6.
弾けそうなモノの上に跨って、してやったりの笑顔で樹がオレを見下ろす。太もものタトゥーの天使までもが一緒になって不敵な笑みを浮かべている。
「そりゃ悔しいよね。知らないオトコに寝奪られた話で欲情してアタシを押し倒すつもりだったのに、逆に縛られちゃったりしてさぁ‥‥ねぇアタシの可愛いヒモ君、今のキミはアタシ無しでも生きていけるかい?‥‥ムリでしょ。ミノルは一人じゃ弱いんだから、きっと身も心もボロボロになっちゃうよ‥‥」
熱く濡れた陰唇が裏筋にパックリ食いついて、ギチギチに膨らんだ太いモノに蜜をたっぷり絡み付ける‥‥でも欲情するカラダとは裏腹に口をつく言葉は冷酷で、みぞおちに蹴りを入れるようにココロを痛めつけていく。
「分かってるかい? アタシはもうミノルがいなくても生きていけるんだよ。カネもセックスも帰る場所も、アンタなんかに頼らなくても手に入るんだから‥‥嫉妬するんならすればいいさ。[オマエなんかいらない]ってココロから言えるんならね」
シャツで縛った両腕を強く押さえ付けながら、鋭い視線で樹がオレを抉る。まるで心の奥底までも掘り返してしまうように。
「選ばせてあげるよ、アンタのプライドかアタシの唇か二つに一つ、時間は十秒。イヤだったら拒んだっていいんだよ‥‥」
ゆっくりと顔を近付けて、否応無く選択を迫る樹‥‥首からぶら下がった銀の十字架が、迷う胸の内を冷たく突き刺すようにヒヤリと肌に触れる。
ダメだ。
拒む事なんてできやしない。今ここから樹がいなくなったら‥‥なんて、そんな事考えたくもないよ。
確かに嫉妬はするよ。だって樹がスキだし、自分だけのモノにして愛したいから‥‥
でも、それが叶わないというだけでキライになってしまうなんて‥‥そんなのは[次]がいくらでもあるからこその贅沢だと思う。
オレは‥‥もし樹がいなくなったら、[次]なんてきっと何も無いから‥‥
時間切れ。
指一本分の間隔にまで狭まった唇の距離。尖った舌先がツウッと唇をなぞるとくすぐったくて‥‥思わず漏らした吐息は樹の言葉に跳ね返されて、ぬるい空気に散ってしまう。
「ミノルの負け」
ハスキーな囁きでオレの唇を奪い取った樹は、舌先と唾液を使って気の済むまでココロをレイプする‥‥甘くて優しくて、甘酸っぱくて悔しくて‥‥[負け]そのものの情けなさにカラダごと溶けてしまいそうだ。
「アンタが最後に選んだ唇、受け容れた唇‥‥それは[負け]を意味するんだって事、それだけはよぉく覚えておきなよ‥‥でもそれでいいじゃん。アタシはそんな弱くて情けないミノルが可愛くてスキなんだよ‥‥だからゴメンね。ちょっとからかってみたかっただけなんだ」
やわらかく湿った唇が繰り返し深く被さってきて、鼻づまりで息苦しいアタマがツゥンと痺れてしまう。
わずかに開いた唇の隙間から吸い込む空気は毒の香りがして、ドバッと流れ込む唾液が唇から溢れて頬をつたう‥‥酸素密度が低くてヤバい。再び深く襲い来る舌先。唇を揺すって唾液をかき回されると毒が染み込んできて‥‥一瞬、また一瞬‥‥
フラッシュバックみたいに意識がトんだその瞬間、
遠くの方で、ズブズブと飲み込まれるような感触がした。
