防波堤で恋をして1

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防波堤で恋をして1
2021年07月09日 10時01分
DUGA

1.

 ‥‥ほらほら早く、って声がしたんだ。
 こんなに天気がいいのに遊びに行かないなんて、勿体無いじゃない、ってね‥‥

 今日はバイトも無いし、洗濯機も一杯になってない。
 当然、朝からベッドに入り浸り。
 暇つぶしに本を取っては見るんだけど、全然読む気になりゃしない。
 そして結局、
「あ~あ」
出るのは溜息ばっかりだ。
 以前はこんなこと、無かった。
 平日の授業の無い日に時間ができると、僕は朝から大忙しだった。
 髭を剃ってシャンプーして、ブローしてると麻美さんがドアを開けるんだ。
「ほらほら、早く」
ってね。
 僕が急いで用意して、ばたばたしてるのを麻美さんはにこにこして見てる。
「11時に映画始まるんだから。急いでよね、諒平」
「え?11時? 間に合うかなぁ‥‥」
 そんな事を言いながら慌てて部屋を閉めて、麻美さんから車のキーを受け取ると、真っ赤なボルボのイグニッションを回してた。二人で映画を見て、食事して、ホテルに行くのがお決まりだった。
 でも、そんな時間はもう来ない。麻美さんはご主人と一緒にアメリカに行ってしまったから。
 麻美さんのボルボの替わりに今あるのは中古のシビック。
 友達のまーくんから譲ってもらったやつだ。
 久しぶりに日差しが暖かくて、やっぱり部屋に居るのが辛くって、僕は車を走らせた。
 どのくらい走っただろう。
 気が付くと車はベイブリッジを渡っていた。

 海沿いの町は、潮の匂いでいっぱいだった。
 ボロボロでも現役って感じの船が所狭しとひしめき合ってる。
 僕は漁船の並ぶ港を廻って、海水浴場の駐車場らしきところに車を止めた。
 砂地の駐車場はシーズン前で、他には軽トラックが止まっているだけだ。
 防波提の向こうに砂浜があって、その先には海があるはずなんだけど、背丈以上もある壁のような防波堤のおかげで何も見えない。まるで向こう側は別の空間になってるみたいだ。
 でも、少し離れたところに防波堤に上がる階段が見えた。その段差の大きな階段を一段一段、登っていく。
 やったー。
 海だ。
 子供みたいに嬉しくなった。
 靴を拾い上げて砂浜に素足で降りてみる。
 太陽に暖められた砂の表面は意外に熱く、僕は砂を蹴散らしながら海辺を散歩した。人影はまばらだけど、数人の子供たちがまだ冷たそうな波しぶきと遊んでる。
 波打ち際をしばらく歩いて、しょっぱい潮の香りも吸い込んで、少し休もうかなと防波堤の下の日陰に目をやると、来るときは気付かなかった女の人が座ってた。日差しを避けるように、ひっそりと一人でブロックに腰掛けている。
 この辺の大学生かな、と思いながらも他には日陰が無いから、自然とそっちへ足が向く。
「すみません、ここ、いいですか」
 女の人は僕をちらっと見ただけで、ぷいと波打ち際に知らん顔した。
 僕はなんとか日差しを避けられるところに腰掛けた。
「タバコ、いいですか」
「‥‥どうぞ」
 女の人にしては低い声だった。機嫌でも悪いのかな、と思った。
「もうすぐ夏ですね」
 女の人は何も言わない。
 ま、いっか。
 僕はタバコを咥えたまま、横になった。
 女の人は染めていないストレートなロングヘアで、七分袖くらいの綿の生成りシャツを着てる。花柄のロングスカートが無造作に砂にまみれていた。
 僕はドライブの疲れもあって、タバコを吸い終わるとそのままコンクリートの上にごろんと寝っころがってた。
