刻みつけて

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アダルトな読み物のお部屋

刻みつけて
2021年07月27日 00時23分
DUGA
デカ拳

ベッドのきしむ音。
「あぁ、いやぁん‥‥」
 私を背後から抱きしめ、パジャマの上から私の乳首を弄ぶ指。
 それは間違いなく愛する悟のぬくもり。
 悟の手が私の胸にからみつく。指の先が乳首をはじいた。
 そして悟の指はパジャマの下へ滑り込み、直に乳首をとらえた。
 もう片方の指を、既に十分潤っているであろう私の下半身へもぐりこませていった。
 悟は両方の指を一気にふるわせ始めた。
 これ以上ないくらいの快感が私の身を貫く。
「やぁん! 悟くんっ‥‥ダメっ‥‥あはぁ‥‥っ!」
 それでも悟の指は動きをやめなかった。
 まるで、私がそうしてほしいと願っているのを知っているかのように激しく動き回った。
 私の体の端々がしびれ出して、どこかへ吸い込まれそうな感覚に陥っていく。
 あえぐ声がどんどん大きくなる‥‥。

 目を開けた瑞穂が見たものは、いつもの自分の部屋の天井だった。
「また‥‥夢‥‥」
 起き上がろうとするが、夢の余韻で体がじんとしている。
 パジャマがこすれて、乳首がびくっと反応してしまった。
 身体の中心が濡れ始めていくような気がした。
 瑞穂はつい先ほどの甘い夢を思い出し、思わず自分の指を乳首に持って行こうとしてしまう。
 快感をもう一度よみがえらせたい‥‥
 その想いを無理矢理振り切るように慌てて手を引っ込めた。
(ダメダメ、いつまでもこんなことしてるわけにはいかないんだから‥‥)
 瑞穂は火照りのおさまらない自分の身体を抑え、ふと目覚まし時計を見る。
 すると大学へ出発しなければいけない一時間前と時間が迫っていた。
「大変!」
 瑞穂はバスタオルと着替えを抱えてシャワールームへ駆け込んだ。

 悟は半年前に交通事故で亡くなった。
 瑞穂と悟は大学に入ってから知り合い、付き合うようになって一年たった夏のことだった。
「ずっと一緒にいられたらいいな」
 そう言い合って二人で買ったおそろいのストラップが血に染まったその光景。
 瑞穂は目の前で起こったその光景を、いまだに忘れられない日々を送っていた。

「もう半年たつのかぁ‥‥」
 瑞穂は大学へ向かう途中、とある交差点のわきで立ち止まった。悟が亡くなった交差点だった。
 午前10時という中途半端な時間帯だからか、人通りも車もかなり少ない。
 真冬ということもあり、風はとても冷たかったが、瑞穂はとても気持ちいいと感じた。
 ふと目を閉じてみる。
 瑞穂は今まで何度もあの瞬間を思い出した。
 悟は、瑞穂の落としたボールを追いかけていって、見通しの悪い交差点に出たのだった。
 キキキィっ! ドンっ! と耳をつく轟音。横たわる悟と座り込む自分。

――あのとき私がテニスボールを落とさなかったら。
――あのとき私が悟くんを無理矢理引っ張っていたら。

 何度も自分を責めた。何度も思い出した。何度も泣いた。
 あれから半年たっても、思い出すのは悟のことばかりだった。
 瑞穂の部屋で何度肌を重ねただろうか。
 悟の笑顔、悟の声、悟の愛撫‥‥
 悟が亡くなってすぐは、思い出すだけで何をするにも泣いてばかりだった。
 今まででいちばん愛した相手だった。これからもずっとそばにいるはずだった。
 悟くん、悟くん、悟くん‥‥

 パシっ!

