マッサージ1

女性もえっちな妄想をしてもいいんです。
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アダルトな読み物のお部屋

マッサージ1
2021年07月18日 14時56分
鬼太郎

1.

 あるマンションの一室‥‥。

 おれはドアの前に立つと、インターホンのチャイムを鳴らした。少し間を置いて、女性の声‥‥固く疲れた感じがする。
「はい、どちらさまですか?」
「ごめんください。お電話をいただいた『けやきマッサージ院』のものですが」
「は~い‥‥少しお待ちくださいね」

 しばらくするとカチャッと音がして、チェーンをかけたままドアが少しだけ開き、ちょっと不安げな女性の顔が隙間から見えた。こちらを値踏みするように上から下まで、ジロジロっと眺める。
「あの‥‥‥‥マッサージの方って女の人じゃないんですか?」
 不審げな声。
「申し訳ありません。ただいま女性のマッサージ師は出払ってまして、本日はもう時間的に難しいんですが‥‥」
 おれは、しれっと答えて、こう付け加える。
「どういたしましょうか? 不安でしたら、日を改めましょうか?」
 女は、少し考えて‥‥
「ん~、わかりました‥‥どうぞお入りください」とチェーンを外して、部屋の中に招き入れた。

 おれの名は河村誠。普段はしがないサラリーマンをしている30歳。ちょっとした訳があって、暇を見つけては『マッサージ』屋家業をしている。と言っても、おれ自身は按摩や鍼灸師の国家資格を持っているわけではなく、非合法のプライベートな『特殊なマッサージ』ということになるだろう。
 《特殊な》というのは、この稼業に関して作っているビラの内容から察することができるだろう。

女性向けの気分の良くなるマッサージ
肩こり、筋肉痛、その他の体の変調、精神的ストレス‥‥
今までのゴリゴリと強いだけのマッサージはもうコリゴリというあなたにうってつけのマッサージです。
やさしく、優しく、丹念に、じっくりと身体をほぐし、精神的な重荷も解消。ご希望に応じて、アロマオイルを使ったマッサージなども、行います。
取り敢えずは、ご連絡を。電話番号 045(2453)XXXX
 このビラの電話番号に電話をかけると、この稼業に足を突っ込むことの切っ掛けになったある女性に繋がる。そしてその女性から『仕事』を振られるという形で、おれに紹介の電話がかかってくる。 都合が折り合えば、こうしてお客の女性の前に『えせ』マッサージ師のおれが現れるという寸法だ。
 もちろん客は普通のマッサージだと思っているわけだが‥‥。

 今日の依頼人の女性の簡単なプロフィールは連絡でわかっている。
 早田恵美、25歳のOL。身長は155センチで体重は48キロ。肩こりと何となくの全身のだるさ、いらいらを初めとする精神的なストレスが症状と言うことだ。

 ドアが開いて、恵美の顔と全身が拝める。
 髪はこざっぱりしたショートヘア。顔のほうは割と端正で鼻筋は通り、口は小さめ。ただ、釣り上がり気味のネコ目でキツイ印象を受ける。全体的に、堅物‥‥というオーラを発散してる感じ。体つきは、やや胸が薄いというか、全体に細身なことが、身を包んでいるスウェットの上下からも窺える。
 気の強さに繋がる目線のキツさ、身体の線‥‥そこらあたりの雰囲気は似ている‥‥この仕事のパートナーで、おれが思い切りたくて思い切れない女性に。

「どうも失礼します。女性のマッサージ師をというご希望に添えずに、申しわけありません。もしご不快やご不信があれば、ドアの鍵は閉めないでいただいてけっこうですし、そういったことがあれば、遠慮なく院の方へ苦情をおっしゃってください。わたしも雇われの身ですから、すぐに首を切られますし。やっぱり、私では駄目だということであれば、女性のマッサージ師が明日は空いていると思いますので、すぐにも手配させてもらいますので‥‥」
 玄関先で、生真面目な表情を装ってまくし立てる。
「‥‥いいわ、あなたで。上がってください。場所は、どうしましょうか?」
「あ、よろしいですか。それでは、お邪魔します。取り敢えずいろいろと伺いたいので、落ちついてお話しが出きるところへ」
「はい‥‥じゃあ、こっちへ」
 恵美の表情はまだ硬いが、取り敢えずは第一関門の突破だ。

