それは彼女の誕生日のことだった。
「誕生日プレゼント、何が欲しい?」という僕の質問に対して彼女は照れくさそうに僕を指さした。
つきあって半年を過ぎている。当然、今までも普通にセックスはしているので、僕にはその意図が分からなかった。不思議そうな顔をしている僕に彼女は言った。
「今日は私の好きにさせて」
そういうことらしい・・・。
※
「動いちゃ、ダメね」
そういって彼女は下着一枚でベッドに横になった僕の手をタオルで縛った。決してきつくなかったので外そうと思えば外れるくらいだが、そこは彼女の意思を尊重し抵抗はしなかった。
しかし時間がたつにつれ、手が背中に回されているので結構本気で身動きがとれなくなってきた。焦りはじめた僕をちょっとうれしそうな目で見ながら、彼女も服を脱ぎはじめたかと思うと「見ちゃダメ」と言って、タオルで僕に目隠しをした。身動きがとれず、視界もふさがれた僕。部屋には彼女が服を脱ぐ音だけが響いている。
しばらくしてその音が止んだ。
彼女が近づいてくる気配はするもののどこにいるかは全く分からない。
ほんの少しの静寂の後、彼女がフッと軽く僕の耳に息を吹きかけた。突然のことに思わずビクリとのけぞる僕に彼女がささやく。
「怖い?イヤなら無理しなくていいよ」
「大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから」と僕が言うと、彼女は「スキ」といって僕の唇に唇を重ねた。
唇の間から舌が差し込まれてくる。彼女の舌は、僕の歯の間から口の中に進入し、ねっとりと僕の舌にからみついた。
心臓が早鐘のように鼓動を早める。
彼女の舌はますます大胆に、僕の口腔の中を暴れまくる。前歯の裏をなで、舌を絡ませ、強く吸ったかと思うと、大量の唾を送り込み・・・。僕はもう彼女のなすがままである。当然のことながら下半身が、頭をもたげはじめる。
二人の口からは「ううんっ、うっ、ぷはっ、むうっ・・・」という声が漏れるように聞こえてくる。そのうちに彼女の唇は僕の唇から離れ、耳から首筋へそして上半身へと移動し、体中にキスを浴びせる。そして手の方は最初はちょっと遠慮深げに、そして次第に大胆に、脇腹といわず、足の裏、耳たぶ、太股など、身体のありとあらゆる箇所を、柔らかく刺激する。
ついに下着越しに僕の中心を確認し、指先に力を入れゆっくりと手を上下に動かし始めた。同時にゆっくりと体を重ねてくる。その時はじめて彼女が何も身につけていないことを確認できた。
再び唇を重ねてきたかと思うと、単純な上下の動きから指全体を使ったなめらかな動きに変化した。中心は一気に極限まで膨張し、とてもこれ以上の刺激には耐えられそうにない。
思わず「あっやばい」と声をあげると、彼女がささやく
「いいよ」
その声につられ僕は早くも最初の絶頂を迎えた。
白い精液をほとばしらせたパンツの膨らみは、未だ彼女の白い手によって掴まれたままだ。射精の余韻にぼーっとしている僕を後目に彼女の手はパンツに手をかけ、そして一気に引きさげた。
彼女の体が僕から離れる。
「もうちょっと待っててね」
そう言いながら、ゆっくりと僕の下半身に近づくと、いきなりペニスに手を伸ばし、そして顔を近づけてフッと息を吹きかけた。
──びくっ。
僕の体が大きく反り返った。
無防備にそそりたったままの男性自身に、細い指が絡まり、そして一本一本の指が、まるで生き物のように動き始めた。
ぐちゃ、ぐちゃ、ぬちゃっ、彼女の指の動きにあわせて、ペニスからは淫らな音が室内に響き渡る。全身に電気を通されたような衝撃が走り、彼女の指先の動きに合わせて、僕の身体がビクビクと震えだす。それはまるで指一本で演奏する楽器のように、僕の身体が自由自在に操られているかのようだ。
背筋から全身にかけて、ズーンと快感の刺激が走り抜け、頭の中をかき回す。ついさっき射精したばかりというのに、僕の中心は彼女の指が奏でるハーモニーに翻弄され、さっき以上に、そのこわばりを維持し続けていた。
