美人社員彩子の陵辱手記2

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美人社員彩子の陵辱手記2
2021年07月05日 20時15分

プロジェクトの遅延は徐々に大きくなっていった。きちんと検証作業をしたお陰で影響は最小限に食い止めることができたが、客の『我が儘』は止まることを知らなかった。
「高野さん、これ以上の追加仕様は無理ですよ!」
「分かってる。しかし、ここの客は手放すわけにはいかない。追加工数分の金をもらって、リスケしよう」
現場リーダーの後藤とマネージャーの高野が暗い顔を付き合わせている。2人とも極めて優秀な社員だ。この2人でなかったら、今頃プロジェクト自体が破綻しているだろう。

客は『追加のお願い』をするくせに、締め切りだけはきっちりと守ろうとする。つまり、その差分は現場の僕達が『頑張って』吸収するしかない。
「どうかしてるよ、あそこはさ!」
茂野は完全にキレていた。喧嘩も辞さない様子だったので、高野は彼を客側とのミーティングに参加させないようにしたほどだ。経験の浅い小島、中野も連日の深夜残業で消耗している。最近になって中野は金曜日の定時退社を諦めたようだった。

ということは、今の彼女の出勤日は水曜日と土曜日か・・・

すぐにこういう考えをしてしまう自分に嫌悪を覚える。中野の一挙手一投足が気になって仕方がない。彼女が席を立っただけで、ついつい目で追ってしまう。こんな様子を同期の茂野なんかに見つかっては大変だ。

とある火曜日。夜7時。小島が僕の席にやってきた。
「飯田さん」
「おう」
「ここってどうなってるんでしょうか?」
小島は実に素直で良く働く。きちんと育てれば有望な人材になるに違いない。彼に恩を売るつもりはさらさらないが、ここできちんと指導してやれば将来自分にとっても有益なのは間違いない。彼の質問に答えを出し、指示を出した後、夜8時過ぎに食事に行くことにした。つまり今日も深夜残業確定ということだ。チーム内で使用しているインスタントメッセンジャーでメッセージを送る。同じチームでも物理的な席はバラバラだし、いちいちメールを作成するほどでもないので、簡単な要件であれば、メッセンジャーを使う。

———————————————————-
お疲れ様です。
今から食事行ける人、いる?

飯田
———————————————————-

返事は2分後に中野から返ってきた。最近彼女との絡みが妙に多いような気がする。こちらが神経質になっているだけかもしれない。他のメンバーはタイミングが悪そうだったので、ビルの社員通用口で彼女と待ち合わせた。

彼女が先に着いて待っていた。薄暗い空間で彼女の周りだけが明るく思える。相変わらず華のある女性である。僕の姿を認めると軽く手を上げた。
「ふぅ」
中野が小さく溜息をついた。こちらのレスポンスを期待した感があったので反応してみる。
「どうしたの?お疲れか?」
「はい」
いつもの笑顔で返ってくると思ったら、意外にも冴えない表情だった。暗くて良く見えないが、全体的に疲労感が漂っていた。
「仕事の話なら相談に乗るよ」
「個人的な相談はダメなんですか?」
息を飲む。向けられた視線が驚くほど真剣だったからだ。こちらに非があるわけではないのに、僕はドギマギしてしまった。
「いいよ。でも、高いよ」
僕の苦し紛れの冗談にわずかに表情が崩れた。しかし、すぐに元の硬い表情に戻る。
「お願いします」
「じゃあ、食事の後にでも」
「はい」

そんな約束をしてからでは、食事を楽しめるはずもなかった。僕と中野はうつむいたまま、気まずい食事の時間を過ごした。端から見たら、うまく行っていないカップルといったところか。食後のコーヒーが出て、煙草に火を点けて、ようやく気分が落ち着いた。
「で、どんな相談?」
この時を待っていたと言わんばかりに中野の唇がキュッと結ばれた。その形の良い柔らかそうな唇を奪った男は何人、いや、何十人いるのだろうか。
「飯田さん・・・その・・」
彼女は不安に押し潰されそうになっているように見えた。
「大丈夫だよ。落ち着いて」
「はい」
中野はスッと目を閉じた。観念したといった様子だった。華奢な肩が細かく震えている。