 恵美の部屋の間取りは2DKだった。玄関から入ってすぐにダイニング・キッチンがあり、その向こうにリビングとして使っている部屋、寝室に使う部屋があった。
 おれはリビングに通された。寝室に使う部屋とは引き戸で仕切られていて、行き来が出きるようだが、その戸は閉め切られていて中を窺うことはできなかった。
 リビングはフローリングで、一人掛けのソファと二人掛けのソファがあり、小さな背の低いテーブルが置かれている。そしてテレビとビデオデッキのラック、小さなライティングチェアがあり、そこにパソコンがある。
 小奇麗にというか、マッサージ以外のことにはズボラなおれの感覚では、神経質なくらいにまでキレイに片づけられている。六畳くらいなのだろうが、おれの住んでいる部屋の六畳間とは、段違いに使えるスペースが広い。

「どうぞ、おかけください。お茶をお出ししますから」
「あ、どうぞ、お構いなく‥‥時間がもったいないですから、お話しさせてもらってもいいですか」
 おれは持ってきたカバンを、床に置きながら二人掛けのソファに座る。
「どうせ狭い部屋ですし、手間もかかりませんから、そのままお話ししてください」
「そうですか‥‥えっと、では、症状は肩こりと全身のダルさ、それと精神的ストレスということで承っていますが、思い当たる原因は何でしょうか?」
「うーん、やっぱり仕事がキツいのかな。会社は不動産関係なんですけど、販売部門にいるので休みが不規則なんです。契約業務なんかでもお客様の都合で遅くなることが多いし。あと、お客様が物件を見たいと言われれば、あっちこっちに案内しないといけませんから。けっこう重労働なんです」
 そう言いながら恵美はお茶を持ってきて、テーブルにおいておれに勧め、そして右手にある一人掛けのソファに腰掛ける。
「それじゃあ、肩こりばかりじゃなくて、足腰もかなり疲れがたまってますね。えっと、お休みが不規則ということでしたが、普段はどうすごされてますか?」
「平日に付き合ってくれる友達もあんまりいないですから、一人で映画を観たり、ブラブラしたり、一日中ゴロゴロしてることもあります」
「あはは‥‥わたしの休日とあんまり変わらないですね。運動不足もあるかな。しかしまあそんな休日ばかりじゃなくて、彼氏とかいるでしょうに。ブラブラしてても、お客さんなら男がほっておかないだろうし‥‥‥すみません、失礼しました。それに立ち入ったことまで聞きました」
「ああ、気にしないでください。先生っていう雰囲気のかたっ苦しい人じゃなくて、普通の人っぽいなあなんて、ちょっと安心しました。それにそう言われるとお世辞でも悪い気はしませんし‥‥ふふふ‥‥」
 おれは苦笑しながら、彼女の少しほころんだ表情を観察する。見た目のキツさや、部屋の神経質そうな整理の仕方から受ける印象ほど、堅物じゃないと思えてきた。
「えっと、それでは、施術の進め方ですが‥‥まず、肩からやっていきますが、足腰中心に酷使してるかもしれませんから、そっちもマッサージします。ただ、どこをマッサージするにしてもスウェットの上からだとやりにくいものですから、例えば、ジョギングパンツとTシャツなんかに着替えていただけると助かります」
「えっと、それだと、ちょっと脚が露出しちゃいますね‥‥」
「冷え性とかでしたら、パンストでも履いていただければ‥‥」
「ああ、そういうわけじゃありませんし‥‥うん、わかりました。それじゃあ、ちょっと着替えてきますね」
 恵美は淡々とソファを立ち、引き戸を空けて隣室に消えた。
 引き戸はおれの正面にあり、恵美が隣室に消えるまでにチラッと中を覗き見れた。一瞬だけだったけど、リビングほどには、神経質に片づけていない印象を受ける。普段はズボラか、それとも二面性のある性格かなどと考えながら、部屋をちょっと調べてみようと思い立った。
 部屋の中をじろじろと見て回り、何気なくAVラックに目を止める。
 屈んでちょっと覗き込んでみる。
 片付けられた部屋の印象とは逆に、乱雑に放り込まれたビデオカセット‥‥TVドラマを取り貯めているようだ。ちょっと注意して見ると、すきまから原色が目立つのビデオパッケージがのぞいている。音を立てないように、手前のビデオカセットを少しどかし、「ふうん‥‥」と思わずつぶやく。
 『いたずらされちゃった私達』というビデオのタイトルが見える。観たことがあるタイトルで、ソフトSMやそれほど暴力的でないレイプ・ネタの話が4本収録されてるオムニバス形式のAV‥‥。内容は、痴漢されて感じさせられてトイレでとか、騙されて縛られてとか、目隠しされてとか、酔って寝ていて身体を弄られてとかだったか。
 引っ掻き回せばまだ別のAVがあるかもしれないが、情報としてはそれで十分。
「こいつは好都合」と口の中でつぶやいたのは、恵美の嗜好がそういう責められ方ならば、おれのマッサージは非常にやり易いからだ。

