうに引き止め、カヲルもいやらしい呻き声をあげた。部屋には絡み合っている二人の声と音が響く。
「んっ、んっ‥‥。くっ‥‥」
「あっ、あああんっ、あんっ‥‥」
「んあっ、はあっ‥‥。恵‥‥。俺、お前ともっと深く繋がりたい‥‥」
「あたしも‥‥。カヲルと誰よりも深い所で‥‥。あっ、ああんっ。」
 カヲルは更に恵を激しく突き立て、彼女は彼の身体に両足を絡めていやらしく腰を振った。

ぐじゅっ、ぐじゅっ‥‥。ずぶっ‥‥。

「あああんっ‥‥カヲル。奥に当たってるよぉ‥‥」
「うああっ‥‥くうぅ‥‥」
 彼女の中は更にざわざわと彼をいやらしく包んで締め付ける。
(すげぇ‥‥。こんなの初めてだ‥‥)
 下半身が蕩けてしまいそうな快感に、彼の律動はじょじょにヒートアップしてゆく。
「んっ、んっ、んああ‥‥。恵‥‥。むちゃくちゃイイよ‥‥」
「はあんっ、あん、あんっ‥‥。カヲル‥‥。スゴくいいっ‥‥のぉ‥‥」
 二人は狂おしいまでの愛しさと快感に互いをむさぼりあい、出来ることならば溶け合って一つの個体になりたいとさえ願った。そしてその気持ちは大きな陶酔感の波となって二人を呑み込む。
「はあんっ‥‥。カヲル‥‥。好き好きっ!大好きぃ‥‥」
「んっ、んっ‥‥。はあっ‥‥。愛してるっ。愛してるよ‥‥。恵だけだ‥‥」
「ああん、あんっ‥‥。いやあんっ‥‥。私もう‥‥」
「んあああ‥‥。俺もそろそろ‥‥。イキそう‥‥」
「カヲル‥‥。いっしょに‥‥来て。中に出してぇ。」
「恵‥‥。お前かわいすぎて、俺、どうにかなっちゃいそうだよ‥‥」
「いやあああっ!! いっちゃう!!いっちゃうっのぉ‥‥」
「いくよ‥‥。出るっ、出るよ‥‥」
「ああんっ!!。あんっ。あん‥‥」
「うっ、あああっ‥‥」
 恵の中が激しく収縮し、頭の中はフラッシュをたかれたように真っ白になった。そしてそれとほぼ同時に、カヲルは自分の激情を彼女の中に吐き出した。

「‥‥‥‥おーい。恵?‥‥。だーいじょーぶー?」
 遠くからカヲルの声が聞こえる。はっとして恵は目をあけた。
「おぉ。目を覚ました。よかったぁ。」
 ほっ、ため息をついて優しい目をしたカヲルの顔がそこにあった。西日がシーツの上に長い影を落としている。
「私、どのくらい‥‥?」
「うーん。20分くらいかなぁ?」
「20分‥‥。へっ。そんなに!!」
「俺もちょっとびっくりしたよ。今までこんな長い時間気を失ってた奴、いなかったしなぁ‥‥」
「‥‥私、こんなになっちゃったの初めて。」
「そうなの?」
「そうなのって‥‥。カヲルの今までの女(ひと)達は、みんなこうして気を失ってたってことぉ?」
「あー。うーん‥‥大体そうかな。」
「‥‥巧いんだね。」
 歌以外のカヲルの『特技』を初めて知った恵は、その時その時の相手をまっすぐに、全力で愛したであろう彼の過去に少し嫉妬した。
「はははっ‥‥。そうかなぁ。でも、」
「でも?」
 カヲルは恵をじっと見た。
「本日づけでエッチ上手の城山カヲルは、めでたく椎川恵の専属クンになりました。」
「カヲル‥‥」
「つーか、恵を知っちゃったら俺、他の女になんか欲情できない。」
(多分この先ずっと‥‥)
 それは自分と仕事に自信が出来た時に必ず言おう、とカヲルは心に決めた。
「‥‥私だってカヲル以外なんて‥‥」
 その先に恵が考えていることがカヲルと同じだということを、二人はまだ知らない。
「じゃ、恵は喘ぎ上手で俺と専属契約結ぶ?」
「えっ?」
「俺のエッチ上手の源は恵の喘ぎ声なのだ。」
「んもうっ!。カヲルったら‥‥」
「ははっ。すっげえイイ契約じゃん?」
「‥‥ん。契約する。」
「はいご成約ー。」
「‥‥体もつかな?」
「何事も練習練習!」
「練習‥‥ねぇ。」
「そ。俺達二人だけでしか出来ないってヤツね。じゃ早速今から‥‥」
「えっ。」
「やんないのぉ?」
「‥‥よろしくお願いします。」
「はいよ~。専属クンの練習は厳しいからねぇ。覚悟しなよっ!」
「はーい‥‥」
 こうしてカヲルと恵の関係は『姉弟のような友人』から『恋人同士』へと昇格した。

『練習』開始から20分後――。
「‥‥やば。」
「どしたの?」
「今の時間ホントは俺、レコーディング中だったりして‥‥」
「えっ?‥‥早く着替えてっ! 車で送るから!」
「実に名残惜しいが‥‥。さんきゅ~、恵。」
「‥‥とほほ。」
「やっぱ俺は恵がいないとダメだねぇ。」
「はぁ‥‥。ホントこれじゃどこへも行けないわ‥‥」
「俺のエッチが巧いから?」
「そうじゃないでしょーが。」
「はははっ。送ってくれるお礼に夜飯おごるよ。それと‥‥」
「それと?」
「‥‥それとぉ、城山邸の合鍵とオプションでさっきの『練習』の続きをつけちゃう。」
 カヲルは恵の頬を両手で包んで優しくちゅっ、とキスをした。
「‥‥りょーかい。」
 恵の顔が桜色に染まる。彼女を桜色に染められるのは、もうカヲルだけだ。
「準備できたー。恵、よろしくぅー。」
「はいはい‥‥」

――恋人歴1日。
『姉弟のような恋人』を脱して二人が『完全な恋人同士』になるには、もう少し時間がかかりそうである。

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