 誰かが瑞穂の背中を叩いたのだ。
「いったぁ~」
 瑞穂が振り返ると予想通りの憎たらしい笑顔があった。
「もぉっ、智弘!」
「バーカ、こんなとこでぼっとつっ立ってる奴が悪いんだろ」
「もお~」
「ほらっ、遅刻するぞ! ”憲法2”の授業の単位落とせないだろ!」
「わ、いっけない!」
 瑞穂は智弘を追いかけるようにして走り出した。

 智弘は瑞穂の幼なじみだった。
 何の縁か同じ大学同じ法学部に入り、しかも最近同じテニスサークルに入り、同じ授業を受け、何かと瑞穂にくっついてくる。
 小学校の頃からずっと仲良くしていた大切な友達。
 悟と瑞穂が付き合いだしたのを知った智弘は、少し瑞穂から距離を置くようになり、瑞穂が寂しいと思うようになるほど仲がよかった二人だった。
 そんなときにあの交通事故。
 瑞穂の恋人が事故と聞いて、真っ先に病院に駆けつけ、瑞穂の手を握ってずっとそばにいてくれた智弘。
 あのとき、智弘は最後まで何も言わずにずっとそばにいてくれたっけ‥‥
 智弘の背中を見ながらふと思い出す。
(やだ、何で今頃こんなこと思い出してるんだろ)
 走りながらあのときの智弘の手のぬくもりを思い出し、自分が少しずつではあるが悟のことを吹っ切れていっていることを感じていた。

「ギリギリセーフ!」
 智弘と二人でチャイムと同時に大教室に滑り込み、後ろの方の座席に座った瑞穂は、慌てて教科書とノートを取り出す。
「お前、まだあの交差点通ってるのか。他の道があるだろ」
 瑞穂はわずかにぎくっとした。そこに先生が入ってきたので智弘は声をひそめた。
「わざわざあそこ通ることないだろ。遠回りじゃないか」
「智弘だって通ってるじゃない」
「俺は‥‥お前がもしかして通ってるかもって心配してさ」
 瑞穂はそっと微笑んだ。
「ありがと。でももう平気だから。忘れたくないようにしたいだけなの」
「忘れないように?」
「悟くんはいつまでも私の」
 言いかけた瑞穂の唇をいきなり智弘がふさいだ。瑞穂は目を見開いた。身体が固まってしまって、抵抗することもできなかった。
 唇を離して智弘は静かにつぶやいた。
「瑞穂、お前忘れたくないって言うけどさ。いつまでも引きずってるわけにもいかないだろ」
「智弘‥‥」
「俺だってさ、辛いんだよ。俺はずっとお前のこと‥‥」
「‥‥の、バカぁっ!」
 授業中であることを忘れて大声をあげた瑞穂は、教科書をそのままにバッグだけ持って走り出した。
 その大きい目に涙をいっぱいためて。
 あとに残された智弘は、叱る教師の声も耳に入らず、苛立ちと後悔と愛しさを込めて瑞穂の出て行った出口を見つめていた。

(智弘の‥‥バカ、バカ、バカ! なんであんなことするのよ!)
 瑞穂は結局家に帰ってきてしまった。
 濡れた目をおさえるために、顔にばしゃっと水を浴びせた。
 悟の笑顔がいつものように脳裏に浮かんで、それから智弘のキスがよみがえってきた。
 ぶわっと涙があふれてくる。
 智弘のことを友達だと思っていたのは自分だけだったのだろうか‥‥そう思うと切なさがこみあげてきた。

――俺はずっとお前のこと‥‥

 思い出すと胸がきゅうっと痛くなる。
 どうしてこんなに痛いんだろう。
 智弘のこと、最高の友達だと思っていたのに。
 これからもずっと友達でいられると思っていたのに。
 バカ、智弘のバカ‥‥

 トゥルルルッ‥‥

 急に携帯電話の呼び出し音が鳴り響いて瑞穂は身体をびくっとさせた。
 案の定、それは智弘からの着信だった。
『瑞穂、ごめん俺‥‥』
「どうして‥‥どうしてあんなこと‥‥」
 智弘の声を聞くと、なぜかまたどうしようもない切なさがこみあげてきて、瑞穂は声をつまらせた。
『俺、俺さ』
「‥‥っ、話したくない‥‥」
『瑞穂の忘れ物‥‥』
「そんなのいい!」
 そして何か言いかける智弘の声を振り切って、乱暴に電話を切った。電源も切った。
 瑞穂は何も聞きたくないというふうに布団をかぶって、ベッドにもぐりこんでしまった。
 先程おさまったはずの涙がまた堰を切ったように流れ出した。
(忘れろ、忘れろ‥‥)
 瑞穂は自分にそう言い聞かせ、落ち着かせようとすればするほど眠れなかった。当たり前だ、昨夜の眠りから覚めてからまだ数時間しかたってないのだ。
 しかし瑞穂は智弘のことを思い出すと、疲れとともにあたたかい感情もわきあがってきている事に気づいた。
 しかもそれは悟と初めて付き合って、初めてデートして、初めてキスしたときのあたたかい感情に似ていた。
 瑞穂ははっと気づいてその考えを振り払った。
(そんなわけない!)
 何回も頭を振って、瑞穂はふぅっと息をついた。
(でもこれが悟くんを吹っ切ってないってことなの?)