薄く目を開けると、短い髪がかからないぐらいの距離に樹がいて、猫みたいに大きな瞳でじぃっとオレを見つめている。
胸に被さる程良い弾力と固い蕾。細く長い腕が両側からアタマを抱え込んで、脇腹を挟む太ももが弾けるぐらいに熱い。そんなカラダの真芯の半分ぐらいの深さまでオレをくわえ込んで、ドクドク脈打つ膣の筋肉で感触を確かめているみたいだ。
感覚がカラダを一周し終わる頃、やわらかい唇は再び一つに溶け合う。さっきからキスばかりしてるような気もするけど‥‥甘ぁい息苦しさがクセになってしまって、またしても意識が薄れてトびそうになる。
カラダを包む温もりがかすかに揺れて、樹の中の太いモノが2センチ深くに沈む。
「ん‥‥ふぅ、っ‥‥」
抑えつつもわずかに漏れてしまう切ない吐息。少しだけやわらかい亀頭に肉ひだが突き刺さってきて、ぷっくり膨らんだ裾をジワジワと舐め回す‥‥先端よりもまだ奥に存在する未開の空間の深さが憎らしい。
「‥‥ミノル‥‥」
耳元の甘い囁きに意味は無い。ご飯を前にした赤ん坊が[まんま]って呟くのと同じようなもので、理性が欲望に追い付いていない事を証明しているだけだ。
「うぅ、ぁはぁ‥‥っ」
くびれた腰が今度は横に揺れて、角度を変えた肉ひだが亀頭のくぼみにしゃぶりつく。
「くぅぅ‥‥太ぉい‥‥股が裂けそうだよぉ、ミノル‥‥」
言いながら樹はお尻をグイッと捻らせて、根元までズブズブと飲み込んでしまう。
「んふぅ‥‥ん、はぁっ、アァ‥‥キツいよ、樹‥‥あぁダメ、力が抜けていく‥‥」
そのままただじっとしてるだけでも充分に気持ちイイ。筋肉質の膣が太いモノをキュッキュッと抱き、締めて、肉ひだの一つ一つがヒルのように食いついて海綿体に溜まった血を吸う‥‥そう、樹の膣はタチの悪い吸血動物なんだ。
二つのカラダの間にはジワッと汗が涌いて、ベッドの上の空気はジャングルみたいに熱い。
乳房をわずかに膨らませて、樹はスウッと深く息を吸う。
「‥‥いくよ」
37.2℃の吐息を唇の真上に返すと、そのままグイグイと腰を上下に動かし始めた。
「はぁっ、んぅ‥‥ぅ‥‥んはぁっ、アァ、ハアッ‥‥くぁ‥‥ぁ‥‥」
背中に腕を回して快感を抱き締める事もできずに、縛られた喉笛がギュウッ、と締まって息苦しい‥‥霞む意識の中、ギシッ、ギシッ、と軋むベッドの悲鳴がやたら心地良くアタマに響く。
樹のセックスは理屈じゃない。オンナという名の[魔物]に身も心もまる飲みにされてしまうようなもの。
いつもいつも、オレはそのデカい意志のカタマリに翻弄されてしまうんだ‥‥
「アイツのおちんちんってスゴク長いから、アンタに跨るよりもっと大きく腰を振ることができるんだよ‥‥ハァッ‥‥先っぽの出っ張りもおっきくて、中の肉が掬い取られるみたいなんだ‥‥ぁ‥‥くぅ‥‥」
揺れる瞳でオレを突き刺しながら乱れる吐息を操って樹が囁く。こんな美味しそうにオレを貪っているクセにまだそんな事を言うのか?
「へへっ‥‥ねぇミノル、知らないオトコの話を聞きながら犯されるって、ホントはどんな気分なの?‥‥アタシはスゴくソソるんだけど、カゼっぴきのアンタはどう思うのさ‥‥あぁん?」
腰をグルグル回して中のモノを隅々までしゃぶり尽くすと、樹は満足そうにペロリと唇を舐めた。
7.
