亜弓は寝不足でフラフラだった。明け方まであの部屋に拘束されていた。篠原は亜弓を犯すというよりは、体中を隅々まで検査するといった感じで、ローターを柔肌に這わせていった。耳、脇腹、背中、股間、乳首周辺を何度も刺激され、亜弓は消耗した。ただでさえ大変な目に遭った日だったのに、眠ることさえ許されず、篠原の刺激は続いた。性感帯が乳首であると分かった時の彼の顔はおぞましかった。その後は執拗に乳首を刺激されてしまい、亜弓は心身ボロボロの状態で3度昇天した。
明け方になり、篠原の手がピタリと止まった。緊張の糸が途切れ、亜弓は瞬時に深い眠りに落ちた。そして目覚まし時計のアラームで目が覚めた。朝の7時。たぶん2、3時間しか寝ていないが、2度寝はできない。亜弓はいつもの習慣でベッドから跳ねるように起きたが、そこが自分の自宅だと分かって愕然とした。
(篠原がここまで運んだんだ。それとも、あの陰気な人?)
いずれにせよ、彼らは部屋の中に押し入り、彼女をベッドに寝かしつけたことになる。あまりのショックで泣きそうになる。よりによって、あんな人達に部屋の中を見られてしまった。はっとして、財布の中身やキーホルダー、バックを確認する。盗難された様子はない。しかし・・・
(何?これ・・・)
手帳に何枚かの写真が挟んであった。ベッドに縛り付けられてローターの刺激に苦悶の表情を浮かべている亜弓の写真、局所のアップ写真等だった。裏側に「昨夜のことは黙っていなさい。インターネットで世界中にばらされたくなければね」とマジックペンで書かれており、もう1枚には「8時に連絡する」と小さな文字で書いてあった。時計は7時10分。いつも8時には家を出る。亜弓は唇を噛みしめた。
(ひどい・・こんなことって・・・)
しかし、どうしようもない。こんな画像をばらまかれたらそれこそ人生が終わりだ。亜弓は項垂れながら洗面所へ向かった。
支度を終え、ベッドの端に腰掛けて携帯電話のディスプレイを凝視する。7時58分。彼なら8時きっかりに電話をしてくるはずだ。
ピッピッピッ
7時59分で着信音が鳴り、油断していた亜弓は心臓が飛び出そうなくらいびっくりした。非通知。一瞬目を瞑り呼吸を整えてから、電話に出る。
「・・・もしもし」
電話の向こうから篠原の息づかいが聞こえてきた。それだけで亜弓は鳥肌が立った。
「おはよう。びっくりしただろう。8時きっかりに電話されると思っただろう」
侮辱。恥辱。悔しさに頭に血が上る。タイプのイケメンだけに余計に腹が立つ。
「・・・楽しいですか?」
思いっきり卑下した言い方をしてみたが、彼にこんな皮肉が通じるはずもない。
「今日も出勤するんだろ?」
「当たり前です」
「そんなに怒らないでくれ。面白いことを考えているんだ」
嫌な予感がする。8時3分。
「そろそろ家を出ます」
「分かってるよ。君のことはすべて分かってる。じゃあ、エントランスで会おう」
体の震えが止まらない。
備えつけのエレベータで1Fへ降り、自動ドアを潜ると篠原が立っていた。彼もそんなに寝てはいないはずだが、亜弓とは対照的に元気そうだった。
「おはよう。相変わらず綺麗だ」
亜弓は無視して、そのまま歩き出そうとした。周りには誰もいない。
「おっと」
彼の手が伸びてきて、亜弓の右手首を握った。想像以上の力にたじろぐ。
「何ですか?」
「忘れ物だよ。こっちへおいで」
にやついた笑いの奥で冷たい目が刺すような視線を送ってくる。恐怖。この人には逆らえない。亜弓は言われるままに物陰までついていく。
「スカートを捲り上げてくれ。ゆっくりとね」
抵抗しても無駄だ。彼の言うとおりにスカートを捲り上げた。
「ほぉー」
鼻の下をのばし、篠原はパンティの上から何度も筋をなぞる。
「お願い・・・やめて」
「エッチな体だね。まったく」
「人がきます。お願い」
ビクンビクンと体が反応してしまう。それが篠原の喜びを誘ってしまう。分かっているけど止められるモノではない。それよりもこの光景を誰かに見られないかと不安で仕方がないのだ。
「じゃあ、これを」