 また夢を見た。
「瑞穂‥‥瑞穂‥‥」
 聞きなれた声が聞こえる。その腕に抱きすくめられる。
 腕が少しずつ動き出して、乳房をとらえ、乳首をとらえ、下半身へと指が這う。
 抵抗できない。
「あぁ‥‥ん」
 思わず声が漏れる。
「やぁ‥‥ぁん、智弘‥‥」
(‥‥智弘!?)

 はっと瑞穂が目を覚ましたとき、あたりはもう真っ暗だった。時計を見ると18時を過ぎている。
(やだ、どうしてまたあんな夢‥‥しかも相手が智弘だなんて‥‥)
 ぐっすり眠って目を覚ましたら、先程の智弘とのことなど忘れてると思っていたのに、逆だった。
 あんな夢を見てしまって、身体全体が智弘のことを覚えている。
 身体の中心が熱く濡れてしまっていて、瑞穂は朝のように触りたい欲求と激しい動悸を抑えようとする。
 昼の出来事も頭はすっかり覚えていた。しかも唇の感触まではっきりと。

 洗面所でまた顔に水をかぶる。
 そして乱れた髪と服装を簡単に直し、ベランダへ出た。冷たい風に当たる。空はもう真っ暗だ。
「智弘‥‥」
 自分でも気づかないほどのかすかな愛しさをこめて、空へ向かってその名を呼んだ自分に少し驚き、ふと微笑んだ。
(何ドキドキしてるんだろ、私‥‥)

「呼んだか?」

 ドキっ!
 鼓動が跳ね上がった。
 瑞穂は驚きと共に先程の夢の中の快感を思い出し、身体を震わせた。ベランダの下をのぞくと智弘がマンションの入口の前に立っていた。先程別れたときの姿のままで。
 智弘を目にした途端、鼓動がどうしようもない速さで踊りだした。
「なっ‥‥智弘! そんなところで何やってるのよ!」
「決まってるだろ、瑞穂に会いにきたんだよ。言っただろ、教科書返すって」
「そ、そんなのいいって言ったのに‥‥」
 瑞穂はおさまらない鼓動を隠すように微笑み、吹き抜ける風の冷たさを感じてドアロックを解除した。

 しばらくして、智弘が瑞穂の部屋にやってくる。
 瑞穂が大学に入り一人暮らしを始めてから、智弘が部屋にやってくるのは初めてだった。
 実家が近い二人は、子どもの頃からお互いの家によく遊びに行ったものだった。瑞穂はそんなことをふと思い出す。
 真冬だと言うのにコートも身につけず、ざっくりとしたニットだけの智弘は、座り込んで小さくくしゃみをした。
 瑞穂は部屋の暖房を一段階あげてやる。あったかいココアを智弘に手渡した。
「瑞穂、俺さ‥‥」
「ごめん!」
 智弘の言葉を遮って瑞穂は叫んだ。智弘が驚いて瑞穂を見つめる。
「智弘の‥‥言うとおりなの。悟くんのことが忘れられないうちは、前に進めてないのよね」
 智弘は黙って聞いている。
「あたしね、悟くんのこと本当に好きだったの。今でも夢に出てきてあたしを‥‥」
 そこまで言って、先程の智弘との夢を思い出して、顔がぽわっと熱くなった。赤くなった。智弘はそれを違うように勘違いしたのだろう、泣くなよと言う代わりとでもいうように瑞穂を抱きすくめた。
「な、智弘‥‥」
「バカ瑞穂! 俺はそんなこと知ってるよ。‥‥ずっと一緒にいたんだから」
 智弘の言葉があったかく、瑞穂の心の中にしみわたってくる。
「瑞穂、悟くんのこと、忘れろなんて言ってごめん。でも‥‥お前は覚えてなきゃいけないんだよな。前に進むってのは、忘れることじゃなくて、刻みつけることなんだよな」
「‥‥刻みつける?」
 智弘は瑞穂を抱きしめたままうなずいた。
 瑞穂の身体から腕を離して、瑞穂をまっすぐに見つめたまま、智弘はきっぱり言った。
「覚えておきたいって言った瑞穂の気持ち、わかってやれなくてごめん。瑞穂しか知らない悟くんを、ずっと心の中にしまっとかなきゃダメだよな。過去にとらわれるのと、過去を刻み付けるのは違うんだよな」
 瑞穂はまっすぐに自分に入ってくるその智弘の声を静かに受け止めながら、今までとは違う涙を流していた。
 そんなふうに考えたことなかった。
 そんなふうに考えられるなんて思わなかった。