残酷な質問だ。
肉体は確かに樹の奥深くまで入り込んで愛されているのに、その事実自体がまず信じられなくなる。そして、まだ見たことも無い[アイツ]が、どう考えても自分よりも[いいオトコ]に思えて仕方がないんだ。
[アイツ]はきっとオレよりも背が高くてカッコよくて、優しくて余裕があって話も面白くて、ベッドの経験も豊富で気遣いもあって、そして‥‥脚を開いて長く逞しい肉棒を挿入すると、想像もつかないテクと腰遣いを使ってオレの知らない[樹]と淫らに愛し合うんだろうな‥‥
「‥‥スゲぇ悔しい‥‥」
それ以外にない素直な想いで真っ直ぐに樹を見上げる。
「そぉ‥‥アリガト。いい子だね」
クスッと軽く微笑みながら、樹は顔を沈めて深い口づけを返してくれた‥‥熱く繊細に口の中をくすぐる舌遣いはどうしたって優しくって、胸が焦がれて目頭から熱いものがこぼれてくるのを堪えるだけで必死になってしまう。
「見せてあげようか‥‥?」
「‥‥えっ?」
言葉の意味を考える暇も与えずに、フウッと一息ついて樹が上体を起こす。そして仰向けのオレと垂直の角度で一気に腰を沈めて、恥骨と太ももがぶつかるまでに深くオレを飲み込んでしまう。
「ぅわぁ‥‥くぅ、ドロドロして熱いよ‥‥樹‥‥」
二人の交点からジワッと熱い蜜が溢れ出して、陰毛とお尻の穴を濡らしながらシーツに大きなシミを作る‥‥あ~あ、今週これでもう5回目だ。そろそろ洗わなくちゃなぁ‥‥
樹がバイトを始めてからは、掃除と洗濯はオレの役目なんだよね。
そんな事を考えながら呼吸二つ分ぐらい静止した後、樹はゆっくりと腰を浮かし始める‥‥少しだけ遅れてズルズルと、竿に絡み付いていた肉ひだも上に引きずられていく。
「ほぉら、ここ‥‥アタシとミノルが交わってる所、よぉく見ててごらん‥‥」
三日月みたいに笑う唇とやけに熱い瞳が、後ろ手に縛られたオレの裸体を舐めるように見下ろして‥‥次の瞬間、しなやかなお尻が弾けそうな股間の上でグルン、と一回転した。
「くぁ‥‥アアッ、っ‥‥」
亀頭のふくらみをたくさんの肉ひだにしゃぶられて身体の芯にゾクゾクッと痺れがくる‥‥改めて二人の交点に目をやると、裂けそうなぐらいに変形した陰唇が太いモノを半分ぐらい飲み込んで、よだれみたいに蜜を垂れ流しながら強く締め付けて貪り食う。
正直言ってソソる眺めだ。
「見てて‥‥」
荒い息遣いから言葉を一つ吐き出して、樹はくびれた腰を左右に、回すようにゆさゆさと揺らし始める。
「ンん‥‥くぁ、あぁ‥‥くぅ‥‥ぁ、アアッ‥‥っ‥‥」
キレイに手入れされた陰毛が前後左右に揺れて、太いモノが樹の好きなように嫐られ、輪姦されていく‥‥いつもはお尻に手を回して腰を突き上げながら対等に貪り合うんだけど、今日は後ろ手に縛られたまま、上体をグネグネ捩ってただ堪えるだけ‥‥
ヌチュッ、ヌチュッ、ミチュッ‥‥蜜が絡みつく粘っこい音にさえ苦痛に近い快感を感じてしまう。
「ンフフ‥‥ヨガってるミノルがまるでミミズみたい。いい眺めだよ‥‥」
そう言う樹だって、オレを頭からまる飲みにしてまるで蛇みたいだ‥‥随分と口の大きな蛇だけどね。
「‥‥ハァッ、アァ‥‥すごぉい、膣がミシミシ軋んで弾けそうだよ‥‥へへっ、そういえばアイツも‥‥こうしてグリグリかき回してやったら、今のミノルと同じ顔してたんだよねぇ‥‥」
涼しい瞳でオレを見下ろしながら女王様みたいに嗤う樹‥‥同じ位置から[アイツ]は一体、何を想って樹を見上げたんだろうか?