 穏やかな風と静かな時間が流れていく。
「ねえ」
 女の人が声を掛けてきた。
「‥‥何か言ってよ」
「え? 何か‥‥ですか?」
「そう。つまんないじゃない」
「はあ‥‥」
 僕は返事に困った。
 そんなに急には思いつかない。
 とりあえず、
「‥‥この辺の人ですか?」
とだけ、ぼそっと言った。
 女の人はくっくっと笑いを噛み殺したあと、
「ごめんね、変な事言って。朝から一人ぼっちでつまんなかったの」
と、笑顔になった。
 女の人の笑い顔は人懐っこくて印象的だった。
 僕達はお互いに自分の事を少しずつ話したあと、エルニーニョの日本海に及ぼす影響とか、ペットにするなら犬が良いか猫が良いか、なんて関係の無いような事を話した。彼女は響子さんといって、仕事はOLなんだけど、休みをとってここに来ているということだった。
 少しだけ日が傾いて来て、僕は響子さんにお茶に誘われた。
 実は口がカラカラに干乾びていて、喋るのも億劫だった僕は素直に嬉しかった。
 響子さんは、ウチの別荘があそこの山の中腹にあるんだ、と教えてくれた。

「アイスコーヒーでいいよね、諒平くん」
 響子さんはカラカラと氷をグラスに入れている。
 氷だけ見てても美味しそうだ。
 別荘の外見は小さなログハウス風で、内部には階段で上がるロフトもついてる。海に向かった掃出しの窓からは間近に海が見えるんだけど、人家は不思議に見えなかった。
「すみません、おトイレ、借りて良いですか?」
「どうぞ。そこの階段の向こうね」
 僕は席を立って階段の奥のドアを開けた。お風呂と一緒になっているタイプだ。でもバスタブを囲んでいるはずのカーテンは取り外されて、無造作に丸めて置いてある。
 僕は用を済まし、洗った手を拭こうとしてタオルが無い事に気付いた。仕方なく替わりにティッシュを取ってぱっぱっと拭き、捨てようとしてドキッ‥‥とした。
 ダストボックスの中には赤黒く染まったタオルが放りこんであった。
 どうしたんだろう‥‥血、みたいだ。
 僕は丸めたティッシュが捨てにくくなって、ジーンズのポケットにねじ込んだ。
「アイス、ここに置くわね」
 響子さんはアイスコーヒーをソファの前の低いテーブルに置いた。一人用のソファがテーブルを挟んで向かい合わせになっている。
「あ、すみません」
 僕はソファに座るとアイスコーヒーのストローを咥えた。
 冷たいコーヒーをごくっと飲み込むと、冷えた流動物が喉を通って胃の中に流れ込んでいくのがよく分かる。体中の汗が一気に蒸発していくみたいだ。
 響子さんも向かいのソファに座って、冷たいコーヒーを飲んでる。
「あ、そうそう‥‥トイレになんか、血のついたタオルが捨ててありましたけど」
 響子さんがびくっとして、アイスを飲むのを止めた。
 さあっと顔が真っ白くなっていくのが良く分かる。
「‥‥あ、あれはね‥‥カミソリで怪我しちゃったのよ」
 それだけいうと、響子さんはすいと立って、
「ちょっと着替えてくる」
と、奥の部屋に引っ込んでしまった。
 あれ?また怒らしちゃったかな?と思いながらも、僕は飲み干したグラスを置いて、目の前の海辺の景色を飽きずに眺めていた。
───ガチャッ。
「あ。」
 僕の右手に金属の手錠が掛けられていた。
「え?」
 響子さんがいつの間にか後ろに立っていて、ふふっと薄笑いをしている。
「ちょっと‥‥ゲームしようね」
 そういって、ソファに座ったままの僕の左手をつかむと、後ろ手に手錠をガチャッと掛けた。
「あっ、ちょ、ちょっと」