 気がつくと、涙があふれてきた。
「智弘‥‥」
 智弘が急に顔を赤くし、再びぎゅっと瑞穂を抱きしめる。
「反則かもって思うんだけど‥‥ごめん、抑え切れなかった。俺、瑞穂がすげー好きなんだ」
 智弘は抱きしめる手に力を込めて言った。
「瑞穂のそばにいると俺が元気になれた。これから‥‥俺が瑞穂のそういう存在になりたい」
 さもいとおしいと言うように智弘が瑞穂の髪に頬を寄せた。そして瑞穂の顔の涙をぺろっといたずらっぽくなめた。そこではっと我に返ったように瑞穂が顔を背ける。
「‥‥智弘のバカ‥‥」
「瑞穂?」
 瑞穂はそのとき初めて照れたような様子を見せ、智弘を抱きしめ返した。両腕に力を込める。
「あたしだって‥‥あたしだって智弘のこと好きだけど‥‥ずっと友達のままいたかったんだもん‥‥仲良くしていたいんだもん‥‥」
「ゆっくりでいい、俺を見つめてほしいんだ。俺、お前を独り占めしたい。ずっとずっと瑞穂のそばにいたい」

 急に智弘が顔を瑞穂に近づけた。
「これから瑞穂のことを元気にしてやりたい。俺ならできるよ。ずっと‥‥こうしたかった‥‥」
 今まで見たことのない切ない智弘の表情をみて、瑞穂は動悸が速くなるのを感じた。
 二人の唇がゆっくりと重なる。
 教室でのキスとは違う、優しくて愛情にあふれたキス。
 瑞穂は無意識に目を閉じ、夢での快感をだぶらせてキスに酔い、ただただ身を任せていた。

 瑞穂はふと我に返って智弘の唇を逃れた。でも顔は火照ったままだ。それが余計智弘を熱くさせた。
 まっすぐに瑞穂を見つめる智弘の視線から、瑞穂はどうしても逃れられなかった。
(こんな智弘初めて‥‥)
 愛しさがこみあげてきている自分に動揺しながら、瑞穂は消えそうな声で呟いた。
「でもあたし‥‥」
 智弘は動じない。
「これからは、俺がお前にいろんなことを刻みつけてやる。瑞穂‥‥」
 智弘は力強く言い切って、ぐっと腕に力を込め瑞穂の唇を強引に吸った。
 荒々しいキス。長い長いキス。
 ちゅ‥‥っ‥‥ちゅうっ‥‥。
 お互いの唇を貪り合う激しい音が少しずつ少しずつ響いてくる。
 やがて、智弘の舌が瑞穂の唇を割って入ってこようとした。瑞穂はもう抵抗しなかった。

