名前を呼ぼう

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アダルトな読み物のお部屋

名前を呼ぼう
2021年07月23日 18時38分
DUGA
ロイヤルワイフ

1.

「あ~っ、疲れた」
 通りを歩きながら、僕は大きく腕を伸ばして背伸びをした。何とか今日の依頼も無事にこなして、この後はもう予定も何も入っていない。事務所もこの時間になると昼休みで、みんな食事をとるために外に出払っていることだろう。今から事務所に戻っても誰もいるはずがない。
「外で食うかな‥‥」
 そう呟いて、歩く方向を事務所の方角から通いなれた店の方角へ変更。不思議と気持ちが軽くなり、僕は何となく鼻歌を歌いたくなった。曲はとりあえず大好きなロックバンドの曲。無意識に指先が太ももの上でコードをたどる。チャラチャラとズボンにぶら下げたチェーンがリズムを鳴らして、何となくいい感じだ。

 『ひよこ館』と書かれた看板の下、カランカランと店のドアを開けると「いらっしゃいませ!」と元気のいい声が返ってきた。適当な空いている席を見つけて荷物を置き、椅子に座って一息。ぱたぱたと小走りの足音がして、少し背の小さい女の子が僕の座った席にやってきた。外見とはアンバランスに立派に調理服を着た彼女は、僕の顔を見るや否やぱぁっと明るい表情で声をかけてきた。
「あっ、直也さん」
「おっす、あきらちゃん」
 軽く手を上げて挨拶を返すと、あきらはメニューをテーブルに置きながら僕に尋ねた。
「この時間ってことは、お昼ですか?」
「ん、まあね。それにこの後も暇になったし」
「今日の仕事、もう済んだんですね」
「そういうこと。そっちは? 忙しいだろうけど‥‥」
「もうすぐ上がっていいって。ボクは‥‥3時くらいからなら暇になります」
「そっか‥‥じゃあさ、仕事終わったらどこか出かけようか? 俺、ここで待ってるから」
「え? いいんですか?」
「おう、行こうよ」
「はい!」
 そう言って笑いあう僕ら。あきらは元気に返事をすると、仕事を思い出して奥のほうに再び消えていった。

 僕は坂井直也、23歳。これでも一応探偵事務所に勤めている。とはいっても、まだまだ新米のひよっこ。仕事はこなすことはこなすがドジも踏む。所長に言わせれば、「経験を積んで成長するもんだ」とのことらしい。
 その仕事の中で彼女とは知り合った。華永あきら、16歳。この『ひよこ館』はかなり年の離れた彼女の姉が店長を勤めている。あきらはここでパティシエール、いわゆる『ケーキ職人』の見習いをしているのだ。だから調理服を着ていたというわけである。
 その仕事というのは、正直仕事とは言いがたいかもしれないが、実は以前、ここに強盗が立てこもったのだ。

「金を出せ、出さねぇとこいつぶっ殺すぞ!」
「うあっ‥‥」
 その時犯人が人質にしたのがあきらだった。犯人はナイフをあきらの喉元に当てて、レジから金を要求している。居合わせた客は恐怖で動けなかったり、動こうとしても犯人を刺激するだけで手も足も出ない。たまたまここに来ていた僕もその中にいた。探偵の目の前で堂々とやってくれたもんだ。場違いにその勇気に拍手を送りたくなる。
 もっとも、無謀な勇気だが。
 僕はテーブルの陰を縫うように移動し、犯人の近くまでやってきた。あと少し。一瞬でも隙があれば飛び出して始末を付けられる。
 ほどなくその時はやってきた。レジの店員が金を持って歩こうとした瞬間に転んでしまったのだ。
「きゃっ!」
(今だ! 所長仕込みの護身術で‥‥)
「ぼさっとすんな! 早く金を‥‥おわっ!?」

 一瞬でケリはついた。僕は犯人のナイフを持った腕をつかんで壁に叩きつけると、そのままその腕をねじりあげたのだ。人質だったあきらはそのやりとりで少し跳ね飛ばされて倒れこんでいたが、大した怪我がなかったのか僕のほうを見ている。
「くそ‥‥離せ、離しやがれぇ!」
「誰が離すかバカヤローが! 警察が来るまで大人しくしてろ‥‥探偵の目の前で強盗とはいい度胸だな」
「た、探偵!?」
 素っ頓狂な声を上げる犯人。僕は懐から名刺を取り出すと、さながら水戸黄門の印籠のようにそれを堂々と見せ付けた。
「SINエージェンシーの坂井直也だ、覚えとけ!」