彼女の指はまるで猫がネズミをいたぶるかのようにキュッとつかむと、じわじわと手を先のほうへと滑らせていく・・・。僕はあまりの快感に何とか体をうごめかして無駄な抵抗を試みる。
そう。もうさっきから何度も試みている無駄な動き。
でもこのどうしようもない感覚から逃れるすべはない。
彼女の手がゆっくりとまた根本へと移動し、そしてまた裏すじから先端へと移動する。
そして・・・。
そのとき・・。
彼女が僕の体の上に乗りかかって来た。
彼女の手の動きがますます激しくストロークを繰り返し、そこへ唇が覆い被さった。むにゅっ、という感じで、彼女の唇と舌が、反応を極限まで高めていた僕の神経の中心をとらえた。全身を駆けめぐる快感の渦の中で、どうしようもなく行き場所を失っていた、神経の束が一気に極限へ向けて走り出した。
しかも彼女の舌の動きが、これまた絶妙だった。カリの部分から、裏すじにかけて、ねっとりとそして激しく、ジャブを繰り出してきたからたまらない。
目がふさがれている分、全身が彼女の口に含まれ、何ともいえない快感の海を漂っているかのようだった。
──どばどばっ
全身をぶるぶると震わせながら、僕がその日の2回目の噴出を遂げたのは、彼女がフェラチオを始めてから、ほんの数分しか経っていなかった。頭の中が真っ白になるような快感に支配されて、あっというまに絶頂に達してしまったのだった。
下半身では彼女が依然としてペニスへの攻撃を続けていた。
唇をすぼめてペニスの先端からほとばしったエキスを、一滴残らずに吸い取る。それは全身の精力を吸い取られていくような感覚だった。
さらに彼女の柔らかい濡れた舌が、敏感な部分にからみつくたびに、全身を快感が駆けめぐっていく。今出したばかりのペニスが、小さくなる余裕も与えられず、彼女のテクニックでいいように翻弄され、嬲られ尽くしていた。頭の中は真っ白で、口から出るものと言ったら、全く言葉にならない、快感に支配されたもだえ声しか出てこなかった。
──ちゅぽん。
いやらしい音をさせて、彼女の唇が僕の下半身から離れた。
舌による波状攻撃で、ペニスはぴくんとはねて、いつでもどうぞという感じでお辞儀をした。
「2回目なのにちょっと早いぞぉ」
彼女はいたずらっぽくつぶやく。
「そろそろはずしてあげるね」と言って彼女はようやく目隠しを外してくれた。
久々の光にまぶしさを感じながらも目を開くと、そこには今まで見たこともないほどいやらしい顔をした彼女がいた。
「大丈夫?」
心配そうに尋ねる彼女に、僕の方が質問する。
「どうしたの?前からこんな事してみたかったの?」
「だって、こんなこと普段はできないから・・・。身動きできない状態にして・・・イヤならもう止めるけど・・・」
「平気だよ。じゃあ今日は好きにしていいよ」
「ありがとう」
そういうと軽くキスをしてから、彼女はすばやく行動を開始した。
彼女は横になったままの僕の右側から腰をまたぐと、左手でむずっとペニスを握る。僕のペニスは相変わらず固く勃起した状態を維持している。
「それじゃ、いくね」
彼女は左手でまっすぐに方向を定めて、その上に自分のあそこをあてがう。じわっと湿り気を帯びた部分が、ペニスの先端に触れる。
一瞬の沈黙。
そしてゆっくりと腰を下ろしていく。
ずぶずぶっ、
ぬるぬるっ。
一気にではなく、じわじわっと少しづつペニスが飲み込まれていく。そのじらされるような感覚は、僕の脳をしびれるように冒していく。上顎がのけぞり、まるで女のような声を上げてしまいそうになるのを必死にこらえる。
「どぉお、気持ちいいでしょ」
「やばい、声、出そう」
僕が答えるとうれしそうに「いいよ、声出しても。我慢しないで」
彼女はちょうど半分ほどをくわえ込んだところで、その動きを止め、僕に話しかける。僕はまるで、お預けをくらった犬のようだ。
「で、こんなことするとどうかな?」
彼女はきゅっと膣の筋肉に力を入れた。
「ああーーーっ、だめっ」
僕にとって、初めての感覚で、今にもいってしまいそうだった。