タトゥーの天使が太ももで躍りながら、引き絞った弓矢で太いモノを狙ってるみたい。
腰の動きがヨコからタテに変わって、肉ひだがズブズブと根元まで食らいついてくる。
「ハァッ、くぁ‥‥ァアッ、あぁんっ‥‥!」
子宮口と先端の割れ目がディープキスする感触がくすぐったくて、オレはフゥッ、と力無く息を吐く‥‥鋭い呻き声は、樹だ。
後ろ手の体勢にも慣れてきたオレは、縛られた腕に力を込めてワザと喉笛を締めつける‥‥キュウ、っと息が苦しくなると逆に神経が研ぎ澄まされるような気がするんだ。
「あぁ‥‥ダメ、ガマンできなぁい‥‥ちょうだい‥‥もっとちょうだいよぉ、ミノル‥‥」
霞む視界の向こうで上下に揺れる瞳が心なしか潤んでいる。樹もそろそろキテるのかな?‥‥コイツは感じてくると急に甘え口調になって、無心に腰を振って一滴残らずオレを搾り取ろうとするんだ。
「あっ‥‥ぁあぁぁあはぁっ、はあんっ‥‥もっと‥‥もっと太いの‥‥くぁ、あぁあんっ!」
急激に動きを大きく激しくしながら、樹は少しずつ後ろにのけぞっていく‥‥極太の肉棒が割れ目を引き裂く交点からブチャブチャとねぶる音が脳髄に響いてきて、視覚から聴覚から、感覚や神経やココロまで‥‥全方位から樹がオレに襲いかかって、犯していく。
8ビートで打ち下ろされるゴムまりみたいなお尻が、滴る汗を飛び散らせながら恥骨と太ももをパンッパンッと叩きつける。
「あっ、あっアッあぁぁ‥‥うわぁっ‥‥スゲぇよ樹‥‥もっと、もっとキてよ‥‥ぁあん、あっ、はぁ、アァ‥‥」
求めれば求める程に喉笛がキツく締まって、意識がだんだん霞んでいく‥‥乳房の間で銀の十字架が激しく揺れる。丸いお尻が上下に揺れてオレの骨盤も一緒に揺れる。ベッドがギシギシ揺れる。天井の蛍光灯も揺れる。ちゃぶ台の上のビールの空き缶もグラグラ揺れて、ついにはコロンと転がり落ちる‥‥
ちょっと待てよ、コレってまさか‥‥
地震‥‥? マジで!?
「あぁぁ‥‥はぁんいやぁあんっ!‥‥スゴいよミノル、そんなに突き上げたら内臓がかき混ぜられて‥‥イヤッ、あぁはぁあん、はあんっ‥‥!」
反り返ったカラダを真上に向けて虚空に向かって咆える樹‥‥でもオレが自分から腰を突き上げてる訳ではない。オレはただ無様なカラダを樹に捧げて、部屋をも揺らす凄まじい肉欲に貪られていただけ‥‥
やがて揺れも徐々におさまって、腰の上の樹も動きを止めてヘタり込んでしまう。そしてまだ呼吸も整わないまま、心配そうにキョトキョトと部屋中を見回す。
8.