「瑞穂‥‥唇柔らかい‥‥もっと‥‥吸っていい?」
「ダメ‥‥」
 瑞穂がぱっと赤くなって顔をそむけようとする。
 智弘の見たことのない瑞穂の表情だった。
「瑞穂‥‥可愛い‥‥」
「なっ、何言っ‥‥んんっ」
 智弘はこの瞬間に理性がとんだ。悟との事を冷静に諭していたときの智弘の冷静さはもう消えて、好きな女を目の前にして欲望を懸命に抑えようとしている一人の男となった。
 瑞穂の柔らかな唇を音を立てて何度も吸う。
 ちゅ、ちゅ、ちゅ‥‥ちゅうっ‥‥
 瑞穂の恥ずかしそうな表情も、たまらなく智弘を興奮させた。
 くちゅ‥‥ちゅ‥‥ちゅ‥‥っ‥‥
 二人の舌が絡み合う音が部屋に響く。
 唇を重ねたまま、智弘は右手を瑞穂のトレーナーの胸へ這わせた。全体をゆっくりゆっくりもみしだく。
「‥‥ん‥‥ふぅ」
 瑞穂の口元からなまめかしい吐息がもれて、智弘の欲望にさらに火をつけた。唇を瑞穂の首筋に添わせながら、ゆっくり瑞穂をベッドへ押し倒した。
 右手の指で少し乳首をはじくと瑞穂は身体を一瞬ビクンっと震わせた。でもなかなか声を出そうとはしない。甘い吐息はたくさん漏れている。
「瑞穂、声出さないの?」
「‥‥」
 瑞穂は恥ずかしそうに智弘から目をそらす。
(瑞穂、わざと声出さないようにしてる‥‥)
「わかった、我慢できるまで我慢してて、瑞穂」
 そして智弘は胸への愛撫を再開した。
 トレーナーの上からでも下着を着けていない瑞穂の乳首ははっきりとわかる。感じ始めているのだ。
 しつこいほど、トレーナーの上から乳首をはじいた。

 びくっ‥‥びくっ‥‥

 その度に甘い吐息を漏らしながら瑞穂は身体をよじらせる。
「は、はぁ‥‥っ」
「瑞穂、まだ声我慢してるんだ? いいよ、そのまま我慢してて」
 智弘はまた首筋にキスを降らせながら、両方の胸を包み込んだ。ゆっくり乱暴にならないようにもみしだく。瑞穂はさらに顔を紅潮させる。
 智弘の指がトレーナーの上から乳首をとらえた。二本の指ではさみ、そのままプルプルと震わせてみる。
(あ‥‥気持ちい‥‥)
「あっ、ぅぅ~~‥‥っ‥‥んっ‥‥」
(もっともっともっと、気持ちよくさせてやる‥‥)
 智弘がたまらずトレーナーの下に手を入れると、瑞穂の体温が智弘に伝わってきた。瑞穂は快感と羞恥で顔を紅く染めたまま小さく震えている。
「瑞穂‥‥怖がらないで」
 瑞穂の耳元で囁いた智弘は、直接瑞穂の胸を優しくまさぐり始めた。
「んっ‥‥んーーーーっ!」
 瑞穂はだんだん我慢できなくなったように、くにゃりと身体をよじらせて智弘に抱きついた。
(だめ‥‥あぁ‥‥下半身が熱くなってきちゃ‥‥ぁんっ!)
 その瞬間に智弘が瑞穂のトレーナーを一気に胸の上までずり上げた。瑞穂の形のいい乳房が外気に触れる。心なしか紅く染まり、頂きを主張するその素晴らしい眺めに、智弘はしばし釘付けになった。
「瑞穂‥‥可愛い‥‥紅くなってるね、ココ」
 指先で優しく頂点に触れた。トレーナーの上から触っていたときとは全然違う感触に智弘は興奮した。そしてクリっと優しく、時にグリっと激しく乳首をいじりまわす。震わせたり、つまんだり、押さえたり。
 クリ、クリ、クリと執拗に乳首を責めたてる。コリコリとした硬くなった乳首の感触が智弘の指に伝わる。
(あ、そんなにされたら声出ちゃう‥‥我慢してるのに‥‥っ!‥‥)
「‥‥は‥‥っ、ぁ‥‥はぁっ‥‥」
 瑞穂の声も少しずつ吐息から、はっきりとあえぐ声に変わっていく。
(でも、でもどうして? 我慢してると余計感じちゃう‥‥ぅん‥‥)
 そんな瑞穂の心の声を知ってか知らずか、智弘はとうとう瑞穂の乳首に唇を寄せた。

 ちゅう‥‥っ!