そこにまるで別の生き物であるかのような膣の締め付けが襲いかかる。それはとてもつらいものがある。思わず悲鳴が上がるほどの快感が襲ってくる。
くちゅっくちゅっ。
彼女が行動を再開した。
しかしまだ最後まではくわえ込まずに、真ん中ぐらいまでをくわえ込んだ状態のまま、円を書くように腰を動かす。まるでそれは僕のペニスを使って、彼女がオナニーをしているかのようで、見ている者を淫靡な世界に引きずり込んでしまいそうな光景だった。
くちゅっ。ちゃぷっ。
「うくっ、うっ・・」
二人の結合部分からは、なんとも淫らな音が部屋中に響き、責められる一方の僕の声がわずかに漏れる。彼女はまるで僕が下にいるのを忘れたかのように、陶酔した表情だ。
「あううんっ」
彼女の口から吐息が漏れたとたんに、一気彼女の腰が下降を再開した。
ぐぐぐっ・・・、
ぶちゅちゅちゅうっ・・・
「うううーっ」
じらされ続けていた僕の全身に快感が走り抜ける。
「あんっ、いいっ・・・」
彼女の女性器が完全に僕の男性を飲み込み、そして本能のままに律動を開始した。
ぐちゅっぐちゅっ。
ちゅぼっちゅぼっ。
「あんっ、あんっ、あんっ・・・」
「うぐっ、くあっ、おおっんっ・・・」
彼女のソプラノと、僕のくぐもった声が錯綜し、部屋中に淫らな空気が満ちる。彼女の腰の動きは、時に激しく上下に動いたかと思うと、さらに深く子宮の奥までくわえ込み、そしてクリトリスを押しつけるかのように前後に動いたりと、まさに僕の腰の上で傍若無人にやりたい放題に激しく責め続ける。
「くはあっ、・・・、そんなに動かないで・・・、もう・・・だめかもっ」
彼女は腰の動きをゆるめることなく、さらに激しく律動を加速させる。
「ああん、なにいってんのぉ・・・。まだ出したら承知しないよぉ・・・。あんっいいっ。も、もっと我慢してっ。私がいいって言うまで、ぜ、絶対にダメっ・・・」
じゅぽっ
じゅぽっ、
ぬぷっぬぷっ
「も、もうだめ、くくっ・・・」
「だめっ、我慢して・・」
それはまるで女性が主導権を握って、力ずくで男を犯す体験によって、彼女の心の奥底に閉じこめられていた、原始の女のどろどろとした情念、本能のままの性欲の扉が開かれてしまったかのようだった。
彼女の腰の動きがさらに激しく、そしてぎゅぎゅぎゅっと、膣の筋肉を締め付ける。
「ああーっ、も、もう限界っ、我慢できない・・・」
「まだだめっ、ああん・・・、気持ちよくなっちゃ・・・・ダメよっ・・・、今日楽しむのは私だけなのっ・・・だめ・・・ああくうっ、いいっ、いくっ」
僕がこの世に生を受けて以来、最高の快感が全身を駆けめぐった。もうどうなってもいい・・・。その気持ちよさに頭が麻痺してしまい、目の前にある快感に身をゆだねた。急激に高まる絶頂感。
「ああんっ、もうだめっ、いくっ、いくっっ」
僕の下半身を組み敷き、その男性自身をむさぼり尽くした彼女が、大きく体を反り返らせて絶頂を迎える。
膣がぎゅぎゅっとしまり僕のペニスをさらに締めあげる。
「あんっ、だめっ・・・・すごい・・・いっくっ・・・」
彼女は狂ったように腰を振り大きく仰け反ったかと思うとどさりと僕のうえに崩れ落ちた。
※
さっきまで僕の上で、髪を振り乱して快感をむさぼっていた彼女の体は細かく痙攣している。そして目を潤ませ、息を切らしながらも弱々しい声で僕に「ありがとね、今日は大丈夫な日だから中でいいよ」と言って、手を縛っていたタオルを外してくれた。
ようやく自由を取り戻した僕はゆっくりと動き始める。
しかし彼女の度重なる攻撃にさらされた僕にはもう余力はなく彼女が今日3回目の絶頂を迎えるのと同時に果ててしまった。
「ああくくくっ。も・・・だめ・・・で・・・るっ・・・・」
どぴゅっ、どぴゅっ・・・。
彼女の膣の奥へと吹き上げるとそこは最後の一滴までも飲み込もうかとするように動く。ぐりっぐりっ。それがまた僕にはたまらない刺激となって帰ってくる。
さらに身体の奥から次々と精がほとばしり、彼女の膣を直撃する。しばらく繋がっていると彼女の中から温かいものが流れ出すのを感じる。
しばらくのあいだ余韻に浸りながら二人は眠りについた。