・・・早く吐いてくれ

それが僕の素直な願いだった。事実を事実として共有できれば、僕も随分と気が楽になるだろう。今の状態は僕にとってもとても辛いのだ。
「飯田さん」
「うん」
「・・き・・なんです」
「え?」
あまりに声が籠もっていたのでうまく聞き取れなかった。僕は彼女が風俗嬢であることをカミングアウトした際の返答を心の中で再構成し、何度も繰り返し唱えた。

なんだ、そうだったんだ。大丈夫だよ、誰にも言わないよ。中野にもいろいろと理由があるんだろ?でもさ、やっぱり良くないよな。僕に出来ることがあれば何でも力になるよ。で、なんでデリヘル嬢なんかに・・・

「好きなんです!」

え?

・・・・

「好きなんです、飯田さんのこと」

・・・・え?

頭が真っ白になった。目の前で中野が泣きそうな顔で言葉を発していたが、すべてがスローモーションで何も聞こえてこなかった。その後のことは全く覚えていない。気が動転していたのか、もしかしたら興奮していたのか。嬉しかったのか、悲しかったのか。よく分からない。気がついた時には『自宅』のパソコンのモニター画面を見つけている自分がいた。ディスクトップにはお気に入りの画像が壁紙として表示されている。しばらくそのまま壁紙を眺めている。
「・・・一体どうなっているんだ?」
そう呟いて、僕はジュースを飲むために椅子から立ち上がった。今頃気付いたが、スーツを着たままだった。やれやれと思いながら振り向いた瞬間・・・

・・・・え?

僕のソファーベッドにスヤスヤと寝息を立てている中野が横たわっていた。もちろん、想定外の展開だった。服はちゃんと着ている。息が若干酒臭い。

飲みに行ったのか?あの後?

時計を見ると、いつの間にか深夜の1時を回っていた。そんなに遅い時間になっていたことに驚いた。自分はどれだけの時間、無意識に行動していたのだろう。中野は仰向けで、気持ちよさそうに寝入っている。ミニスカートなので、自慢の美脚は大胆に露わになっており、角度によっては下着が見えるくらいだ。胸元もかなり緩んでいる。僕は何度も唾を飲み込んだ。彼女の肢体を眺めているうちに股間が熱くなってきた。膝が笑って立っていられない。

中野が僕の家で寝ている・・・?

僕はおそるおそる彼女の頬に手を伸ばした。

中野はグッスリと眠り込んでいる。僕の部屋で。

・・・無防備すぎる

恋人同士でもないのに、何の抵抗もなく、ベッドに横たわっている。あの後、飲みに行ったとして、アルコールの勢いでこの状況になったと考えたとしても、やはり少しばかり大胆すぎやしないだろうか。

・・・なるほど、デリヘル嬢か

デリヘル嬢に対して偏見があるわけではない。ただ、彼女達は一般の人間の何倍もの回数の『他人のベッド』を経験しているのだ。それは自宅であったり、ホテルであったり、いろいろだろうが、とにかく『他人のベッド』で横たわることに対する抵抗は僕達なんかよりは遥かに少ないのかもしれない。先日、漫画喫茶で読んだ風俗雑誌の女性が中野であると断定できたわけではないが、こうした小さなピースが少しずつ嵌ってゆくにつれ、確信を強めてゆく。

それにしても何という魅惑。服を着ているので、露出部分が余計に際だつ。普段の格好の中野。僕は彼女の様子を注意深く観察しながら、そっと彼女の足元へ移動する。そしてゴクリと唾を飲み込む。あらゆる異性の目を虜にする美脚。完璧な太もも、脹ら脛。ストッキングはどこかで脱いだのだろう。色白の柔肌は僕の理性を激しく掻き乱し、チラリと見えるピンクのパンティは僕の股間を熱く滾らせる。

・・・すごい

角度を変えて、しばらく飽きずに彼女の肢体を眺める。そのうち、『触りたい』と考えるようになる。少しくらい触ってもバレないだろうと根拠のない思いを抱く。

・・・少しだけ

僕の手が太ももを撫でる。フルフルと細かく肌が震えているようで、それが自分の震えなのか、彼女の柔肌の喜びなのかは分からない。誰もが涎を垂らしながら眺めるだけの太ももを触っている。心地よい弾力、ピチピチとした瑞々しさ。僕は気を失いそうな喜びに浸りながら、スカートを少しだけ捲ってみる。