パンティの中に冷たい物体が仕込まれた。バイブだ。そしてゆっくりとアソコへ挿入される。
「あっ・・くぅ・・」
バランスが崩れて、篠原の肩に手をついた。服越しにも分厚い筋肉が感じられる。この細身の体は相当鍛えられているに違いない。
「これでよし」
アソコに小型のバイブを仕込まれてしまった。スカートを下ろすと外からは何も分からない。でも、アソコに入れられただけで篠原は何もしてこない。気持ち悪いけど、これならなんてことはない。
(もしかしてスイッチを入れ忘れてるのかも)
「どうしたの?キョトンとして。遅刻しちゃうよ」
篠原は亜弓の手を引いた。訳も分からず、亜弓は歩き出した。
駅まで手をつないで歩いた。知らない人間が見れば、篠原は優しい目をしたイケメンだ。いろんな事情がなければ歓迎すべきシチュエーションだが、彼が何をするか気が気でない。
「ムズムズしてる?」
恋人に冗談を言うかのように篠原が微笑みかけてきた。亜弓は素知らぬふりをする。
「どこまでついてくるんですか?」
「会社までは行かないよ。安心して」
ホームで電車を待つ。溢れんばかりの人混み。今日も痴漢されてしまうのだろうか。
(いや、今日は篠原がいる。最悪、彼がお尻を触ってくるくらいだろう)
不特定多数の見知らぬ人間に痴漢されるよりは、篠原1人と分かっていた方が落ち着く。アソコがムズムズするが、それで彼が満足しているなら我慢するしかない。篠原はあくまで紳士然としていて、腰に手を回したり尻を触ったりする気配はない。電車の中で痴漢ごっこでもするのだろうか。
ホームに電車が滑り込んでくる。この人数なら人混みに紛れて逃げられそうだが、逃げたところですぐに捕まるか脅されるかするだけだ。篠原は亜弓の手を引いて、最後列の車両へ向かう。大人しく彼のあとについて電車に乗り込む。若干空いている。それでも乗車率は100%に近い。何とか窓際を確保した。
(あれ?)
すぐ側に篠原の姿がない。見渡すと、窓際の亜弓を囲むようにしてスーツ姿の男性が何人か立ち、その後ろに篠原の姿が見える。どうやら途中ではぐれてしまったようだ。ちょうど男性達が壁になる格好だ。これでは彼の手は届かない。亜弓は思わず苦笑する。
(間抜けな人。これなら安心)
亜弓は窓の外を見た。完璧主義者の篠原がミスをしたことで、初めて彼に対して余裕を持った。気が和らぐ。しかし、それも束の間のことだった。
ブゥゥゥン
最初は何がなんだか分からなくてパニックになった。自分の股間が震えている。さっきのバイブだ。バイブは生き物のように、自在に強弱を変え、リズムを変えて亜弓の股間を刺激し始めた。
(いやぁ・・なに?・・いつスイッチ入れたの??・・・やだぁ・・・)
リモートで操作されている。そう言えば、リモートバイブの話、会社の誰かから聞いたことがある。
(うっかりしてた。こんなに激しく刺激されたら会社に着くまでに何度もイッちゃう)
亜弓は周りの男性が窓の外を眺めている隙にバイブを抜き出そうとした。が、その手を掴まれた。気付くと、亜弓を囲む3人の男性の視線がいつの間にかすべて彼女に向けられていた。口元が歪んでいる。
「お姉さん、何の音かな?さっきから気になるんだけど」
そう言って、亜弓の立ち位置を他の乗客の死角に導き、両手を拘束した。罠だった。すべて、篠原の計算通りだ。一瞬、彼と目が合った。もちろん、彼は満面の笑みを浮かべていた。
ブブブ・・・
亜弓のアソコの中でバイブが蠢いている。変幻自在。篠原が仕込んだリモートバイブは驚くほど高性能で、まるで人の手で掻き回されているかのようだった。
(いやぁ・・こんなの・・・我慢できない・・)
バイブでも同じリズムで同じパターンの刺激ならある程度耐えることができる。しかし、このバイブの刺激は規則性がないので、ある意味人の手よりも質が悪い。その上、スーツ男3人組がネチネチと手首を掴んだり、頬や太ももをさすり始めた。亜弓は何とかバイブを抜こうと身を屈めるが、すぐに上体を起こされ、その反動で刺激が倍増してしまう。
(~~~~ッ!!)