 わざと音を立てて一回だけ大きく吸われる。
「あぁっ!」
(そんな、音立てるなんて!)
 瑞穂はとうとう我慢しきれず大きな声をあげてしまった。
 智弘がその声に後押しされるように右手は乳首をもてあそんだまま、激しくもう片方の乳首を吸い始めた。
 ちゅ、ちゅ、ちゅうっ‥‥
「あ、あぁ‥‥はあん、あぁんっ!」
 瑞穂はもう我慢しないとでも言うように、激しく鼻にかかったあえぎ声を発し始めた。
 智弘は唇で乳首を優しくはさみ、それから乳首の先を優しく時に激しく舌で転がし始めた。そして時たま強く吸い上げることも忘れなかった。
 ちゅ‥‥ペロペロペロ‥‥ちゅくっ‥‥
 その音をわざと瑞穂に聞かせるように大きく音を立てて。
「はぁん! あぁ、あっ‥‥やぁあん! い‥‥あぁん!」
 瑞穂はもうたまらないと言わんばかりに腰をくねらせる。
(だめ、もう我慢できない‥‥一人でしてたときなんかと比べものにならない‥‥っ!)
「智弘‥‥っ!」
 智弘は瑞穂の胸から唇を離そうとはせず、そのまま瑞穂のジャージの中にするりと右手を滑り込ませた。滑らかな瑞穂の太腿の感触をゆっくり味わい、それから足の付け根に指を沿わせる。
「‥‥っ!」
 瑞穂が声にならない声をあげ、表情をゆがませた。
 その表情は快感を求める雌の顔。智弘はもういとおしくてたまらないというように愛撫を続ける。
(たまんね‥‥瑞穂可愛すぎるよ)
 智弘の指が、パンティの上から秘所を優しくさすりだした。さざめく波のように優しく、羽根でなでるように優しく、しつこいくらいに往復を繰り返す。
 乳首への刺激と共に与えられる快感に、瑞穂はうち震えた。身体をビクンとふるわせる。
「あ、あぁ、あ! 智弘‥‥っ!」
「瑞穂‥‥感じて?‥‥な?」
「やぁ‥‥あっ‥‥は、恥ずかしい‥‥あぁん!」
「瑞穂、可愛いよ‥‥ほら、俺の指までじっとりしてきたよ」
「はぁっ‥‥いやっ‥‥そんなこと言わない‥‥でぇ‥‥ぁん‥‥」
 抵抗の声と共にあえぎ声を漏らし、その声を紡ぎ出す瑞穂の表情は、今まで智弘が見たことのない色っぽさにあふれていた。
 智弘は自分自身も欲情して大きくなっているのを気づかれないようにきゅっと顔をひきしめ、できるだけ時間をかけて瑞穂を愛撫した。

 瑞穂は今までそこまで時間をかけて愛撫されたことがなかった。
 今も智弘はまだ、パンティの上から羽根をすべらせるような愛撫をしつこく繰り返している。
(あぁ‥‥こんなに気持ちいいなんて‥‥)
 優しい智弘の指。
 なでられるように優しい愛撫。
 内部から聞こえてきそうなくちゅん、くちゅんといういやらしい音。
「気持ちいい? 瑞穂‥‥」という、いやらしい智弘の声。
 全てが瑞穂の感覚をさらに鋭くし、瑞穂の快感を増幅させていた。
 もっと気持ちよくしてほしい欲望を瑞穂はもはや抑えられなくなっていた。して、して‥‥と言うように無意識に腰をくねらせてしまう。
「あぁ‥‥智弘‥‥智弘‥‥」
 心地よく快感に身を任せて身体中がしびれ始めたそのときだった。
 智弘はパンティの上からぷっくりとふくれている瑞穂の突起をつまみあげた。
「ひゃあんっ!」
 予想もしなかった智弘のいきなりの愛撫に、瑞穂は悲鳴をあげた。
 それをかわきりに、智弘はパンティごと一気にジャージを脱がせてベッドの下に落とした。
 そのまま瑞穂の中心部に指をすすめていき、指がすっぽりと入ってしまったところで指先を細かく振るわせた。
「あっ! あぁん! はぁっ! あぁん、あぁんっ‥‥あん‥‥あ‥‥ぁん‥‥っ‥‥」
 瑞穂の身体がビクンと大きく跳ねた。智弘は指全体を出し入れし始めた。
(すげ‥‥ものすごい濡れてる)
 くちゅくちゅ‥‥という音が絶え間なく響き始める。
(やべ、俺もかなりヤバい‥‥)
 でも今日は俺が瑞穂を最高に気持ちよくさせてやるんだ、そう言い聞かせて智弘は指を瑞穂に這わせた。
 瑞穂の奥まで挿入していた指を柔らかい瑞穂のヒダの壁を伝って入口付近まで移動させ、今度はそこで指を震わせる。指全体を使ってヒダをくすぐるように。
 それから右手の指でクリトリスを捕らえた。ちょこんと押してみる。
「あぁあっ!」
 期待通りの瑞穂の反応に智弘は興奮し、そのままクリトリスに焦点を絞って指を往復させた。
「あっ‥‥ああっ‥‥智弘っ!」
 それだけで瑞穂は小さく絶頂を迎えた。