・・・おぉ

ピンクの三角地帯。シルクのレースタイプのパンティで、透けた部分から陰毛が少しだけ見える。食い込んだ感じがエグい。かなり挑発的だ。まるで今日見られることを前提で穿いてきたようだ。僕は何度も生唾を飲み込んだ。しかし、それ以上はどうしようもなく、半ば生殺しの状態で僕はピンクのパンティを眺めるのみだった。まだ理性が残っている。しかし、自分の正常な感覚にホッと安心した瞬間、彼女が寝返りを打つ。僕はビクッと立ち上がり、後ずさった。仰向けから、ちょうどこちらに背を向ける格好になった。今度は彼女の美尻を拝む番だ。

触りたい

中野の後姿はゾッとするほど、官能的だった。先日、彼女とぶつかった際にしがみついた腰。形良く、くびれていて、完璧なラインを形成している。あの腰を掴みながら、バックで彼女の中に入れることができたら、どんなに幸せだろう。僕は彼女の美尻に手を伸ばし、優しくさすった。プルンプルンと柔肉が踊る。合わせて背中や肩の一部がピクンピクンと反応しているのが分かる。

「中野、お前、起きてるのか?」

心配になってカマを掛けてみた。返事はない。正確なリズムで寝息を立てている。これが芝居なら、彼女はたいした役者だ。時計の針は深夜2時を回った。そろそろ眠らないといけない。なにせ、遅延プロジェクトで残業の毎日なのだ。少しでも体を休めないとダウンしてしまう。僕は台所の床の上に敷き布団を敷いて、そのまま横になった。夏で良かった。冬にこんなところで寝入ったら風邪を引いてしまう。

翌日は中野に起こされた。硬い床の上で直に寝たので、体の節々が悲鳴を上げている。が、美女に起こされるのは結構良い気分だった。
「飯田さん」
「おう、おはよう」
「お、おはようございます」
中野はジッと僕を探る。昨夜の出来事を必死で思い出そうとしているようだ。僕は髪をグシャグシャと掻き回した。これで寝癖が直る。
「・・・あの・・・その」
「最初に言っておくけど、何もしてないぞ。煙草を吸いながら君の告白を聞いた瞬間から意識が飛んでいたんだ」
僕の主張は意外にもすんなりと受け入れられた。中野は微笑んだ。
「飯田さんなら信じます。でも、じゃあ、飲みに行ったこと、覚えてないんですね?」
「そうなんだよね。困ったモンだ」
「ふぅ」
なぜか、中野は安堵の溜息をついた。
「私、飲み過ぎたみたいで。途中から、いろんな人の悪口言ってた気がします」
「そうなんだ」
「お酒弱いのに、好きなんです」
その後、しばらくお互いの認識のズレを修正するような会話を交わしてから、中野は化粧を直したいから洗面所を貸して欲しいと言った。
「化粧落とさないまま寝るなんて、もうっ」
悪態をつく彼女がとても微笑ましかった。だが、彼女はスッピンでも十分綺麗だろう。いつも化粧は控えめだ。案の定、化粧直しはあっという間に終わってしまった。
「何か、食べる?」
「えーと、朝は何も食べないんです。コーヒーだけ、欲しいです」
「了解」
僕も朝は何も食べない。そして、いつもコーヒーだけ。

服を着替える。背後から彼女の視線を感じる。複雑な気分で淡々と支度を進める。お湯が沸き、インスタントコーヒーを作る。コーヒーメーカーは壊れている。
「安物ですまんね」
「いえ、そんなこと。ありがとうございます」
中野は着替えることができないので、服のシワを伸ばしただけだった。コーヒーカップを受け取った彼女は、初めて僕の部屋を見渡した。
「男の人の部屋って、やっぱり違いますね」
「そう?」
「なんか、冷たくて知的です」
「なるほど」
彼女は自分を指名してくれた客の部屋を見て、どんな感想を言っているのだろうか。