「どうしたの?」
「ん~~~‥‥ふぅっ‥‥いや、部屋がめちゃめちゃになってないかどうか気になっちゃってさ。だってかなり大きく揺れたでしょ? コップとか転がって割れたりしてないかと思って‥‥でもなんとか大丈夫みたいね。よかったぁ‥‥」
オレは樹をじっと見つめながら、今にも吹き出して笑ってしまいそうになる。だって、急に素に戻った顔が子猫みたいにトボけていて、どうしようもなく可愛いんだもん。
「オマエが一番、激しく揺れてたよ」
言ってやると、樹は舌を出しながら天使のようにテヘヘと笑った‥‥あらまぁ変わり身の早いオンナだこと。さっきまで[アイツ]とオレを天秤にかけながら悪魔のように腰を振って貪り食ってたクセに‥‥
首の結び目を解く長い指がくすぐるように優しい。
ようやく後ろ手から解放されて腕を伸ばすと、指はすぐに手首を縛る結び目も解き始める‥‥汗だくになった細いカラダがぴったりと寄り添ってきて、腋の下に押し付けられた乳房のプニプニした肌触りが心地良い。
自由を取り戻した二本の腕、欲しいものはただ一つ‥‥
「イキたいんならアタシの上においで、ミノル‥‥太いモノくわえてずっと暴れてたから腰にもう力が入らないんだ‥‥」
耳元でそんなこと囁かれてイカないオトコなんていない。
やわらかな脚を肩幅ぐらいに開いて、子宮にくっつくぐらい深くまで太いモノをブチ込んでやる。
そのままカラダごとのしかかって、自由になった二本の腕で逆に樹を拘束してしまう‥‥カゼっぴきのダルい身体にはこの体勢がいちばんラクだ。
「‥‥んぁ‥‥はぁ、はあっ‥‥くぅう‥‥」
熱くて狭い感触を味わうようにじっくり腰を揺すると、一刺しごとに肉ひだがビチビチ軋んで蜜が涌き出てくる。
ブチュッ、チュッ‥‥ズチュ、ズチュッ‥‥
黒髪を優しく撫でながら耳の中に舌を入れて、肉棒と同じ動きで耳の穴をしゃぶり、かき混ぜ、突き刺す。鼓膜と結合部でシンクロする淫らな音が神経を嬲り、アタマの中からゆっくりと樹を溶かしていく。
胸板に伝わる体温が燃えるように熱い。
「はあっあっあぁ、はぁんっ‥‥もっとキて、股を引き裂くぐらい突いて‥‥アアッ、やぁああんっ‥‥!」
さかりのついたメス猫みたいに喘ぎながら、長い脚を腰に絡ませてキツくオレを求める樹‥‥その欲望を最後まで満たすために、極太の動きを徐々に速く、激しくして、子宮の奥底まで抉ってやる。
五分経過。
「‥‥ハァ‥‥ぁ‥‥ぅ、ん‥‥くぅ‥‥ぁぁ‥‥んぁぁ‥‥」
耳たぶに感じる吐息がまばらで弱々しくなって、安物ベッドの悲鳴だけがギシギシと部屋の熱い空気に響く‥‥ズブッ、ズブッ、ズブッ‥‥突き刺す肉ひだの感触が粘っこくなってきて、亀頭を強くこすりつけると薄いゴムが破れてしまいそうで少し怖い。
息も絶え絶えになった樹を執拗に責め続けるオレ‥‥いや、普段からそこまで精力絶倫というワケではない。そろそろオレも腰が限界だし、腕の中で喘ぐ樹を早くラクにさせてあげたいという気持ちもある。
でも‥‥イケないんだよね。
根元をキツく締め付けるヘアバンドのおかげでカゼっぴきでも勃起がヘタらない代わりに、イキそうになってからの反応がひどく鈍い。亀頭に血が溜まったまま流れをせき止められて、逆に放出寸前の精液が根元で詰まってるようなカンジがするんだ。
だったら樹だけ先にイカせてやればいいじゃん?‥‥いや、そんなズルい事は許さない。
欲望に任せてズボズボ突き刺す一方で樹の反応を冷徹に観察して、イキそうになるとワザと動きを緩めて快感を寸止めにしてしまう。そして興奮が引いたところを見計らってまた責めて‥‥その繰り返しで徐々に樹を[生殺し]に追いやっていく。
知らないオトコに浮気した罰として、[イケない]苦しみを樹にも味わせてやらないといけない。
「‥‥ミノル、おねがい‥‥もっと激しく腰を揺すって、アタシを‥‥イカせて‥‥」