 僕は慌てて立とうとしたけど、手が上がらなくて、足も踏ん張れない。
 無理をしても、ゴソッ‥‥と音を立ててソファがずれるだけだ。
 響子さんはと見ると、さっきのカジュアルな服とは違って、黒のイブニングドレスに着替えていた。
 肩紐が糸のように細く、スパンコールが全身に散りばめられていて、上半身はタイトなシルエットなんだけど、スカートは柔らかくフレアした長いドレープが広がっている。ドレスに合わせた肘までの黒いレースの手袋もしていた。でも、突然手錠を掛けられた僕は、ドレスを見ている余裕も無くて心臓が早鐘のようにバクバクしてる。
「大丈夫よ、諒平、ただのゲームなんだから」
と、響子さんは意地悪そうに笑って、真っ赤なルージュが引かれた唇を吊り上げた。
 夕日が部屋の中に射し込んできていて、少し眩しい。
 響子さんは夕日を背にして、僕の前に立った。僕の反応を楽しむように、スカートのドレープを摘んでゆっくりと持ち上げていく。
 体のラインに沿ってスパンコールが一斉にきらめいた。
 それは妖艶で、綺麗で、これは夢なんじゃないかと思える。
 スカートの襞の間から響子さんの細い足が現れて、さらに白い太腿が露わになった。あまりの美しさに僕はごくりと唾を飲みこむ。
 響子さんはスカートを持ち上げたまま、足を大きく開くと、僕の膝の上に馬乗りに座った。
 僕の廻りに、黒いドレープが円を描くように広がってゆく。
「やっと‥‥逢えたね」
「どうしたんですか、響‥‥」
「私はエリよ。よろしくね」
 夢なんかじゃない。
 僕は理解する能力を失いつつあった。

2.

「最初に諒平を見つけたのは私なのよ」
 その声は、砂浜で初めて響子さんに逢ったときの、あの低い声だった。
「だから私に権利があるの」
 エリは嬉しそうに微笑みながら、見つけた果物をもぎるように手を差し伸べてきた。僕の頬を両手で挟んで、目をじっと覗きこんでいる。
 そして‥‥僕にキスした。
 唇と唇の隙間を、エリの舌がうねりながらちゅっ、と舐めていく。
「んぅぅ‥‥」
 左右に顔をくねらせて、エリは僕の唇をひとしきり吸ったあと、
「‥‥ね、ちゃんとキスして」
と、まっすぐに眼を向けてきた。僕はエリの眼から視線を外す事ができない。
「‥‥うん」
 僕は仕方なく、エリの望む通りにする事にした。
 確かに響子さんは今、エリという人格に支配されているみたいだ。だって、別荘に来たときから他の人の気配はぜんぜんなかったから。
 これは、双子とかよく似た姉妹とか、そう言う事じゃなくって、やっぱり響子さんは二重人格なんだと思った。それはそれで不安なんだけど、こうして拘束されている以上、今はとにかくエリの言う通りに従うしかない。もしかしたら、どこかで響子さんが目覚めてくれるかもしれないし。
 それに‥‥
 不謹慎だけど、響子さんに興味があったのも事実なんだ。
 あの響子さんが、僕の膝に座って潤んだ眼でキスをねだってる。そう思うだけで、僕の欲情がかき乱されていく。
 もう一度、エリは顔を近づけて来て、今度は優しく唇を重ねてきた。
 強引じゃなくって、とっても柔らかな唇の感触に一瞬、ドキッとする。同時にさらさらした唾液と、暖かい舌が僕の口の中に忍び込んできた。
 ちゅっ‥‥、ぴちゅっ‥‥という音と微かな喘ぎだけが二人だけの部屋の中に響いてる。
 音だけを聞いても、とってもロマンチックだ。
 エリの舌の表面のざらっとした感触と、裏側のぬるっとした感触が交互に重なってくる。僕はエリの唾液を吸いながら、舌を絡めた。エリの舌をぐるぐると回すように舐め回しながら唇を吸いつづける。