 その数分後に警察は到着し、犯人はパトカーで署に連行されていった。もちろん、僕の手柄として事務所で誉められたのは言うまでもない。しかしそれよりも大事なのはアフターケアってやつだ。
「あっ、あの‥‥」
 パトカーを見送る僕に、おずおずとあきらが話しかける。僕は何気なく「ん?」と振り返った。するとあきらはもじもじとしながら、思いっきり頭を下げたのだ。
「た、助けてくれてありがとうございました! こっ、このご恩はっ‥‥」
「い‥‥いいってそんな。俺は当然のことをしただけだし‥‥」
 あきらのそんな態度にどうしていいかわからず、僕はあたふたするしかなかった。それでもあきらはまだ頭を上げない。
「で、でもボク‥‥」
「‥‥え、ボク?」
 そう、僕が彼女に興味を持ったのはこの『ボク』がきっかけだった。あきらはそれに気づくと、ちょっとだけ恥ずかしそうに笑って弁解する。
「あの‥‥む、昔からなんです。ボクの口癖って言うか‥‥」
 僕はとっさに返事ができなかった。
「変‥‥ですよね‥‥」

(可愛いな‥‥)
 彼女のあどけない表情が、妙に胸にぐっと突き刺さる。
 僕はそれに笑って答えを返した。
「そんなことないよ、可愛いじゃん」

 この時の関係で彼女とは親しくなり、それから何度もここに通うようになった。言ってみれば、彼女に会うためにこの店に来るようなもんだ。今は彼氏・彼女の関係まで一応到達はしている。
 でも、『一応』だ。まだまだそこまで関係が進んだわけじゃない。キスくらいまでしかしたことはないし、その先なんてまだまだ。それにもうひとつ気になることがある。
 それは、お互いの呼び方だ。

 あきらはいつも僕のことを『直也さん』と『さん』付けで呼ぶ。それにいつも敬語だ。これは初対面のときから全然変わっていない。いつだったか、僕自身もそれが気になったので言ってみたことがあった。でも『年上の人だから敬語は当然』とやんわりと返されてしまった。
 それに、「人のことは言えないな」というのもひとつの理由ではある。別に敬語を使っているわけじゃないが、僕自身もまだ『あきら』と呼び捨てにはできないのだ。周りの友達からは「彼女を呼び捨てにしたらやっぱり本物だな」と言われたこともある。その言葉がやけに意識に残ってしまって、呼び捨てにしようとは思うのにそれを実行に移せずにいる。別にそんなに気にするほどのものでもないかもしれない。しかし、やっぱり呼び捨てにするには勇気がいるものだ。その勇気が出せないから困り者だ。

 そんなこんなで僕らの関係は、恋人は恋人でもかなり微妙な線にある。いい加減それをどうにかしたいのはやまやまだが、どうにもできなくて頭の隅にはいつもその問題が陰を作っていた。何とか今日こそはそれをクリアしたい。例えるならお互いの間にある壁を飛び越えられるような、あるいは粉々に壊せるような、そういうきっかけを作って先に進みたい。おさらばするのだ、この現状から。僕はたった今それを心に固く誓った。
(もっとも、いつものことだから実行に移せるかは微妙なわけで)

「直也さん、終わりました~」
 普段着に着替えたあきらが僕の席にやって来る。白い大き目のYシャツが彼女のお気に入りだ。時計を見ると午後3時。時間ぴったりだ。僕は隣の席においていたバッグを肩にかけ、椅子から立ち上がると少し見下ろすように彼女の顔を見て、手をとった。
「よし、じゃあ行きますか」
「はい!」