不思議だ。中野と出勤前のコーヒーを飲んでいる。何の違和感もない。違和感と言えば、彼女がストッキングを穿いていないことくらいだ。僕の目が彼女のスベスベの生足を見つめていると、彼女がさりげなく手で覆った。ついつい見入ってしまった。僕は恥ずかしさのあまり、うつむいた。
「ストッキングは途中のコンビニで買っちゃいます」
「ごめん、そんなつもりは・・・」
僕の弁明と彼女の行動はほぼ同時だった。彼女がいきなり抱きついてきたのだ。
「中野?」
「このままでお願いします」
彼女の手が僕の背中に回る。僕はどうして良いのか分からず、立ちつくした。
「このまま、抱いてほしいな・・・」
「中野・・・」
「もう、我慢できない」
中野がキスを求める。唇が重なり、すぐに彼女の舌が滑り込んできた。予想以上に激しく求められたので、僕は思わず彼女の美尻を鷲掴みにした。電気が走ったように小柄な彼女の体が跳ね上がり、そこからは一直線だった。お互いの服を脱がし合い、短い愛撫を経て、彼女と結合した。もうどうでも良かった。僕は彼女の中で射精した。

僕と中野は何事もなかったかのように時間差をつけて出社した。通勤中、僕は興奮しっぱなしだった。あの中野とエッチしたのだ。短い時間だったが、これまでの人生になかった至福感。童貞を失った時に味わった優越感を思い出す。

僕は中野とエッチしたんだぞ!

全世界に向けて、この情報を発信したい。だが、自慢したくとも、誰にも自慢することはできない。心の内に仕舞っておかなくてはならない。
「おう、飯田。飯行くか?」
気付くと同期の茂野と後輩の小島が目の前に立っていた。時計の針は12時を少し回っていた。自分が午前中に何をしていたのか、さっぱり思い出せない。最近、無意識の時間がやたらと多い。
「ああ、そうだな・・」
曖昧に応えつつ、中野のことを想う。出来ることなら彼女と食事をしたい。メッセンジャーで確認しておけば良かった。変に勘ぐられるのも嫌だったので、僕は彼らの誘いに乗ることにした。

食事中はずっと中野と過ごした朝の時間を回想していた。『抱いて欲しい』と訴えてきた中野の潤んだ瞳。くびれた腰。全身性感帯のような感度の良さ。柔らかい唇。僕のモノが彼女のアソコへ奥深くくわえ込まれて、あまりの快感に思ったよりも早く果ててしまった。中で射精してしまった後で深く後悔したが、彼女は悪戯っ子のような視線を僕に投げただけで何も言わなかった。結局、彼女からのカミングアウトはなく、ただ純粋に惹かれ合った2人が出勤前にエッチをしただけのことだ。彼女は今、何を考えているのだろうか。

茂野と小島の声が頭に入ってこない。僕は適当に相槌を打ったり、肯いたりしている。今朝の出来事を暴露したら、彼らは目を丸くして驚くに違いない。そう思うと、思わず頬が緩んでしまうが、本当に暴露するわけにはいかない。
「じゃあ、そろそろ行くか」
茂野の一声で3人は席を立ち、レジへ向かった。

「あっ」
「おっ」
トイレで用を済ませて出てくるところで、中野とばったりと出くわした。瞬時に彼女の口元がキュッと締まり、すぐに笑顔が浮かんだ。僕は彼女の魅力にとろけそうだった。知れば知るほど魅力的な女だ。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
仕事場の他人行儀な挨拶。秘密を共有するという不思議な満足感を得て、僕らは二言、三言、言葉を交わして別れた。心の中で小躍りする。これからこんな幸福がずっと続くのだろうか。

プロジェクトは一時期の大きな遅延を取り戻しつつあった。理由は2つあって、1つはマネージャーの高野が客の説得に成功し、当初よりは余裕のあるスケジュールに再調整できたこと、もう1つは僕ら、現場の人間が毎日残業して精力的に作業を進めたことである。プロジェクトが軌道に乗るにつれ、チーム内の雰囲気も良くなり、コミュニケーションがうまく取れるようになった。リーダー後藤のもと、現場は完全に団結した状態で納期を守ろうと頑張っていた。