 急にエリがはぁはぁと呼吸を乱して、唇を離した。
「諒平って、思ってたよりもキスが上手ね、気持ちまで‥‥吸われそう」
「うん‥‥」
「諒平とキスしてると、あそこが‥‥くちゅっ‥‥って、してくるのがわかるの」
「‥‥エリさんだって」
「え?」
「‥‥とっても感じます」
「そう?嬉しいわ」
 エリは長い髪を掻き上げると僕のシャツに手を掛けた。
 僕を見て、ふふっと笑うエリの手にぎゅっ、と力がこもったかと思うと、
───びっ、びりっっ───
 一気にシャツを開いた。
 ボタンが弾け飛んで、床にぱらぱらと落ちていく。
「ごめんね、諒平。後で繕うから」
と、エリは妖しく微笑みながら、裸になった僕の胸に触れた。下腹から胸板にかけて、黒いレースの指先が、触れるか触れないかの感覚でざわざわと這い登ってくる。
「あうっ」
 僕は一瞬、電流が走ったようにびくっと痙攣した。
 黒レースの、堅くて冷ややかな感触が僕を責め立てる。
 ドレスの下の、柔らかなエリの恥丘に押さえつけられている僕の身樹に、ドクンドクンと血が流れはじめる。
「気持ち‥‥いい?」
「‥‥うん」
 僕は、はあはあと荒い息を続けながら、うなずいた。
 湧き上がる快感にさっきの恐怖心も消えかける。でも、体が痙攣するたびに後ろの手錠がガチャッと冷たい金属音を立てる。
 身動きが出来ない。
 僕の体は、完全にエリの好きなようにされてしまっていた。
 エリはするっと膝から降りると、今度は僕の両足を開いて入ってきた。
 半開きになったうつろな眼が、僕を深い世界に惹き込んで行く。
 エリは僕の胸に顔を寄せてくると、舌を長く伸ばして、敏感な乳首をぺろぺろっ、と舐めた。上目遣いに僕を見詰めながらも、黒レースの指先はもう片方の乳首をちくちくと摘んでいる。
「うっ、あぁぁぁ、いい‥‥」
 エリは僕の表情を見て嬉しそうに笑うと、激しく僕の乳首を吸い始めた。じゅるじゅるっと涎を垂らしながら、一心に乳首を吸ってくる。
「あ、いい‥‥‥‥エ、エリさん、これを外して‥‥」
 急に、エリは険しい眼をして僕を見た。
「だめよ。そう言って男はいつも女を傷つけるの」
 やっぱり手錠は外してくれそうに無い。
 でも、こうして拘束されていると、エリの這い回るような舌使いに、全身の感覚が覚醒していくのがよく分かる。
 体をゆっくり伝い落ちていくエリの唾液。
 滑らかでざらざらした舌先。
 甘い、匂い。
 エリを感じたいと言う命令が僕の陰嚢の奥にどんどん蓄積されていく。それはすぐにジーンズの下の、僕の身樹を次第に大きくしていく。
 じゅるっ、じゅるちゅっ、と乳首を舐めまわしていたエリの唇が止まった。ずれた口紅がうふっと笑う。
「諒平のここ‥‥大きくなってるね‥‥」
 エリはジーンズのボタンを外してジッパーを下げた。
 窮屈な場所から開放されて、大きくなってきた身樹の形がトランクスの上からはっきり分かる。
 エリはトランクスの上からゆるやかにそれを撫で回した。
「あ、あぁぁ‥‥」
 布越しのはっきりとしない感触が僕を包み込む。歓びの渦が下半身に広がって、ゆっくりと陰嚢が縮んで行くのが分かる。
「苦しそう‥‥出してあげるね」
 エリがジーンズを引っ張った。
 僕も合わせて、少し腰を浮かす。
 ジーンズを引き抜いた後、エリは下着に手を掛けた。堅くなった先に引っかからないように、トランクスのベルトを大きく引き上げて、僕が痛くない様にしてくれる。手錠に繋がれてソファに沈んだまま、僕はシャツ以外の全てを脱がされてしまった。堅くなった身樹が、更に紅くなった夕日に照らされて、ぴんと張っている。