「で、今日はどこに行きますか?」
「そうだなぁ‥‥ぶっちゃけ何も決めてないんだよ。どこか希望はある?」
 人通りの中、ゆっくりと彼女に歩くペースを合わせながら話し合う。あきらは少しあごに手を当てて考えると、何かを思いついたようにぽんと手を叩き、口を開いた。
「じゃあ、直也さんの部屋」
「えぇ! 俺の!?」
 あまりにも予想外の答えだ。変化球にもほどがある。僕は焦りを抑えつつ問いを返した。
「な、何で?」
「だって、一度も直也さんの部屋に入ったことないし。入れてくれないし」
「そりゃあ‥‥そうだけど‥‥」
 彼女にしてみればそれは単なる提案でしかないだろう。でも、僕にしてみればそれは無謀な大冒険みたいなものだ。『愛する彼女を部屋に入れる、イコール、やっちゃう』。こんな方程式が頭の中ではすでに組みあがっているわけで、それはいきなり段階をいくつかすっ飛ばして先に行ってしまうということだ。まさかそんな真似をできるはずがない。僕はそう思って「ダメ」と返事を返そうとしたのだが‥‥。

(待てよ? さっき自分で決めたんじゃないのか直也? 関係を先に進めたいんだろ? この現状とおさらばするんだろ? これは天が与えたチャンスじゃないのか?)
 最後の『天が与えたチャンス』はいささか大袈裟だが、そうだ。決めたんじゃないかついさっき。だったらこの機会を生かさないでどうする?)

 次の瞬間、自分でもビックリするほど勇気を振り絞った顔で、僕は彼女にOKを出していた。
「‥‥いいよ。じゃあ、俺の部屋にしよっか」
 もちろん、今後の展開で頭がいっぱいの状態で。

「おじゃましまぁす‥‥」
 部屋の鍵を開け、僕は先に彼女を部屋に入れた。さっきから心臓はバクバク言っていた。靴を脱ぐ手もぎこちない。
(ああ、覚悟が定まらない‥‥)
 そんな人の気も知らず、あきらは初めて入る僕の部屋に少し嬉しそうだ。壁や天井を見回しながら笑顔を浮かべている。
「へぇ~、キレイなんですね‥‥」
「ま、まあ‥‥掃除くらいはちゃんとしてるから‥‥」
 ようやく靴を脱いでリビングにやってきた僕に、あきらは笑顔を向けてくれる。
(喜ばれたんだから、一応ここにあきらを入れたのは成功だったな)
 心の中で小さくガッツポーズを作って僕は笑い返した。とはいえこの後どうするか。
「あの、そういえば晩御飯はどうするんですか?」
 あきらがふと思い出したように聞いてくる。
(そういえば何もメニューを決めてなかったな)
 僕は頬をかきながら考え込んだ。
「そうだな‥‥一応材料は一通り買い込んでるけど‥‥」
「ん~、じゃあ、ボク作ります」
「え? 作れるの?」
 思いもしない返答に僕は目を丸くした。そう、あきらが料理をしているところを僕自身見たことがなかったのだ。するとその問いかけにあきらはえへへと笑って、ガッツポーズを小さく作って答える。
「任せてください。これでも料理人のタマゴですから」

 結局あきらのそのガッツに押されて、晩御飯はあきらが作ることになった。台所からはジュゥジュゥとフライパンで何かを焼く音がしている。あきらは僕のエプロンを借りて着けていた。僕はリビングにいるので、ちょうどあきらの後姿が見えるようになっている。
(‥‥やばい、かなり理想的な絵だぞ)
 愛する彼女がエプロンをつけて台所に立っていて、その姿を見つめる彼氏なんて、甘い甘いひと時じゃないか。後ろからなのであきらの顔はよく見えないが、そのシチュエーションを考えるだけで僕の頭はさらに興奮してしまう。
 僕は料理を覗き込もうと席を立ってあきらの後ろに歩いていった。フライパンからはいい匂いが漂っている。どうやらチャーハンのようだ。なるほど、さすが料理人のタマゴ。基礎はバッチリというわけだ。
「あっ、直也さん」
 僕に気づいたあきらがちらっと顔を見る。長い髪が邪魔にならないようにポニーテールにした彼女の顔は今まで見たことがなかったため、思わずドキッとしてしまった。あきらは笑顔を残したまま、フライパンに再び目を戻す。
「もうちょっと待っててくださいね~? もうすぐできますから‥‥」
「あ、ああ‥‥」
(声が少しうわずっているんじゃないか?)
 僕は自分で自分にそう突っ込みを入れた。おまけに料理を見に来たはずなのに、すっかりあきらに気を取られてしまっている。
 ぴくっと、僕の指先が震えた。抱きしめたい。そんな衝動が襲ってくる。でも今あきらは料理中だし、変に手を出したら嫌われるんじゃないかだろうか。料理ものこともあるし。
「ん~っと‥‥あとは仕上げに塩コショウを‥‥」
 あきらが塩コショウを取ろうと体の向きを変えてきた。その時、がくっとバランスを崩して‥‥
「あっ‥‥うわっ!」