虫の息で泣きそうに懇願しても、答えなんて返してやらない。代わりに耳たぶに軽く歯を立ててやるだけ。
自業自得ってヤツだぜ。自分のした事を精一杯後悔するんだな。
「なぁ樹、一つだけ聞くけどさ‥‥オレと[アイツ]とセックスしてみて、どっちが気持ち良くイケる?‥‥オレの方がイイって言うんならイカせてやってもいいんだぜ」
唇を耳に押し付けて、押し殺した声で強姦魔みたいに囁く。我ながら傲慢なセリフだとココロの中で苦笑いしてしまう。
でも樹は答えを返さない。
「早く答えなよ‥‥」
抵抗するんなら仕方がない。太いモノの角度を微妙にずらして、ヘアバンドの結び目でクリトリスを刺激しながらグリグリかき回してやる‥‥いつまでもセックス初心者だと思うなよ。こんなテクも覚えたのもオマエのおかげだぜ。
「んあっ、あっ、あっ‥‥ハァッ‥‥くぁぁ‥‥ンんぅ‥‥」
鋭い反応に悦びながらも、イカせないように腰の動きを加減する。[答え]を引き出すまではイカせるワケにはいかない。
真夏の部屋での無言の攻防、じっくり腰を揺する30往復‥‥
「ハァッ、ハァ‥‥あぁぁんっ‥‥欲しい‥‥アタシ、ミノルと‥‥イキたいっ‥‥くぁ‥‥ぶっといので、ぐちゃぐちゃに‥‥して‥‥」
半開きで荒い息の唇に、深くて乱暴な口づけを吸い付ける。愛しいセリフを吐いた口の中の何もかもをしゃぶり尽くして、奪ってしまいたかったから‥‥
どうせ愛なんて瞬間芸。今、この瞬間だけオレを想っていてくれればそれでいい。
「‥‥樹、イこう」
頭の後ろと背中をギュッと抱き締めて、オレは一気に動きを激しくして樹の奥底にブチ込んでいく‥‥ホントはオレだって早くこうして樹と二人でイキたかったんだ。
「んぅっ、あっ‥‥ぁぁ‥‥アッ!‥‥つぅ‥‥くぁ、ハァ、ハァァ‥‥」
無意識のうちに思わず樹のうなじに咬みついてしまう。たぶん樹にとっては痛い強さ、だけどそうせずにはいられなかったんだ。
だって樹が好きだから。
「樹‥‥ハアッ‥‥樹、ぁぁ‥‥」
うわごとのように名前を呼びながら、残酷にもさらに動きを強く早くしていく‥‥極太の肉棒で花びらを引き裂いてこじ開けて、中の肉ひだの一つ一つにまで亀頭をすり付けて愛をブチまけてやりたい‥‥グリグリと腰を回して陰唇を引き裂こうとするとバネみたいに強靭な筋肉にギュウっと締め付けられて、棘みたく勃起した肉ひだが肉棒を突き刺して芯をへし折ってしまう。
要するに、オレは樹の子宮の中に帰りたいんだ。
9.
「あっアッあぁぁ‥‥くぅ、うっ‥‥ぅわぁああぁっ‥‥ハアッ、はあぁっ‥‥」
もう何も考えたくない。根元まで真っ直ぐ深くピストンを繰り返して、何回も何回も樹を串刺しにしていく‥‥
ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッ‥‥ズチャ、ブチャッ、ビチャッ、ズチャッ、パンッ、バンッ、ジュブッ、ズュボッ‥‥
「んぁ、あぁはぁん‥‥っ‥‥!」
揺れる腰にしがみ付いていた脚がポロッと外れて、腕の中のカラダが一瞬、空気が抜けるみたいに弛緩する。
次の瞬間‥‥ドクンッと鼓動が跳ね上がって、体中の力が一点に集まったかのように膣の中身を強く搾り上げた。
オレは樹を引き裂いてしまおうと思って、キツく締まる肉壷の中で太いモノをなおも暴れさせる‥‥でも、2、3回抉っただけで、オレももうダメだった‥‥
ドクドクドクッ、ドクッ、ドロッ‥‥ビチャッ、ビチャッ‥‥
汗だくの胸の間で鼓動をシンクロさせて、粘っこい精液をゴムから溢れるぐらい、いっぱい吐き出してしまう‥‥先端の割れ目から魂が抜け出して、樹の肉ひだにぶつかって彷徨ってるみたいだ‥‥
「ハッ、ハッ‥‥ヘッッくしゅンッ! !」
鼻がムズムズするのとブルッとくる寒気で、オレはようやく目を覚ます。窓の外はもう夕暮れの赤色。どのぐらい眠ってたんだろう?