 瑞穂はハァハァと息を荒くしながら、自分が一度イッてしまったことに驚いていた。
 今まで一度だって絶頂を迎えたことがなかった瑞穂は、少しの脱力感を覚えてふにゃりとなっていた。
 だが智弘は容赦しなかった。
「もっと気持ちよくなって、瑞穂」
 そう呟いた智弘が舌を瑞穂の下半身に寄せた。液を一気にすくい取るように、舌でゾロっとなめ上げた。
「きゃぁあんっ! そんな、あ、ダメ、壊れちゃうぅ~‥‥」
「壊れていいよ瑞穂」
 智弘の舌は瑞穂の中心にもぐりこみ、時たまクリトリスをかすり、あふれ出る液体を受け止めるように秘部を動き回った。
 瑞穂は一度イッたばかりの熱さが冷めやらぬ間にまたすぐ激しい愛撫を与えられ、意識が遠くなりそうになっていた。
(もぉ、気持ちよすぎる! あぁ!)
「あぁあ~っ! 智弘! だめぇ、それだめぇっ! いやぁあん!」
 ビクンビクンと大きく身体を揺らす瑞穂を、智弘が片手で押さえつけていた。
 智弘は舌を這わせながら、もう片方の指を液がたっぷり蓄えられているその中心部にもぐりこませ、何度も何度も奥を突いた。
「ああっ! あぁん‥‥ああぁんっ!」
 瑞穂は中心部の奥とクリトリスを一気に攻められ、すぐに二度目の絶頂を迎えてしまった。

 智弘は限界だった。
 大きくなって主張している自身をもう抑えきることができず、瑞穂の秘部にそれをあてがい、そこでゆっくりと上下に腰を振った。瑞穂のヌルヌルした液が智弘にも伝わる。
(うわ‥‥気持ちい‥‥)
 智弘のものが瑞穂の濡れたそこをなでるように上下する。
 上から見下ろす瑞穂の表情がたまらなく愛しく、思わず腰を折り曲げて瑞穂にキスをした。
「んん‥‥ん~~っ!」
 身体を起こして抱きしめた。
「俺もう気持ちよすぎるよ‥‥瑞穂‥‥こんなに濡れて」
「智弘‥‥あたしも、あたしもすごくいいの‥‥」
「瑞穂‥‥」
 そして瑞穂は軽く微笑んでつぶやいた。
「智弘を刻みつけられちゃったみたい」
「‥‥っ、瑞穂!」
「ねぇ、もうダメ‥‥あたしもダメなの‥‥お願い、早く‥‥抱いて‥‥」
 智弘は完全に抑えがきかなくなった。
 狙いを定め、瑞穂の中に身を沈めた。
「お前の奥の奥まで、俺を刻みつけてやるからな」
「あぁ、智弘!」
 自分の中に智弘の熱い肉体を感じて瑞穂は快感に震えた。
「俺もう抑えきかないから!」
 そう言った智弘は少しずつ腰を振り出した。
「あっあっ‥‥あぁあっ!」
(あん、奥までいきなり突かれてる!)
 くちゅっというヒダとヒダのこすれる音がたまに聞こえてくる。瑞穂はもうたまらなくなった。
 自分の奥の奥まで智弘が覗き込んで来るような感覚に襲われ、実際に押し寄せて昇っていく快感を抑える方法も理由も見つからなかった。
「智弘っ! あぁん、気持ちいいっ!」
 快感がどんどん大きくなっている瑞穂は思わず大声で叫んでいた。