「‥‥あ」
 ぽすっ、とあきらは僕の体にぶつかってしまった。僕もあきらも一瞬のことにどうしていいものかわからず、呆然としている。すると、胸に顔をうずめていたあきらの目がゆっくりと僕の顔を見上げてきた。
「‥‥あきら‥‥ちゃん‥‥」
「直也さ、ん‥‥」
 視線がぶつかり合って止まる。今がチャンスだ。今、この瞬間が。
 僕はそっと腕を上げて彼女の体を抱きしめようとした。

 ジュウウウウウウウウウ! 
 チャーハンの焦げる音で僕らはようやく我を取り戻した。すぐさま離れると平謝りになる。
「ごっ、ごめん俺! その‥‥」
「いいんです! わっ、悪いのはボクだし‥‥って焦げる焦げる!」

 結局料理は完成し、お互いどこか気まずいままで晩御飯をとることになった。チャーハンは確かにうまかったけど、それも正直どうでもいいほど頭の中はテンパっている。失敗だ、チャンスを生かしきれなかったじゃないか。
(‥‥ああ、やっぱりチャンスは遠いな‥‥)

2.

 時間は夜の8時。そろそろあきらの門限が近づいていた。結局何もできないままで、もうすぐ今日が終わろうとしている。彼女と一緒の今日が。
「‥‥」
「‥‥」
 すぐ隣にいるのに、僕は何もできない。何も言えない。何かしようと思えばすぐにできる距離なのに。チャンスだってあったのに。
「‥‥そろそろ、ボク帰りますね‥‥門限があるし」
 静かに、あきらが口を開いてバッグを取りに席を立つ。僕は何もできないまま、ずっとソファーに座り込んで黙っていた。このままサヨナラなんて。でも、今の自分の素直な気持ちを表に出したら、あきらは傷つくんじゃないか。それだけのために、ただ、先に進みたい気持ちだけだなんてわけじゃない。でも、それを打ち明けたら‥‥
「それじゃ、直也さん。また‥‥」
 足音が遠ざかっていく。嫌だ、このままサヨナラなんて嫌だ。

(僕は‥‥僕は‥‥

 ‥‥あきらが欲しい)

 気がつくと、僕はあきらの腕をつかんでいた。しっかりと、目を見つめたまま。
「え? な、直也‥‥さん?」
 あきらは目を丸くしている。胸が苦しくて張り裂けそうだった。こんなふうに素直に『欲しい』と思ったことはない。いつも、心のどこかで僕は、それにブレーキをかけていたから。
 でも、もう止められない。
「‥‥今日は‥‥」
「‥‥」
「今日は、帰したく‥‥ない。ずっと、ずっとあきらといたい」
「直也、さん‥‥」
「‥‥嫌なら別に無理にってことはしたくないし、あきらのことも傷つけたくない。でも‥‥今日はずっと一緒にいたいんだ。俺‥‥あきらが欲しい」
 自分でもビックリするほどに、素直な思いが口から次々とあふれていた。言ってしまった。とうとう、言ってしまった。もう後戻りなんてできない。あきらが僕を嫌いになっても、そうなっても、もう、戻れないんだ。
 僕は、真剣にあきらを見つめる瞳の奥でため息を吐いた。返事で全て決まる。この先の僕らの関係も、何もかも。
 そして、次にあきらが返してきた返事は‥‥