 あれこれと考えをめぐらせながら、何食わぬ顔で恵美が座っていたソファの後ろに立つ。
 カタっと引き戸が開いて恵美が戻ってきた。ブカブカ目の厚手の布の白いTシャツと赤のジョギングパンツ‥‥Tシャツは厚手の布とはいえ下がある程度まで透けていて、ブラをつけずにキャミを着ているのが見て取れる。
 そして手にバスタオルを持っている。
「あの‥‥これでいいでしょうか?」
「ええけっこうですよ。最初はこちらのソファで肩の方から始めます。その様子を見ながらマッサージする場所を変えたりしていきますね。ところでそのバスタオルは?」
「ああ、やっぱりちょっと恥ずかしいですから膝にかけさせてもらおうと思って‥‥それじゃあ、お願いします」
 恵美はソファに座り、バスタオルを膝上に掛ける。
「はい。ではビラにも書いてありますが、ウチのやり方は割りとソフトにソフトにマッサージしていきますから、心配しないでくださいね。構えて固くならずに、リラックスして‥‥」
 おれは両手を恵美の左右の肩に置く。
 そしてゆっくりと、あんまり力を込め過ぎないように肩を揉んでいく。
「ふぅ~‥‥‥‥ほんとにあんまり痛くしないんですね。効果とかはどうなんですか?」
「当然そう思われますよね。でも女性の場合、強くし過ぎるとかえって筋肉を痛めちゃうことがあるんです。じっくりと弱めに、時間をかけてほぐした方が効くんですよ」
 実のところ学生の頃から素人マッサージ名人で慣らしていた、おれなりの持論をもっともらしく並べ立てみる。
「気分いいですね。会社の近くのクイックマッサージとかのお世話になるんですけど、揉み方が強くて。そのくせ、あんまりほぐれた感じがしないんですよね」
「そうですよね」
 そう言いながら、次第に手を恵美の首の横側にずらして、ソフトな揉みほぐしを続けていく。
「んっ‥‥その辺も効きます‥‥」
「肩こりのすごい人は、首筋もそうなってる人多いんですよね。特にコンピュータに向かうとか、姿勢を変えずに仕事してる人なんか、首もカチカチに固まっちゃてる感じがしますね」
 などと言いながら、両方の親指を首の後ろに押したてて指圧していく。
「んん~、あっ‥‥それいいです‥‥ふぅ‥‥指圧されるたびに、何か電気が走るみたいで」
「じゃあ、ちょっと今度はもっとソフトに血行を良くする感じにしていきますね」
「はい、お願いします」
 おれは指圧を止めて、首の左右の横側にそれぞれ手を添わせると指先を立てて、触れるか触れないかのタッチにして、スゥっと小さく手を上下させる。
「あっ‥‥ひゃっ‥‥だめ、そ、それ、くすぐったいですぅ‥‥」
 恵美は反射的に肩をすくめてしまう。
「あれ? そんなにくすぐったかったですか?」
 両手を肩に戻して、手の動きをいったん停める。
「ええ、ちょっと‥‥、というか、かなり‥‥」
 恵美が肩を元に戻していく‥‥戻した肩を手で包んで、左右に撫でる感じに‥‥。
 この手の動きにも彼女は少しだけピクンと反応する。
「これも、くすぐったい?」
「あっ、ええ。でも、こっちは我慢できそうです」
「ああ、じゃあしばらくこれを続けますね」
 次第に両手の真ん中の指3本の先を左右の鎖骨に沿わせる感じに‥‥Tシャツの布ごしに、すぅっと鎖骨を指先がなぞっていく感じにしていく。
「んっ‥‥えっと‥‥これも、マッサージなんでしょうか?」
 恵美が居心地悪そうにもじもじし始める。
「ええ、そうです。やっぱりくすぐったさが続いてますか?」
「は、はい‥‥」