「あ、なんか垂れてるぅ‥‥」
 エリが意地悪く言う。
 身樹の先から染み出ている透明の蜜を、エリは細い指ですくい取って、ちゅうっと舐めた。
「うふっ、おいしい‥‥でも、これはどうかしら」
 エリは僕の膝小僧をぺちょっと舐め、そのまま内腿の方までぺろぺろっ、と舌を這わせてくる。
「あう、うっ‥‥」
「どう?感じる?」
「‥‥うっ‥‥キモチいいです‥‥」
「じゃあ‥‥こんなのはどう?」
 エリは張り詰めた僕の身樹を手のひらに包んで、陰嚢から先へつつっ、と舌先を滑らせてちゅっ、と先っぽを吸った。
「あぁぁぁ‥‥」
 エリは僕が歓ぶ様子を見て、何度も舌を滑らせては、ちゅゅゅゅうっと吸う。
「あぁぁ、そんな‥‥」
「‥‥いっちゃいそう?」
「うん‥‥」
「まだ、だめ」
 だめなんだからね、と言ってエリは身樹をまっすぐに立てた。
 エリの赤い唇が、身樹の先をちゅっちゅっと吸った次の瞬間、赤い唇が一気に滑り落ちた。
───ずちゅっっ───
「はぅぅっ‥‥」
 柔らかな唇の感触と生暖かい舌のうねりが身樹の根元まで直に感じられる。
 エリは口の中に含んだ身樹をぢゅるぢゅるとおいしそうに舐め上げ、また、一気に滑り落とした。
───ぢゅるっ‥‥ちゅぶっ───
「んぅ、んうっ‥‥ああ‥‥」
 エリの唇の上下が、段々と早くなってくる。
───ぢゅるっ、ちゅっ、・・ちゅぶっ、じゅぶっ、じゅぶっ‥‥───
「あ、あ、‥‥」
 陰嚢の奥に、熱いものが集中しはじめた。いつまで我慢できるか分からない。拘束されたままのフェラチオが、こんなに感じるものだとは思ってもいなかった。
「手錠、痛い?」
 やっぱり、カチャカチャという金属音が気になったみたいだ。僕も手が痺れかけている。
「もう、はずしていい?」
「ううん、もう少し我慢するのよ‥‥もっとよくなるから‥‥」
 エリは涎で濡れた唇を、べろっと舌で舐め回すと、微笑みながら立ちあがって、ドレスの真ん中を摘み上げた。
「エリね‥‥もう、濡れてるの‥‥ほら、こんなに‥‥」
 引き上げられた黒いドレスの間から、エリの白い太腿が露わになった。
 よく見ると、太腿の内側を透明な雫が垂れてる。
 エリの秘部から溢れ出して、とろとろと伝い落ちてきたみたいだ。
「エリのも、お願い‥‥」
 思ったとおり、エリはショーツを履いていなかった。

3.

 夕日の赤みがだんだんくすみを帯びてきた。
 眩しさが和らいできて、エリの欲情した眼が色を増してる。
 下腹まで引き上げられた黒いドレスの下からは、縮れた茂みが顔をのぞかせていた。
 エリはドレスを持ち上げたまま、ソファに左足を乗せてきた。白くて細い足が僕の間近になる。エリはソファの背もたれを左手で掴むと、ソファの上に立つようにして、もう片方の足を反対側の背もたれに乗せた。僕とソファを、大きく跨ぐ格好になる。
 とっても淫らで、大胆な姿だ。
 エリは黒レースの手袋のまま、人差し指と中指を割れ目に添わせて、少し腰を屈めてきた。
「ね、諒平、見て‥‥」
 僕の眼の前で、ローズピンクの花びらが、蜜に濡れてぱっくりと開いてた。
 甘く、切ない匂いが薫ってる。
 僕はドキドキしながらも、少しエリを焦らしてみた。
「きれいです、エリさんのラビア‥‥ピンクの花みたいで」
「ね‥‥おねがい」
「‥‥ここに‥‥キスしてもいいですか?」
「もぅ、いじわる。早くして‥‥」
 僕は手錠に繋がれたまま、顔を近づけてエリの秘部にキスをした。
───ちゅゅゅゅっっ、ぴちゅっっ───
 不自由だけれど、唇と舌を這わせてエリの花蜜をたっぷりと吸う。