「ボクも‥‥」
「‥‥」
「‥‥ボクも、直也さんと一緒にいたいです‥‥」

 あきらは潤んだ目でそう告げると、僕の胸にそっと寄りかかった。ふわっといい香りがする。シャンプーの匂いだ。僕はあきらをそっと抱きしめながら、その香りにくらっとした。
「あ‥‥直也さんの心臓、ドキドキしてる‥‥」
 腕の中であきらが呟く。いつもとは違う感じの甘い声。それが僕を刺激して、ズボンの中で僕のソレは自己主張を無意識に開始していた。もう歯止めなんて効かなくなりそう。僕はあきらの顔を上に向かせると、柔らかい唇に口付けた。ふにゃりと包み込むような感触が心地いい。そのまま舌を滑り込ませると、ぎこちなくあきらもそれに答えてくる。
「んっ‥‥んふ‥‥」
 酸素を欲しがって口の隙間から吐息が漏れる。そんな悩ましさがいっそう僕の欲望を駆り立て、興奮させる。僕はそっと唇を離すと、あきらに囁きかけた。
「ここじゃ何だしさ。ベッド‥‥行こう」
 こくりとうなずくあきら。真っ赤になった顔がまた可愛い。僕は優しくあきらの肩を抱くと、寝室のドアを開けて中に入っていった。

 部屋に入ると、僕はベッドにあきらを優しく寝かせてそこに覆いかぶさった。あきらは潤んだ目で僕を見つめている。長い髪がシーツの上に少し乱れて散らばり、その乱れた様子が何故だかエロティックに見える。
 あきらの唇がゆっくりと開いた。
「あの‥‥ボク、初めてで‥‥」
「うん、大丈夫。優しくする」
「ホントに‥‥?」
「俺を信じなさいって。な?」
 冗談っぽく笑って、僕はあきらのYシャツのボタンを上から順番に外していった。そしてボタンを全部外すと、シャツをめくってあきらの肌をさらけ出させた。
「キレイな肌してるんだな。前から思ってたけど‥‥」
 あきらの肌はもともと色が薄く、長い髪もあいまって不思議な印象を与えてくる。それに触ってみてもやはりすべすべしていて、とてもキレイだった。するとあきらは少し照れたようにそっぽを向いた。
「やだ‥‥恥ずかしいです‥‥」
 そんな恥じらいもまた興奮をあおる。僕はYシャツを脱がせると、白いブラジャーに手をかけた。すると、あきらは突然その手を掴んできた。
「どうしたの?」
「あの‥‥その‥‥」
 あきらは何故かもじもじとしながら悲しい表情になった。もしかして何かまずいことでもしてしまったのか、そう思うと何故だかすまない気持ちになってしまう。僕は「ごめん」と謝ろうと口を開きかけた。しかし、それを口にしたのはあきらだった。
「ご、ごめんなさい!」
「え? な‥‥何であきらちゃんが謝るんだよ?」
 理解不能な言動に僕は目を丸くする。
「だって‥‥ボク胸小さいから‥‥」
「‥‥え?」
「お、男の人って‥‥胸が大きい人のほうがいいんですよね? でも、ボクこんなんだから‥‥」
 まさか、そんなことを気にして謝ったって言うのか。そんな何でもないことで。可愛い、すごく可愛すぎる。
 僕は笑ってあきらの額に軽くキスをした。
「あっ?」
「そんなの関係ないよ。俺は小さいのも好きだな‥‥何か可愛いし」
 言いながら、僕の両手はブラの上から両方の胸を軽くもみ始めていた。確かにあきらの胸はそんなに大きくもなく、手の中にすっぽりと収まるくらいの大きさだ。その胸をもみしだきながら、僕は耳元で囁きかける。
「ほら、こんなに柔らかいし」
「あっ‥‥んん‥‥」
 あきらの口から甘い声が漏れる。初めて聞くあきらの喘ぎ声に、僕のズボンの中のものは膨張を開始する。片腕を背中に回してブラのホックを外し、肩紐をずらすと小さなふたつの山があらわになる。今度はその山を直に包み込んで愛撫した。
「やぁんっ‥‥! ふ、やぁ‥‥」
 鼻にかかった甘い声。こんな声を出されてしまったらもうお手上げだ。もっと声が聞きたい、もっとあきらに喘ぎ声を出させたい。そんな欲望が頭の中を満たしていく。軽く僕は左の乳首を口に含んで舌で転がした。
「あんっ! あっ、あぁん!」
 同時にもう片方は親指で愛撫されている。両方の胸から与えられる異なる感覚に、あきらの声はさらに跳ね上がっていた。
(初めてなのにこんなに‥‥。どうしてこんなにあきらの声はヤラシイんだろう。まるで声で僕を誘っているみたいだ)
 僕は乳首から手を離すと、つうっと胸から腹へ、そして腹からスカートのチャックへと指を這わせた。くすぐったいのか、あきらは体を小さくくねらせる。
「んやぁ‥‥っ‥‥直也さぁん‥‥」
 僕はスカートのチャックを下ろしながら、密着するようにあきらの体に近づいて、耳元で静かに言葉を吐いた。
「初めてなのにこんなに感じてるの? ヤラシイなあきらちゃんは‥‥」
「やっ‥‥! 言わないでください‥‥あっ‥‥」
 あきらは耳の芯まで真っ赤にして目をそらしている。