その頃には中野は僕のマンションへ通うようになっていた。但し、水曜日と土曜日を除いてである。冗談半分で『水曜と土曜は何してるの?』と訊いてみたが、『それは内緒』という返事が返ってきた。もちろん、それ以上は問い詰めなかった。問い詰める必要はなかったし、風俗の仕事をしていると本人の口から聞いたとしても、気分が良くなるわけではない。結果として、水曜日と土曜日は悶々と過ごすことになってしまった。

そんなある日、中野が会社を休んだ。連絡はなかった。無断欠勤をするような社員ではなかったので、誰も深く疑わなかった。しかし、納期が迫っているこの時期の欠勤は大きな痛手である。残業続きで体調を崩していた小島も無理を押して顔を出している。
「どうしたのかな?昨日は普通に見えたけど」
「まあ、仕方ない。できるところからやろう」
僕は形のない不安を感じつつ、仕事に没頭した。

ところが、その晩に、当の中野が僕のマンションへやってきた。僕は彼女を見て息を飲んだ。
「どうしたの??」
右目の辺りが腫れ上がっている。化粧は崩れており、服装も乱れていた。頬に涙の跡がある。彼女は僕の姿を確認すると、その場で泣き崩れた。

「そうか・・・」
落ち着きを取り戻した彼女から話を聞いた僕は思わず溜息をついた。僕にはどうしようもなかった。彼女は自分がデリヘル嬢であることを告白した上で、以前ついた客に因縁をつけられて、出勤途中で襲われ、さっきまでレイプまがいのことをされていたと話した。意識を失い、気付いた時には近くの公園の女子トイレにいたらしい。
「ごめんなさい・・・」
「何も謝る事なんてないよ」
「うぅ・・」
中野は再び泣き出した。彼女が謝ったのは、自分がデリヘル嬢であるという事実に対してだろうか。あるいは、面倒な厄介事に巻き込もうとしていることに対してだろうか。僕はただ彼女を抱きしめるしかなかった。

1時間後の夜12時きっかりに中野の携帯が鳴った。シャワーを浴びて、ようやく笑顔が戻った矢先だった。携帯のディスプレイを見て彼女の表情が一変した。僕は聞こえていないフリをして、テレビを見ていた。しかし、彼女の涙声が耳に入ってくると、居ても立ってもいられなかった。彼女が電話を切るのを見計らって、彼女に問いただした。
「どうした?」
「もう・・いや・・・」
僕の質問に答える前に彼女は僕の胸に顔を埋めた。
「大丈夫か?」
彼女は首を振った。

中野は一ヶ月前、都内有数の高級ホテルで一人の客についた。その男はマスコミ関係の人間だと名乗り、規定料金の十倍の金を払うと言った。不審に思った中野はやんわり断ろうとしたが、男は強引だった。最後には中野も折れて、金を受け取ってしまった。男の要求は『本番行為』だった。本来許されていない行為だが、中野はコンドームを着けるという条件でしぶしぶ了承した。中野は目隠しをされ、オモチャで体を弄ばれた。2回昇天させられたところで、男のモノをフェラチオし、そのまま本番行為となった。約束通り、ゴムを着けての行為だった。男はなかなか果てず、その間に中野は2回昇天した。最後は顔に射精された。男はイク直前で器用にゴムを外し、彼女の顔に向かって果てたのだ。目隠しをしていた中野に気付く術はなかった。それでも法外な料金を前払いでもらっていたので文句を言えなかった。

そして翌日から男の脅迫が始まった。ホテルでの一部始終を盗撮していたらしく、ネット上に盗撮内容をばらまかれたくなかったら、大人しく言うことを聞けということだった。中野は大金に目が眩んだ自分の情けなさを悔やみながらも、なんとか男を宥めてきたのだが、最近になって脅迫の度が増し、ついに今日、出勤途中に襲われてしまったのだという。
「店に言ったのか?」
「うん。でも、その人、お店の常連で金払いがいいから・・・」
店にしてみれば、デリヘル嬢は『商品』だ。金払いの良い常連客に対して、身を挺して商品を守るなんてことはないのだろう。
「警察へ行こう」
僕の提案に彼女は寂しげに首を振った。
「警察行ったら、私、すべてを失うと思う」
僕は言葉を失った。

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