イキそうになったのが分かったのか、スーツ男の1人がスカートを捲り上げてパンティの上からクリトリスを強烈に愛撫した。
(いやぁぁぁ!!!!イクッ!!!!)
ガクンと体全体の力が抜け、亜弓はドアにもたれ掛かる。何もなければ倒れてしまいそうだ。
(バイブ・・・止めて・・・お願い・・)
懇願するように篠原を見る。彼は亜弓を無視して吊り広告を眺めていた。あからさまな無視。
(ひどい・・・)
亜弓は会社の最寄り駅に着くまでに実に4回昇天した。公共の電車内という緊張感と変幻自在な強力バイブの刺激。この2つでも充分なのに、それをアシストするようにスーツ男3人組が亜弓の抵抗力を奪う。3人掛かりなので防ぎようがない。服は脱がされずに済んだが、パンティの中は愛液でビショビショだ。当然、今もバイブは執拗に蠢いている。ホームに降り立つと篠原はまるで恋人のように優しく髪を撫でてくる。
「ここで、お別れだよ。いってらっしゃい。また会おう」
「・・・もう・・やめてもらえませんか?」
いつの間にか、スーツ男3人組がいない。もしかしたら、同じ会社の人間?
「だめだ。僕は君が気に入ったんだ」
そう言って、篠原は公衆の面前で亜弓にキスをした。
(!!!)
びっくりして、すぐに彼から離れる。周りの目が自分に注いでいる。好奇と嫉妬の視線。誰も亜弓が篠原に陵辱されているなんて知らない。イケメンの優男の彼氏にキスをしてもらったのだと勘違いしている。頭に血が上り、顔が熱くなる。屈辱のあまりに泣きそうになる。フルフルと体中に震えが伝染し、拳に力が入る。
「お願い。これ以上、私を辱めないで」
しかし、篠原は余裕だ。
「バイブの刺激が気にならないくらい、怒っているのか?怒った顔も実に素敵だ」
反射的に右手が出そうになるが、急にバイブの振動が激しくなって体のバランスが崩れる。
「・・・お願い・・・止めて・・・お願い・・」
小声で彼に訴える。今までにない刺激。
「だめだ。人のいる前でイッちゃえ・・」
亜弓は昇天した。しかし、しゃがみ込まずに立ったまま、篠原を睨んだままだった。
「・・・楽しいですか?」
「強い目だが、イク瞬間だけは、やはり女の目をしたね。ほら、そんなところで立ってるとまたイッちゃうぞ?パンティの替えは持ってるのかな」
彼の言うとおりだった。亜弓は唇を噛みしめて、その場を後にした。ホームの階段を下り、構内の女子トイレへ駆け込んだ。
遅刻して自席につくと、周囲の好奇の視線が全身に突き刺さる。遅刻と言っても15分か20分程度だが、彼女の消耗具合を見て、想像力を逞しくした男性社員が大勢いたのだ。仕事用のラップトップを起動してメールを確認している最中に、メッセンジャーソフトも立ち上げる。すると、待ってましたとばかりに晴香からメッセージが送られてきた。
晴香:どうしたの?すっごい顔色悪いんだけど
亜弓はため息をついた。昨夜彼女とカクテルバーに行っていればと意味のない後悔を何度も繰り返す。彼女に心配かけたくない。彼女に事情を話せば絶対に助けようとするだろう。そうすれば篠原の魔の手が彼女にも及んでしまう。それだけは避けたかった。
亜弓:何でそんな遠くから分かるのよ^^
晴香:親友でしょ?何かあったの?