 もぞもぞとスカートを下ろすために僕の片手が動く。
 もう片方は、さっきまで唇をつけていた左胸で舌の代役を引き継いで、こりこりと乳首を弄んでいる状態だ。一生懸命に否定するあきらをからかうように愛撫をしながら、僕はさらに言葉責めで追い討ちをかける。
「感じてるんだろ? 耳の芯まで真っ赤にして、小さな胸をいじくられて気持ちいいんだろ? それに‥‥ほら」
 スカートが膝までずり落ちたところで、左手はパンティの上からしっかりと姿を現したシミまでたどり着き、指先が布越しに彼女の大事な部分を責める。あきらの声が跳ね上がった。
「ふあぁんっ!」
「こんなにシミになってるよ? あきらちゃんのここから汁が溢れて‥‥感じてるからこんなになっちゃうんだろ?」
「やぁっ‥‥直也さんのいじわるぅ‥‥」
 いじわる、その言葉の響きの何とヤラシイことか。僕の愛撫はさらにエスカレートし、耳元での囁きも調子付いていく。
「これじゃパンティの意味もないよな? じゃあ‥‥取っちゃおうな? 全部」
「えっ‥‥? や、ちょっと待っ‥‥!」
 待てない。絶対待てない。
 僕は両手をかけて一気にスカートを引き下ろすと、その勢いでパンティにも手をかけて脱がせてしまった。あきらは何とかそれをやめさせようと足を動かしたが、しょせんは無駄な抵抗、今の僕の前には何の邪魔にもならない。とうとう何も身につけていない姿に剥がされてしまって、あきらは真っ赤な顔に潤んだ目で羞恥心をこらえていた。
「あぅぅ~‥‥」
 キレイで可愛い体つきをしている。それが第一印象だった。白くてすべすべの肌、やや小ぶりな胸、幼さの少し残る表情、そしてまだそれほど濃くないヘア。その全部が愛しくて僕は少しだけ見とれていた。初めて見るあきらの体。でも、やはりこういう要素が集まっているから「あきらなんだ」と自覚できる。そう、今目の前にあるのはあきらの体なのだ。
「‥‥可愛いよ、あきらちゃん」
 僕はそう言って笑いかけると、あきらのその生えかけのヘアに手を添えて、指で花びらをなぞった。湿った花びらの隙間からはちゅくっと濡れた音が漏れ、あきらの口からも甘い喘ぎ声が聞こえてくる。
「ひゃぁ‥‥んっ‥‥!」
「すっげえ濡れてる。やっぱり感じてたんだ?」
「んあ、はぁ‥‥! ぁあん‥‥!」
 どうしてこんなふうに変わってしまうんだろう。普段見せてくれるような明るい表情とは全然違う、切なげで、それでいて惹きつける表情。
 あきらの肌はうっすら上気して赤くなり、独特の色香すら漂わせる。僕はそんなあきらの表情に虜にされ始めていた。
 ズボンの中には抑えきれないほどに膨張した僕自身がある。早くあきらの中に入りたい、もっとあきらを乱れさせたい、そう主張している。
 でも、まだだ。
 半分夢中で僕は自分の長袖Tシャツを脱ぎ捨てると、あきらの肌につぅっと舌を這わせながら降下していった。首筋から胸の谷間、腹、そして、濡れたあきらの中心へ。
「きゃぁんっ!」
 あきらの声が甲高く響く。初めて見るあきらのそこはもうびしょびしょだった。僕の欲望を刺激するように、挑発するようにピンク色がてらてらと光っている。
「やっ‥‥直也さん見ないでぇ‥‥汚いです‥‥」
 あきらが涙ぐんだ目で訴えてくる。でもその表情もいい感じだ。僕はひとすくいジュースを指につけ、ちゅっとくわえた。甘い味がする。
「あきらちゃんの‥‥甘いよ。汚くなんかない、すっげえキレイでヤラシくて‥‥」
 僕は目を閉じてその部分に口付けた。そのまま舌を中に差し入れて、漏れてくる甘い蜜を逃さないように舐め取っていく。
「ひぁっ、あっ‥‥あんっ! あうっ‥‥」
 その花びらの少し上、小さなクリトリスをつまんでむき出しにすると、それをこりこりと舌で転がして弄ぶ。まるで何かのスイッチのように蜜が溢れ出して、シーツの上にシミを作っていた。
「あっ、ダメ‥‥ダメ! ボクおかしくなる‥‥おかしくなっちゃうぅ‥‥」
 切なげに喘ぐあきら。僕もそろそろ我慢の限界だった。触られてもいないのに、あきらの表情が、声が、しぐさが。僕をおかしくさせる。
 早く、早くあきらとつながりたい。早くひとつになってしまいたい。僕は口を離し、あきらの顔をまっすぐに見つめられる位置で口を開いた。
「俺ももうやばいよ‥‥入っていい?」
「‥‥え?」