「うぅっっ‥‥くぅぅっっ、はあんっ、あっっ‥‥いいっっっ!」
 僕の舌がぴちょぴちょと芽芯を舐め上げるたびに、エリは上体を退け反らし、髪を乱して声をうわずらせていく。
 どんどん花蜜が溢れてきて、僕の喉元まで流れてく。
 息が切れてきて、僕ははあはあと呼吸を整えた。
「いゃぁん、舐めて‥‥もっとぉ‥‥舐めてぇ」
 僕はまた顔を近づけ、芽芯に舌先を伸ばして、ころころと転がす。
「ああぁぁん、イイ‥‥イイわ‥‥」
 次第にエリの腰が大きく波打ち、太腿が震えだして、無理な姿勢が崩れ始めた。
「うっ、でも‥‥もう‥‥もうだめぇ‥‥イヤ‥‥イヤ、イヤぁぁぁぁぁ‥‥」
 震えていた足の力が抜けて、エリがずるっと滑り落ちた。細い体が僕の身樹の上にずり落ちる。
「うっ‥‥イタイです‥‥」
「あん、気持ちよすぎて‥‥ごめんね、力が抜けちゃったの‥‥」
 エリはソファから降りると、身樹の硬度を確かめるように、
───ちゅぷっ───
 と、口に含んでふふっと笑った。
「うん、大丈夫ね。じゃあ、そろそろご褒美かな?」
 エリは僕の後ろに廻って、カチャッと手錠を外した。手錠から開放されて、両腕が急に楽になる。
 エリは再びドレスを摘み上げて僕を跨ぎ、裾を離した。
 僕の反り返った身樹が黒いドレスに覆われる。
「もう少し‥‥我慢してね」
 きっと射精のことだ、と思った。
「一緒に‥‥いきたいから‥‥ね」
 エリは僕の肩に手をかけて、少しずつ腰を落としてくる。僕からは黒いドレスのエリしか見えないけど、エリは後ろに回した手で、ドレスの中の身樹がまっすぐになるように合わせようとしてる。
 黒いレースの手袋の、ごわごわとした感触が、身樹の根元に絡み付いてきた。エリは気持ちを集中しているためか、半開きになった上唇に舌が小さく覗いてる。僕は自然にエリの腰に手を添えた。
 身樹の先にぞりっ、とエリの茂みが感じられた。縮れた恥毛が笠の部分に濡れてまとわりついてくる。でも、すぐにエリの指が、ぬるっとした花びらの中心に身樹を導く。
「あ、はあぁん、いっ‥‥いい‥‥」
 堅くなった芽芯に身樹の先端が触れたみたいで、エリが大きく喘いだ。
 そのまま、花びらの粘液をたっぷりと身樹の先に塗りつけている。塗りつけながら小さな芽芯も僕の身樹の先でいじっているみたいだ。僕からは喘いでいるエリしか見えないけど、身樹の先にエリの芽芯をコリコリと感じる。
「はあぁぁんん‥‥もう‥‥」
 エリは呼吸を止めて、途中で我慢していた腰の位置を更に落とし始めた。身樹の笠の部分がゆっくりと温かなエリの中心に埋没していく。
───くちゅぅぅぅぅぅ‥‥───
 ぬるぬるとした肉襞が身樹の周囲をきつく包み込む。
「はあぁぁぁ‥‥いいわ、きもちいい‥‥」
 大きく呼吸しながらエリが眼をつぶる。
「あぁん、いいぃ‥‥中で‥‥中で諒平を感じる‥‥」
 我慢できずにエリは上下に体を揺らし始めた。
 静かにゆっくりと、そして次第に動きが激しくなる。
「あん‥‥・んぅん‥‥んぅん‥‥あん‥‥あん、あん」
 ぎし、ぎし、とソファが軋む。
 黒いドレスに覆われてて、エリの中心を出入りする様子は見えないけれど、気持ちの良い粘膜が僕の張り詰めた身樹をぬるぬるとマッサージしてくれている。
 僕の首に両手を廻して、エリは頂上を目指してひたすら体をきゅっきゅっ、と律動させていく。
 長い髪が僕の顔に何度も振り掛かる。
 「あん‥‥すごおぃぃぃ‥‥諒平、うっ、びんびんになってるぅぅ‥‥」
 僕も下から、エリを突き上げる。
 身樹は完全に充血していて、奥底では熱い精が沸き上がりつつあった。エリの腰を持つ手に、エリの筋肉の動きが伝わってくる。