 智弘も同じだった。
「あ‥‥瑞穂‥‥俺も気持ちいいよ‥‥」
 長くつながっていたくてイキそうになるのをこらえようとする気持ちと、早く気持ちよくなりたい気持ちが拮抗して、智弘は頭がおかしくなりそうだった。
 頭でいろいろ考えていてもとにかく腰が勝手に動く、そんな感じだった。
 そして快感がのぼりつめようとしていく。
「あぁん! 智弘っ! いい、あん! あたし、あたしぃっ!」
「うわ、瑞穂、そんなに感じて‥‥はぁっ‥‥」
 智弘も我慢の限界が近づいてきていた。
(瑞穂の可愛い表情をもっともっと見ていたい‥‥)
 半分無意識に、智弘はつながっている部分に手をのばし、瑞穂の愛液をすくい取ってクリトリスをひとなでした。
「あぁあんっ!」
 ビクンと瑞穂の身体が大きく震えたかと思うと、きゅきゅっと智弘自身を締め付けてくるではないか。
「うわっ‥‥瑞穂!」
 たまらず智弘は再び激しく腰を振り始めた。右手で瑞穂のクリトリスを弄んだままで。
「あっ、それぇ、あっ、‥‥それダメぇ!」
 いきなりクリトリスを愛撫されて快感が跳ね上がった瑞穂は、思わず智弘にしがみついた。
(同時に気持ちよくするなんて反則だよぉ~)
「智弘、智弘!」
「瑞穂‥‥俺、もうヤバい‥‥っ」
「あぁん、あたしももぉダメ‥‥あはぁんっ!」
「い、イクっ!」
 今までで一番激しく二人の身体が揺れた。
「あぁあ~~~っ! 智弘っ! あぁん!」
 智弘が瑞穂の中で果てたとき、同じように瑞穂も三度目の絶頂を感じた。

 瑞穂が目を開けたとき、智弘は瑞穂を抱き寄せた格好のまま眠っていた。
 ふと時計を見るともうすぐ日付が変わろうとしている。
(あのまま眠っちゃったんだ‥‥)
 身体が浮くような不思議な感覚この上ない気持ちよさに酔って、智弘の腕に抱かれて眠りに落ちたことを思い出した。
 瑞穂はそっと智弘の寝顔を見つめる。
 すぅーっと寝息をたてて眠る無防備で無邪気な智弘をみて、瑞穂は思わず微笑んだ。
「智弘、ありがと。あたしね、過去に縛られたりしないよ。とらわれたりしない。だって、智弘がこんなに近くにいてくれて、こんなに愛してくれるんだもん。智弘はさっき、いっぱいあたしに智弘のキモチ刻みつけてくれたよ。感謝してる‥‥」
 悟くんのことちゃんといい思い出にできそうだよ、と瑞穂が小さくつぶやいた。
 するといきなり智弘が目を開けた。
「きゃっ!」
「へへ‥‥」
 いたずらっ子のような笑みを浮かべて瑞穂を抱き寄せる。
「起きてたんなら言ってくれたらいいのに!」
「瑞穂が珍しく素直に喋ってたからさ」
 嬉しそうに智弘は瑞穂に向き直った。
「受け入れてくれてさんきゅ。俺、瑞穂と二人でいられて嬉しいよ」
「‥‥ん」
「いっぱい刻みつけられたって?」
 ニヤニヤしながら智弘が聞く。
「バカ! 知らない!」
 何気なくさらりと智弘が瑞穂に唇を重ねてきた。
「んっ‥‥もぉ、智弘っ」
「もっともっと刻みつけさせて」
 途端に色っぽい表情に変わった智弘‥‥瑞穂の鼓動がまた踊りだす。
 ぎゅっと智弘を抱きしめ返して瑞穂は智弘に囁いた。
「うん。もっともっと刻みつけて‥‥」
 そのまま二人は深いキスを交わした。

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