 あきらは潤んだ瞳で聞き返してくる。僕はあきらの左手を取ると、ズボン越しに自分のソレに触れさせた。あきらの大きな瞳がさらに大きくなる。
「‥‥直也、さん‥‥」
「俺、あきらちゃんとひとつになりたい。ひとつになって‥‥あきらちゃんのこと感じたい」
 僕はまっすぐにあきらの顔を見つめていた。ずっと一緒だった。あの日から、ずっと僕はこの子と一緒にいた。だけど、今僕の胸の中にあるこの愛しい気持ちは今までとは違う。こんなふうに激しく、でも優しくあきらを想ったことなんてない。
 それはあきらも同じみたいだった。あきらは僕の唇に自分からキスをしてきた。いつもなら僕がリードしているのに。意外なことに目を丸くする僕に、あきらはそっと笑ってうなずいてくれた。
「‥‥ボクも‥‥直也さんと一緒になりたいです‥‥」
「‥‥あきら、ちゃん‥‥」
「大丈夫です。ボク‥‥信じてますから、直也さんのこと」
 もっと愛しさがこみ上げてくる。胸が苦しいくらいに心が、体が、あきらを求めている。
 僕はあきらにそっとキスをすると、ズボンのジッパーを下ろして自分自身を取り出した。やっと窮屈な空間から解放されたソレは、その存在を大きくアピールするように反り返っている。その先端が濡れたあきらの花びらに触れた。
「‥‥っ‥‥」
 軽く触れただけなのに、脳髄まで軽く電気ショックが突き抜ける。これであきらの中に入ったらどうなるんだろう、そう思うだけで興奮できる。僕はふぅっと一息つくと、静かにあきらに言った。
「行くよ。力、抜いて‥‥」
「はい‥‥」
 あきらが潤んだ目でうなずくのを見ると、僕はあきらの中へと侵入を開始した。
「いっ‥‥痛!」
 ぎゅっと目をつむり、シーツを握り締めてあきらが呻く。心配になって僕は動きを止めると、あきらの髪を撫でて問いかけた。
「大丈夫か?」
「っ‥‥平気です‥‥最後まで来てください‥‥」
 平気なはずがない。だって、そのつながりかけた部分からは、つぅっと一筋の赤い線が流れ出ているんだから。なのに、あきらはそれを無理している。僕に嫌な思いをさせないために。
 僕はぎゅっとあきらを抱きしめると、キスをして優しく微笑んだ。
「あきらちゃん、力抜いて‥‥もう少しだから」
「はい‥‥っ‥‥」
 痛みをこらえるように目を閉じるあきら。僕はその目の端からこぼれる涙を指で拭い取りながら、少しずつ腰を進めていった。やがて、先端がこつっと壁に当たる。あきらの中に僕が全て収まったという証拠だ。キュウキュウとしめつけてくるあきらの中で、僕が脈打っているのがわかる。
「あきら‥‥すげ、きつ‥‥」
「あぅ‥‥んっ‥‥」
 このままじゃもちそうにない。あきらの痛みが和らぐまで待っていようと考えてたけど、どうやらそこまでの余裕はないみたいだ。僕はあきらの前髪を優しく撫でると、少しずつ腰を動かしてあきらの中を動き始めた。
「ふやっ‥‥! あっ、うぁっ‥‥直也さぁん‥‥」
 まだ痛みの残るはずのそこはじっとりと濡れていて、まるで絡みつくように僕を刺激する。あきらの声はまだ悲鳴に近いように聞こえたけど、少しずつ響きが変化していた。そう、痛みから快感に変わる瞬間のそれのように。
「あんっ! やぁっ、何これぇ‥‥す、すごいよぉ‥‥」
「くぁっ‥‥」
 最後の一滴まで果物からジュースを搾り出すように、僕を締め付けるあきらの柔らかい空間。僕も気持ちよくておかしくなりそうだ。ペースを速めれば速めるほど刺激が頭を刺激して、意識を飛ばそうとする。でもそれに負けないようにと僕はしっかりあきらの顔を見つめていた。
「ふぁっ、あっ‥‥あんっ! 直也さぁんっ!」
 涙が一筋こぼれる。僕はその涙を拭うと彼女に口づけた。貪るように唇を犯し、舌と舌を絡めあう。僕らはケモノみたいにその行為に没頭した。
 そうだ、僕らはケモノだ。お互いを愛する気持ちで激しく求め合う、優しいケモノ。
「やっ‥‥ボク、もう‥‥もうおかしくなっちゃうっ‥‥!」
「‥‥くっ、俺ももうやばいかも‥‥」
 頭の中が真っ白になっていく。もう限界だ。
「うぁっ、あきらっ‥‥!」
「直也‥‥あぁんっ! ボク‥‥ボクぅぅ!」
 あきらが背中にしがみつく。その次の瞬間、僕はあきらの中でどくどくと果てた。あきらもぐっと目をつぶって、それだけが頭に焼きついた。