亜弓の軽口は完全に無視された。本気で心配されている。
亜弓:大丈夫だから。単なる寝不足なのだ
晴香:じゃあ、お昼一緒に食べよっ
亜弓:OK。晴香様のお誘いは断れませぬ
結局、亜弓はすべての事情を晴香に打ち明けてしまった。1人では解決できないという諦めと、これから毎日のように篠原に陵辱されるという恐怖と、晴香なら何とかしてくれるのではないかという希望、これらが亜弓の背中を押す格好となった。
その日の仕事が終わり、亜弓は晴香と一緒に会社のビルを出た。
「ふー、春だねー」
今日の晴香は努めて明るく振る舞おうとしている。もちろん、亜弓を励まそうとしているのだ。スラリとした肢体。誰もが認める美人。テレビに出てる芸能人なんか及びもしない。美人なんだから、モデルでも芸能人でも目指せばいいのに。
「そんなことやってたら脳みそプリンになっちゃうよー。亜弓はあんなのに憧れてるの?亜弓は可愛いから、なろうと思えば楽勝じゃん?」
それが晴香の答えだった。良い友達を得たと実感した瞬間だった。
晴香と亜弓が並ぶと、注目度が一気に増す。単体でも充分目立つ美貌が、2人揃うとさらに輝きを増す。誰かと勘違いされて写メを撮られることもあるが、もう慣れた。
「ねえ、晴香」
「なあに?」
「お願いがあるのだ」
「なんなりと申せ。許す」
フッと頬が緩む。亜弓は今夜、自宅のマンションまで送って欲しいと頼む。
「最初からそのつもりだよ。何なら添い寝してあげようか?」
「ばーか」
一瞬だけ、晴香と添い寝している自分を想像したが、あまり違和感のないことにびっくりした。
亜弓の自宅の最寄り駅に着く。今日は晴香が寄るので少し多めに食材を購入し、寄り道せずに並んで歩いた。晴香が頼もしい。何の問題もなく、マンションに着く。エントランスを抜けエレベータで上がり、自宅のドアを開ける。部屋の電気を点ける。晴香を招き入れようとして玄関を見る。晴香が2人の男に拘束されている。亜弓はパニックになる前に絶望した。
・・晴香だって普通の女の子
・・篠原が相手なら、こうなるに決まってるじゃん・・・
当たり前すぎるくらいの結果。何を彼女に期待していたのだろう。格闘技の心得もない、自分と同じ会社の綺麗な女の子。2人になったところで篠原はびくともしない。
大切な親友を巻き込んでしまった。亜弓は周りを憚らずに泣き出した。その鳴き声の大きさに慌てた男の1人が飛び跳ねるようにやってきて、亜弓の頬を思いっきり張った。そしてすぐにボールギャグを噛まされた。
ボールギャグから涎が垂れ落ちる。呼吸は問題ないが、自分の涎を止めることが出来ない。両腕が後手に縛られていて、それ以上の拘束はない。晴香と向かい合わせにカーペットの上に座らされ、亜弓のお気に入りのソファーに篠原が腰掛けている。その他、男が3人。篠原以外は奇妙なマスクをしていて、顔は分からない。もしかしたら朝のスーツ男達かもしれない。
1Rの8畳ほどの部屋に6人の男女が沈黙を保っている。
(夢なら早く醒めて・・・)
自分の部屋に見知らぬ男達が土足で入り込んできて、親友の晴香と自分が拘束されている。かなり息苦しい。向かいに座っている晴香は篠原を睨み続けている。
(だめだよ、晴香。どんなに睨んだって彼には通じない)
彼女のボールギャグからも涎が垂れ落ちていて、亜弓の位置からだと彼女のミニスカートの奥に白い淫らな三角地帯がはっきりと見える。男でなくてもドキッとする眺め。
(こんな時に限って2人ともミニスカート・・・)
「さて」
何の前触れもなく篠原が切り出した。静かな声だった。
「亜弓さん、約束どおり連れてきてくれたんだね」
そう言って、彼はにっこりと亜弓に微笑んだ。
(えっ?)
何のことだか分からなかった。彼は何を言っているのだろう。
「親友の前だからって惚けても駄目だよ。君が言ったんだろ。晴香さんをここに連れてきますって」
彼の意図が分かり、亜弓は弾けたように首を横に振った。晴香と亜弓の仲を裂こうとしているのだ。晴香が驚いたような視線をこちらに向けている。
(ちがう!ちがう!晴香!)
悲しげな晴香の目。どんなに陵辱されるよりも辛い。首を振り暴れようとする亜弓の髪を篠原が優しく撫でる。
「ありがとう、亜弓さん。噂には聞いていたけど、晴香さんってこんなに美人なんだな。彼女を連れてこれるのは亜弓さんしかいないもんな」
(ちがう!ちがう!)