「‥‥午後3時7分に起きた地震の震度は次のとおり、震源地は‥‥」
テレビの中のニュースキャスターが間抜けな事を言ってやがる‥‥震源地はきっとココ、樹が騎乗位で暴れたベッドの真下なんだよ。
その樹は今は台所にいて、ホットパンツだけ履いてエプロンを掛けて、背中を向けたままゴハンの支度をしている‥‥何だかヘンなカッコ。でもくびれたおなかのラインはやっぱりセクシーで、ボーッとした目をしばしクギづけにしてしまう。
それにしても、寒い‥‥いくら真夏でも裸で毛布一枚じゃあカゼっぴきにはつらい。オマケに樹にいいだけ精力を吸い取られたおかげで、昼間よりもカラダのダルさがひどくなったような気もする。
「アンタはイッた瞬間におねんねだからイイけど、アタシは後始末が大変だったんだからね。ミノルの腕の中から脱出するだけでも一苦労だったし、ゴム外してキレイにしゃぶってあげたら服着せるのがメンドくさくなっちゃってさぁ‥‥」
すぐ目の前には[使用済み]のコンドームとヘアバンドの黒いゴム輪‥‥たっぷり入った精液にはまだかすかに温もりが残っていて、白濁の中では精子と夏カゼのウイルスがランデブーしながら楽しそうに泳いでいた。
はぁ‥‥
結局、誰かを愛するって事はその人を独り占めにしなきゃいけない、って事なのかなぁ?
確かに顔も知らない[アイツ]にオレはやっぱ嫉妬もするし、どんなルックスでどんなセックスをするのか、一度覗いて見たくもなってくる。
でも、ホントに大事なのは[アイツ]は誰なんだ、という事じゃないと思う。
今、こうして二人でいる時間。
どうせ24時間ずっと樹にくっついていられるワケじゃない。見てない所では別に誰と何をしてても構わないと思う。
でも、ちゃんとオレの所に帰ってきて欲しい。
樹がいなくなってしまったら、多分オレはまともに生きていけなくなるから‥‥
ジリリリリリン――
ホットパンツの後ろポケットから携帯を取り出す樹。
「もしもし‥‥今終わったんだ、お疲れさぁん‥‥」
‥‥前言撤回。受話器の向こうの[アイツ]はどんなヤツなのか、やっぱど~しても気になる。
オレはそぉっとベッドから起き上がって、バイオハザードのゾンビみたいにゆっくりと樹の背後に迫る。
「うん、うん‥‥そんな事あったんだ‥‥!?‥‥」
あともう一歩の所で感づかれて、逃げる樹を追って部屋中を走り回る。
「明日? あ~大丈夫だよ。カゼ直ったみたいでもう走り回ってるぐらいだから‥‥じゃね!」
慌てて電話を切った樹に結局追い付けずに、立ち止まった途端ひどい立ちくらみがオレに襲いかかる。
「チキショー‥‥[アイツ]って一体どんなヤツなんだよ、樹?」
口調とは裏腹に今にも倒れそうになるカラダを、振り返った樹が優しく支える。そしてすかさず甘ぁい口づけ‥‥
熱くやわらかな唇が耳元に移ってきて、[答え]をそっと囁いた。
「ミノルによく似たオトコなんだよ」
長い腕がスッと離れると、オレは全身の力が抜けてその場にヘタり込んでしまった。
負けた。