「でも少しだけ我慢して‥‥首のほうまで広げますから、心の準備をしてくださいね」
「えっ‥‥は、はい‥‥」
 恵美の戸惑い気味の返事を聞きながら、おれはゆっくりと手を首の方へずらした。親指の腹がうなじを、他の指の腹や先が首筋の横側を、ツーっと伝うように手が這い登っていく。
「あっ‥‥やだ‥‥んっ‥‥」
 恵美は肩をすくめるのを我慢して、軽く体をプルプルと震わせている。
「気が紛れるから、少しお喋りでもしましょうか」
「はっ‥‥はいっ‥‥」
「お付き合いしている男性はいないんですか?」
「あっ‥‥んっ‥‥えっと‥‥働くようになってから学生時代に付き合ってた彼氏とすれ違いが多くなって別れて‥‥はぁ‥‥‥‥会社にも、いい男がいないし‥‥んっ‥‥」
 恵美としゃべるあいだに、手で何度も肩から首筋にかけてを撫でていく。
 彼女は両手を肘掛けから膝の上へ移し、バスタオルを握りしめるようにして我慢している。
 少し前屈み気味になって、背中が背もたれから離れる。
「それはついてないですねえ。それでお友達とも休みが合わないと、交友関係も限られちゃいますよね」
 手が背中へ降りていって、左右の肩甲骨のあたりを撫でる。
「は、はい‥‥夕飯やお酒を一緒にできても、ごくたまになっちゃうから‥‥ふぅ‥‥」
「立ち入っちゃったことを聞きますけど、やっぱり寂しいもんですか?」
 背中を撫でまわす両手の5本の指先を自然に立てていく。
「えっ‥‥ええ‥‥寂しいにもいろいろとあると思いますけど‥‥あっ‥‥」
 指先を立てたまま、両手が背中全体をグルグルと撫でまわすように。そして、肩甲骨の間を撫で上げる時には、親指の腹でツーっと背骨をなぞり上げる。
「あ、あの‥‥んっ‥‥これ、どういう‥‥あっ‥‥マッサージなんでしょう?」
「肩の負担を減らすために、背筋の方も軽くね。ご不快ですか?」
「い、いえ、そういうわけではないんですが‥‥か、身体は軽くなっていく感じなんですけど‥‥んっ‥‥あっ‥‥やっぱり、くすぐったいというか‥‥」
「じゃあ、撫ぜ回すのはやめますか」
 今度は両方の親指は背骨に、他の指は腋に沿える感じで背中を上下にさする。
「くっ‥‥はぁぁ‥‥そ、それも、ちょっと‥‥」
「少し我慢してくださいね。すぐに終わりますから」
 親指以外の指先を、できるだけ乳房の裾野に近づけるようにする。
 そして指の先にある乳房を意識させるように、胸のすぐ横の腋を重点的に小さく刺激するようにさする。
「は、はい‥‥でも‥‥あぁ‥‥く、くすぐったくて‥‥我慢できそうにないんですけど‥‥」
 恵美のもじもじする動きが大きくなっている。
 彼女は腰くねらせ、腋から背中にかけて安定してマッサージするのがちょっと難しくなる。
「うーん、困りましたね。背中はこれまでにしておきましょうか」
 そういって両手をそっと離すと、恵美は安心したように溜め息をつきながら背中を戻す‥‥まるで背もたれに倒れ込むように。
「まあ、何となく身体じゅうの血の巡りが良くなった気がしませんか?」
 ソファの前側へ回り、恵美の正面で足の裏をお尻の下で立てた状態の正座をする。
「ええ、身体がなんか、ポカポカしてきたというか‥‥」
 恵美は、頬を心なし紅潮させている。
「じゃあ、少し今度は脚をやっていきますね」
「はい、お願いします」
 恵美の右脚の足首あたりを両手にとって持ち上げ、踵を左腿の上に置かせて足裏マッサージする。ごく普通の親指の指圧を繰り返しながら‥‥