篠原は晴香に見せつけるように亜弓の頬にキスを繰り返す。気丈な晴香は目に涙を溜めて、篠原を睨み続ける。
「おい」
篠原が部下らしき3人の男達の方を向く。
「その女の服を脱がせろ。体には触れるなよ。最初は僕だからね」
晴香は無理矢理立たされて、パンティのみの霰のない姿となった。あまりに見事な肢体に亜弓は思わず見とれてしまう。
(綺麗・・・)
篠原も同じ感想を持ったようだ。
「亜弓さんの体も完璧だが、晴香さんも素晴らしいな」
篠原の手が晴香の頬をさする。晴香は睨み続ける。
「怒った顔も魅力的だ。どんどん苛めたくなる」
出し抜けに晴香の乳首にかぶりつく。晴香の顔が歪む。舌を使い、何度も何度も乳首を転がし、噛み、舐める。晴香の美脚が内股にギュッと閉じられる。抵抗は出来ない。そのうち篠原は晴香を床に押し倒し、亜弓の目の前で30分近く乳首を刺激し続けた。さすがにそれだけ集中的に責められてしまうと耐えようもない。長く執拗な乳首責めが終わった時、晴香の頬に何筋も涙の跡が出来ていた。
「素晴らしい。亜弓さんも後でやってあげるからね」
興奮で篠原の顔が歪んでいる。今度は股間に顔を埋める。
「ん~!!!」
今までじっと声を殺していた晴香だったが、ついに堰が切られた。
「すごいよ、晴香さん。ビショビショだ。こんな状況で濡れてるなんて!」
「んっ!んっ!んっ!!!」
股間で篠原の頭が怪しく動く度に晴香は喘いだ。
(晴香・・・頑張って!負けないで!)
亜弓の気持ちが伝わったのか、晴香は再び声を殺して耐え始めた。しかし、その責めも延々と続き、晴香は恥辱のうちに昇天してしまった。
「喘ぎ声が聞きたいんだけど、この部屋、防音対策とかしてないよね?」
友達にCDプレーヤーの場所を聞くような感じで、篠原が聞いてきた。
(なんて男なの)
晴香が軽い痙攣を繰り返している。我慢していただけに反動が激しい。陽気に励ましてくれた彼女が自分のせいで酷い目に遭っている。亜弓は必死に考えた。この状況を打開するには何をすればいい。
「亜弓さん、何を考えてるの?」
気付くと篠原の端正な顔が目の前にあった。びっくりして亜弓は後ずさった。その拍子に近くに置いてあったバッグが倒れ、中身が散らばる。亜弓は無意識に携帯を掴んだ。
(これ・・携帯だよね)
馴染んだ感触。彼女の携帯はかなりコンパクトなサイズだ。
「おいおい。大丈夫か?」
篠原は亜弓の気が動転しているのだと思っているようだ。安心させるように体をさすってくる。おぞましいけど、今は・・・
(手が後ろだし、これならバレない)
亜弓はようやく彼の質問に対して首を横に振った。
「そうか。普通のマンションだもんな。君は楽器を触るタイプに見えないし」
残念そうに頬を膨らます篠原を見ながら、携帯を操作する。手首を縛られているだけなので、両手の全部の指を使える。キーの配置を思い出し、逆さに持った携帯を安定させてメールを新規作成する。
「仕方ない。とりあえず、声は後で聞くことにして、晴香さんに一発やらせてもらおう。その後はお前達の好きにしてくれ」
ここで3人の男達は部屋から出ていった。一見無防備のようだが、何かあってもすぐに駆けつけられる場所に待機するだけだろう。晴香は放心状態だし、亜弓も身動きが取れない。何もかもが彼の想定内。
「さて、この体を存分に楽しむとしようか!」
いやいやと首を振る晴香の表情が篠原の興奮を誘っているようだ。
「ごめんね、晴香さん。今はおもちゃを持っていないんだ。後で秘密の部屋に連れて行ってあげるからね」
恐怖に歪む晴香の上に覆い被さり、彼女の体中を舐め回す。晴香は身を捩ってもがく。その光景をなるべく見ないように亜弓は後手でひたすらメールを打つ。何度も失敗する。目の前で親友が陵辱されているのだ。速く打とうと焦れば焦るほどうまくいかない。それに相手に正確に伝わるようなメールじゃないと意味がない。正確に伝わって送信先の人間が行動に移せるようなメールを打つにはまとまった文章が必要だ。それまで晴香には耐えてもらうしかない。