「あん、あん、あん、あんんっ‥‥どうしよう、待てない‥‥待てないのぉ‥‥」
 エリの動きがはげしくなる。
 エリの肉襞がつるつると身樹を撫で上げる。
「あん‥‥一緒に‥‥ね、諒平、一緒に‥‥はやく‥‥はやくぅ、キテ‥‥」
 小振りなお尻が、僕の太腿の付け根の上で何度も何度も弾んでいる。
 くちゅっ、くちゅっ‥‥という淫らな音が、歓びを押し殺したエリの溜息の合間に聞こえてくる。 エリの中心からは粘液が絶え間なく流れ続ける。
 ひときわ大きく、エリが歓びの声を上げた。
「あ、いく・・あ、いく・・あっ、いくぅ‥‥あん・・あん、あん、あん・・いっっ・・くうぅぅぅぅぅ‥‥」
 仰け反るようにして達したエリの肉襞が、ぐぐっと身樹を吸い上げるように動いた。いっぱいになった陰嚢が精を放とうとしている。僕は目をつぶって、エリに包まれた身樹に意識を集中する。
(諒平くん‥‥)
 一瞬、麻美さんの感触がよみがえった。
 柔らかくて、やさしい記憶だった。
 僕は目を開けた。
 眉をきつくひそめ、苦悶の表情でエリは絶頂の瞬間を耐えている。敏感な芽芯に刺激が伝わっているのか、びくっ、びくっと時折硬直している。
 やがてエリは、僕が見詰める中、全身から力がぬけて、そのまま寄り掛かってきた。僕はまだ堅い身樹をエリの中に納めたまま、抱きしめた。エリの頬がじっとりと汗ばんで、髪の毛が絡み付いてた。
「ふぅぅ‥‥いっちゃった‥‥」
 腕の中で、エリがつぶやいた。
「良かった?」
「うん。とっても」
 満足そうな表情のエリがいた。
 でも、僕は放精出来なかった。
 最後の瞬間に、麻美さんの記憶が邪魔をしたようだった。
「ひっ、‥‥ひぎゃあぁぁぁぁ‥‥‥‥・・」
 突然、奇声を上げて転げ落ちるように僕の手からエリが離れた。
 ごろごろと床を這いずって、わあわあと大きな声で泣きながら、ごめんなさい、ごめんなさいと狂ったように繰り返し始める。
「‥‥あの‥‥あの‥‥え?響子さん?」
 僕は驚いた。
 エリは絶頂を終えるとすぐに体を返してしまったんだ。
 熱く、じんじんと余韻の残る股間に、僕の身樹が深く挿入された状態のまま、響子さんは急に意識が戻ってきたようだった。
「響子さん、あの、大丈夫、大丈夫だから‥‥・」
 僕はあわてて声を掛けた。何でもいいから、落ち着かせたかった。
 響子さんは部屋の隅で丸くなって、嗚咽を続けている。僕は下半身が裸のままだったから、とにかくジーンズを履いて、それからどうしようか迷ったけれど、泣きながら震えている響子さんに近づいて、後ろから抱きしめた。
 掛ける言葉が見つからなかった。
 僕はただ無言で、抱きしめていた。
 理由の判らない涙が一筋、頬を伝った。
 しばらくして、響子さんは自分を取り戻して来て、部屋の隅からよろよろと立ち上がると、ダイニングテーブルの椅子に座ってテーブルに突っ伏した。自分では気付かなかったのだけれど、僕の手錠の跡は少し腫れていて、じんじんと痛みが増していた。
「‥‥シャワーに行って、おねがい。あとで消毒するから‥‥」
「‥‥うん」
 気まずい思いのまま、僕は風呂場に行ってシャワーを浴びた。お湯が掛かると、手首の周りがずきずきと痛む。僕は簡単に石鹸を使うと、すぐに出た。
 風呂場から出る時、気になった僕はもう一度、ダストボックスを覗いてみた。
 不思議な事に、ダストボックスの中は空になっていた。

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