「そういえば、寂しさにもいろいろとあるっていってましたね。お友達と時間が合わないってこといがいに、寂しいのはどんなときですか?」
「えっ?」
 一瞬、虚を疲れたような恵美の表情‥‥。
「あ、ちょっと答えが難しいですかね。まあ、おれなんかも、独り暮しが長いし、お客さんと同じで彼女いない歴‥‥えっと何年だっけ‥‥まあとにかく、なんというかな。心の通う相手が近くにいないとね‥‥朝起きた時とか、夜に寝ようとしている時とかに、虚しい物があるなあなんて」
「あは、もしかしたら、あたし口説かれてるのかしら?」
「ああ、いや、そういうわけじゃないですよ」
「あら、ちょっと残念、ふふふ‥‥」
 軽口が出てくればしめたもので、かなり打ち解けてきて警戒心も薄れている証拠だ。
 いったん右足を床において、左足を手にとり、右足と同じように‥‥だが、足裏の指圧は適当にやって、指への刺激を丹念に。
 そうやって、指の刺激を終えると、両手で左脚のふくらはぎを包むように持ち、親指以外の4本の指をうごめかせて揉みほぐす。
「でも、別に口説きじゃあなくてね。独り者同士、心に共感し合う所はあるかなあと思って。さっきの質問に答えてもらえませんか? 無理強いはしませんけどね」
 そう言いながら、4本の指の動きを停めて、今度はふくらはぎの両サイドに添えた親指の腹を軽く円状に動かしていく。
「あっ‥‥んっ‥‥ふぅ‥‥寂しいって、それは、あたしも同じかなぁ‥‥んっ‥‥電気のついてない部屋に帰ってくるとか、冷たい布団に潜り込む時とか‥‥あんっ‥‥」
 恵美がくすぐったそうにすると、両手がふくらはぎを揉みほぐし、話しに入ると親指でくすぐったくするのを繰り返しながら、次第に手を膝に近づける。
「独り寝が寂しいってことですかね?」
「やだぁ、そういうと何だかHっぽいですよぉ‥‥んっ‥‥」
「あはは、Hは抜きにしたって、一般論としてそうなんでしょう? わかりますよ、その気持ちは」
 話しているうちに、両手を左右の膝へ。バスタオルの下で、左右の膝をやんわりと撫でる。
「あら、だからといって、口説くのは無しですよ。マッサージをしてもらうために呼んだんだから‥‥ふふ‥‥んっ‥‥やん、それだめ‥‥」
 両手の指の腹と指先が、膝の皿をくすぐるようにうごめく。
「これも、やっぱりくすぐったい?」
「だってぇ‥‥あぁ‥‥ちょっと、もう‥‥」
「お客さん、くすぐったがり屋さんですね。後で必要になった時に、いろいろとお願いすることが出てきそうだなあ」
「え? お願いって?」
「いえねえ‥‥まあ、その時になったらね‥‥」
 おれの手は、まだ膝を撫でている。
「あんっ‥‥あっ‥‥ねっ、これもマッサージなんですか‥‥なんか、手や指の動きが、すごくくすぐったく感じちゃうみたいで‥‥」
「ええ、背中と同じですよ。足の血行をよくするためのね」
 そこでいったん手を停め、拳一つ二つ分くらいの幅で膝と膝の間を広げさせる。
 手の撫でる動きを少し大きめにして、膝横に手を潜り込ませる。
 そうしながら心持ち膝と膝の間をさらに広げさせ、肩幅くらいにしてしまう。
「あっ‥‥はぁはぁ‥‥ね、もう、脚の方はこれくらいに‥‥」
「あれあれ、まだだめですよ。施術が中途半端になったら、あとから疲れの反動が来ちゃいますよ」
 指先を微妙なタッチで触れさせながら、構わず手を腿の内側の奥へと進ませ、前後にさする感じに動かす。
 膝の横から内腿の中ほどにかけてを、指先がなぞっていく。
「やん‥‥でも、でも‥‥はぁはぁ‥‥」
 心なし、恵美の吐息が荒くなっていく。
「さて、じゃあ、ちょっと腿の上側まで‥‥」
「えっ?」
 恵美が反応するより早く、手をさらにバスタオルの下に滑りこませ、指先をツーっとジョギングパンツの裾際まで滑らせていく。
「あんっ!‥‥だめっ!」
 恵美の全身がビクンとなって、反射的にピッタリと脚を閉じる。
 おれの手は彼女の腿の間に挟まれて動きを停める。
「ええっと‥‥お客様。マッサージができないんですが‥‥」