晴香があらゆる体位で篠原に陵辱され、無念の涙を流している。男なら誰でもかぶりつきたくなるような体。篠原はまさにかぶりつくように味わい尽くそうとしている。それでも彼女のプライドなのか、声を出さない。一瞬だけ彼女と目が合う。『信じてるよ』と言っているように見える。篠原の策略程度で崩れる信頼関係ではない。亜弓は小さくうなずく。
(待っててね、晴香。ごめんね。もう少しだから・・・)
「あぁ・・すごい。イクよ!晴香さん!」
晴香は声を押し殺して涙を流し続けた。篠原は当たり前のように彼女の中で果てた。晴香は篠原を睨み続けた。
「気持ちよかった。素晴らしい」
行為が終わっても、彼の手は晴香の股間をクチュクチュと掻き回し、何度も乳首を吸い上げる。
「晴香さんもイッちゃえ!!!」
突然、篠原が手の動きを早めた。晴香は驚いて慌てて逃れようとするが、為す術もなかった。
「んっ!!!んっ!!!」
ビクンビクンと体全体が震え、大きく背中を仰け反らして晴香は昇天した。そして、この瞬間、亜弓のメール送信が完了した。亜弓はさりげなく携帯を手近なカーテンの裏に隠した。
篠原が携帯電話を取り出し、仲間を呼ぶ。『味見』が終わったので、仲間に払い下げするのだろう。晴香にとっては地獄だが、今はそちらの方が好都合だった。敵が散らばっていると一網打尽に出来ないからだ。
(これで犯罪者は全員、この部屋に集まる。後は・・・)
亜弓は行動力のある男友達に警察を呼ぶように伝えたのだ。警察が動いてくれるかどうか分からないが、若い女性の助けなら何とかしようとするだろう。最悪、男友達が仲間を連れて助けに来てくれる。
(もう少し、もう少しの辛抱)
それまで亜弓は篠原と仲間の男達をここで食い止めなくてはならない。
「さて、亜弓さん」
篠原が興奮した様子で亜弓に顔を近づけた。
(こんなにルックスが良いなら、女に困ることなんてないでしょうに)
じっと見つめられて、亜弓は顔を背ける。しかし、無理矢理彼の方を向かされてしまう。
「晴香さんは最高だった。もちろん、君も最高だよ。今すぐにでも君の可愛い口の中に僕のモノをくわえさせたいけど、やったばかりだしちょっと休憩だ」
そう言いながら、篠原は亜弓のスカートの中に手を伸ばし、股間を刺激してくる。目の前で晴香が三人の男に陵辱されている。仮面を被った男達は無言で、憔悴した晴香の体を弄んでいる。
「やっぱり声が聞きたいよね」
篠原は亜弓の部屋を見渡した。
「それにバイブとか使いたいし」
(まずい)
このままだと場所を移しかねない。これでは今までの苦労が水の泡だ。
(どうしよう)
パンッ!!!
いきなり頬を張られた。それもかなりの強さで。一瞬、意識が飛んでしまいそうなくらい強烈だった。あまりの痛みに涙が滲み出る。目の前で篠原がフルフルと頬を震わせている。目の奥に狂気の炎が揺らめいている。
「なんで防音じゃないんだ?なんでバイブがないんだ?」
彼は怒りに任せて何度も亜弓の頬を張った。亜弓は恐怖に陥った。
(この人・・・狂ってる)
痛覚が麻痺し、篠原の動きがスローモーションに見える。ようやく怒りが収まったのか、今度は急に満面の笑みを浮かべて、亜弓の髪を愛おしそうに撫でる。
「ああ、僕は何てことを!・・・ごめんね。僕、亜弓さんに酷いことしちゃったね!」
鳥肌が立つ。初めて会った時、彼のルックスの良さに惹かれてしまった自分が信じられない。
(でも、今は彼の感情を逆撫でしてはだめ)
亜弓は自分にそう言い聞かせて、ギャグボールを外して欲しいとジェスチャーで意思表示した。最初は不思議そうに首を傾げた篠原だったが、どうせ何も出来ないだろうと判断し、亜弓の涎まみれのギャグボールを外した。
「ふぅ・・・」
一気に新鮮な空気が入り込み、心地よかった。これで口が使える。言葉という道具で彼を引き留めなければ。
「あの・・・」
「何だい?」
「バイブはないけど・・・ローターなら・・・」
おずおずと恥じらいながら提案する亜弓の姿に彼の興奮は再び高まった。
「ほうっ!!!」