「‥‥ん」
 目が覚めると、外はすっかり暗くなっていた。体を起こして、少しの背伸び。そしてさっきまでの行為を思い出す。
 初めて抱いたあきらの小さな体。細くて、白くて。すると頭に眠りに落ちる前の言葉が蘇った。
「呼んじゃったなぁ‥‥あきらって」
 初めて呼び捨てにしてしまった。でも気分はそんなに恥ずかしくもない。むしろ嬉しいくらいだ。ようやく自分の中の問題を飛び越えられたんだ。そう思うとますます愛しさがこみ上げてくる。僕は小さな声で「あきら」と呟いてはバカみたいに笑った。
「‥‥あ」
 そういえば。と、横で眠るあきらの顔を見て思い出す。さっきあきらも‥‥

「‥‥うぅん‥‥あ」
「おはよ、あきら」
 目が覚めるや否や、僕の『あきら』という言葉に反応してかぁっと赤くなるあきら。あまりにも期待通りの反応に思わず吹き出してしまう。あきらはむっとした顔で声を上げた。
「なっ‥‥何ですかぁもぉっ! い、いきなりあきらなんて‥‥」
「嫌だった?」
「べっ‥‥別にそうじゃないけど‥‥」
「‥‥でも、おあいこだろ?」
「え?」
「さっき言ってたじゃん。直也‥‥ってさ」

「‥‥っ!」
 思い出してまた赤くなるあきら。こんな風にあどけなくて、可愛い表情がやっぱり好きだ。僕はもっとからかってみたくて耳元でそっと囁く。
「もう1回呼んでよ、あきら」
「‥‥あぅぅ‥‥」
「ほら、あきら」

「‥‥直也‥‥」
 ぼそっと呟くあきら。僕は満面の笑みでそれに「ん?」と返事を返す。あきらはちらっと僕のほうを見て照れくさそうに笑うと、僕に寄りかかって体を預けた。あぁもう、何でこんなにあきらが好きなんだろう。気がつけば自然に僕の腕が彼女を包んでいる。
 でも、それでいいんだ。変に構えずにそうやって愛情を見せられるなら、それだけ心の距離が近いってことじゃないか。
「直也っ!」
 嬉しそうに僕の名前を呼ぶあきら。こうやってずっと一緒ならいい。一緒にいられるなら、それで幸せだから。
 さあ、名前を呼ぼう。やっと言える、大好きな人の名前。

「愛してる‥‥あきら」

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