 恵美の腿に手を挟まれた状態のまま、バツの悪そうな顔で恵美の目を見つめる。
「ご、ごめんなさい‥‥でもぉ‥‥」
 恵美はついっと視線を外してうつむきいて、もじもじしている。
「えっと、それじゃあ、さっきのお願い事をしますかね。取り敢えず、足の力を抜いてください」
「え?‥‥ええ‥‥」
 あまり緊張させないように精一杯優しい声をかけ、恵美の脚の力が抜けるや、手を抜き取る。
 そして、カバンを引き寄せて中を探る。
「それで、お願いなんですけど‥‥少しの間、脚を固定させてもらってもよろしいですか?」
「固定って?」
「いえね。脚のマッサージをキチンとやりたいものですから、動けないようにね」
 おれはカバンから細いリボン状のヒモを取り出す。
「ええ? それって、もしかして縛るっていうことですか?」
「ああ、大丈夫。あくまで、膝と膝の間を一定にするためだけですから。手も自由ですし、立つこともできるようにしますから。さっきのように、せいぜい肩幅くらいまで広げればいいだけですし」
「‥‥‥‥わかりました。でも、すぐに、外してもらえますね?」
「ええ、もちろん‥‥脚のマッサージの間だけですから。じゃあ失礼して‥‥」
 手早く左右の膝のあたりに、それぞれリボンの片端を結わえ付ける‥‥腿の肉にリボンが食い込み過ぎないくらいに。
「どうです? これくらいなら、痛くないですよね?」
「ええ。大丈夫です。リボンというかヒモの感触も、痛くないんですね」
「はい。ちゃんと感触の良さそうなのを選んでますから。えっとじゃあ‥‥」。
 そこから無言で、まず右膝を軽く横に向ける感じに。
 そして、リボンをピンと張るようにして、反対側の端のあたりをソファの右手側の前脚に結わえ付ける‥‥‥‥それから左脚の側も同じように。
「ちょっと、腿を絞って、膝と膝の間を閉じようとしてみて」
「はい‥‥」
 言われたとおりに腿を絞って膝と膝の間を閉じようとしても、真上から見たら腿と腿が直角を描くくらいのところでリボンがピンと張りつめ、脚を閉じられない。
「うん、大丈夫そうですね」
 恵美の警戒心を煽り過ぎ無いために、腿の上にバスタオルを掛け直す。
「はい‥‥ふふ、でも、ちょっと変な気分」
「変な気分って?」
 再びバスタオルの下に手を潜らせる。
 両手が、左右それぞれの腿の中ほどを表側から掴む。
「いいえ、ちょっと‥‥何となくドキドキするというか、なんというか‥‥」
「あはは‥‥じゃあ、緊張しないように身体をリラックスさせて、天井でも見上げる感じに」
「はーい‥‥ふぅぅ‥‥」
 恵美が背もたれの上端部に後頭部を預けて、上を見るのに合わせて、両方の親指を内腿にキュッと押しつける感じにする。そして、親指の腹でクネクネと内腿の筋肉をほぐすようにうごめかせていく。
「んっ‥‥あっ‥‥ぁあ‥‥はぁ‥‥」
 親指で腿の筋肉を波打たせながら、次第に手の位置を奥へとずらしていく。それにつれて、彼女は軽い喘ぎに似た吐息を漏らし始める。
「ねえ、お客様‥‥」
「はっ、はい‥‥」
 おれの呼び掛けに少しビックリしたように、恵美が顔を起こす。
「そちらにビデオがありますよね。よくビデオのレンタルとかするんですか?」
「ああ、はい。夜のテレビドラマを録画しておくのがもっぱらですけど、時々は映画とかも‥‥んっ‥‥」
 おれの手はジワジワと奥の方へと進み、再びジョギングパンツの裾際に‥‥親指が付け根の筋肉と筋をクネクネと刺激している。
「借りるのは、どんなのが多いですか?」
「ハッピーエンドの恋愛ものとか、あんまり考えなくていいからアクションものとか‥‥ゃん‥‥」
「ああ、おれも似たようなもんですねえ。ただ、どうもHなシーンの充実してるやつを借りちゃうんですよねえ。ははは‥‥男って、どうしょうもないですね」
 脚の方の刺激に拒否の反応をされないよう、気をそらせるために話しをつないでいく‥‥それとなくスケベなネタに誘導しながら‥‥。

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