飛び上がるように立ち上がり、彼は突飛に振り返る。そして、晴香に群がる仲間達を押しのけ、晴香の蜜壺の中に一気に二本の指を挿入した。グッと晴香の背が仰け反る。
「亜弓さんはやっぱり最高だよ!!!」
嬉しそうに叫び声を上げ、何を思ったか晴香が昇天するまで蜜壺を掻き回し続けた。
「んぅ!!!んっ!んっ!んぅぅぅぅ!!!!」
意味もなく昇天させられた晴香は再び痙攣を起こしてしまった。
篠原は狂っている。予想もつかない行動をする。自分の行動が彼の興奮を誘い、晴香にさらなるダメージを与えてしまったことに深い後悔を覚えたが、ここで怯むわけにはいかない。
「ローターは姿見の隣の引き出しにあります」
自慰行為の時に使っているローターで、清潔に保存している。やや小振りだが、機能は抜群だ。亜弓の声に反応した篠原が自らローターを探す。
「あった!これだね?」
ドングリを見つけた子供のように、彼は心底嬉しそうにローターをこちらに見せびらかした。亜弓は軽く肯いただけだった。
メールを送ってから、三十分ほど経つ。そろそろだ。
ブーン・・・ブブブ・・・ブーン・・・ブブブ
亜弓のパンティの中でローターが蠢いている。そして、亜弓の右乳に篠原がかぶりついている。
(早く来て・・・)
ローターの刺激が強い。強度はMAXにされてしまった。これではすぐにイッてしまう。
「あの・・・はぁ・・あぁ・・・お願い・・・」
「どうしたの?」
「ローター・・・の・・あふぅ・・強すぎ・・ます」
ニヤリと口元を歪め、パンティの上から押しつけられる。
「あん!!!」
局部に一気に強い刺激が加わり、亜弓はやや大きな声を上げてしまった。途端に思いっきり頬を張られる。あまりの痛みに涙が頬を伝い、衝撃の余波で昇天してしまった。
「声をだすなよ!防音していないんだろ?」
「・・ごめんなさい」
目の前で犯されている晴香に比べれば、こんな痛み、我慢しなければならない。
(晴香・・・だいじょうぶ?頑張って・・・)
晴香は三人の男に代わる代わる挿入されて、彼らの腰の動きに合わせて体が嫌々反応しているだけだ。意識が飛んでいるのかもしれない。彼らは全員、晴香の中に射精している。
(あいつらも全員、許せない)
「ほーら、亜弓さん。そろそろお願いしようかな」
回復した彼のモノが大きくそそり立っている。それが、嫌がる亜弓の口の中へゆっくりと挿入された。
結局、管理人のマスターキーで男友達が乗り込んでくる直前に篠原達は引き上げてしまった。計画を悟られたからではなく、単に篠原の気まぐれだった。警察は動いてくれなかったらしく、男友達は八人でやってきた。警察が動いてくれたら、仲間を集める手間やマンションの管理人の説得に時間が掛かることもなかっただろう。部屋に押し入った彼らは、ムッとする精液の臭い、失神した晴香の裸体、痙攣している亜弓を目撃して、慌てふためいた。亜弓は残った僅かな意識を振り絞って、事情を説明し、男友達に後処理を頼んだ。誰かの上着が肩にフワリと掛けられた瞬間、安堵と疲労で亜弓も意識を失った。
あれから数ヶ月経った。男友達の通報でようやく警察が動き、現場に残された精液や指紋等で篠原と仲間達は逮捕された。以前から同じケースの犯罪を繰り返していたらしく、弱みを握られた女性達は泣き寝入りしていたようだった。
夏を迎えて、通勤電車の痴漢はますます酷くなり、薄着の亜弓を容赦なく陵辱してきた。今朝も電車内で二度昇天させられてしまった。
「ふぅ」
亜弓が自席でメールのチェックをしていると、晴香がやってきた。しばらく精神的なショック状態が続いた彼女だったが、持ち前の陽気さで乗り越えた。
「疲れた顔してるねー」
「だって・・・また、痴漢だよー」
「よしよし」
晴香はポンポンと亜弓の肩を叩いた。
「・・・あのさ、今日終わったら『あそこ』行かない?」
デジャブのような不思議な浮遊感。あの悲劇はこの誘いを断ったことから始まった。亜弓はにっこりと微笑んだ。
「行く行く!絶対行くのだ!」
「どうしたの?すっごい乗り気じゃん」
「何でもないよー」
カクテルバーに行けば、何か良いことあるかもね。