七月の満月の頃6

女性もえっちな妄想をしてもいいんです。
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アダルトな読み物のお部屋

七月の満月の頃6
2021年07月27日 18時10分
TENMA

6.星空と十字架

 ねむい。
 午前1時24分、オレは樹を隣に乗せてクルマを運転している。フロントガラスの向こうは街灯一本さえ無い漆黒の闇。沢の流れに沿って走る1.5車線、対向車も見かけなくなって久しい。

「どうせ会社クビんなってヒマだろ?今からドライブ行こうぜミノル」

 夕方帰ってきた樹に何の前触れもなく急かされて、ポンコツグルマで高速を3時間、国道に降りてさらに2時間‥‥
 ドライブってヤツは確かに壮快でストレス発散に最適だと思うけど、ここまでぶっ通しで運転してると何かの修行のような気さえしてくる。途中あまりに疲れて樹にも運転させたけど、コイツ無免許なのはまだいいとして赤信号でも平気で無視して突っ切るんだもん‥‥200mでムリヤリ交替したよ。

「一体どこまで行く気だよ樹?つーか大体ここはどこなんだよ?」
「もうちょっとだよ。もうちょっとで着くからさぁ‥‥あっ、そこ左曲がって」
「オマエ1時間前にも[もうちょっと]って言ってたよな?‥‥マジねみぃよ、ちょっとでいいから休ませてくれよ」
「ダメ。ホントあともう少しだから‥‥どうしても夜のうちに着きたいんだ」
 三桁ナンバーの国道から標識すらない細道に曲がる。ねむい頭をシェイクするような急な峠道‥‥
「あ~あ、それにしてもなぁ‥‥会社辞めて確かにスッキリしたけど、これからどうするんだよぉ?二人して無収入でどーやって生きてくんだよ?」
「大丈夫だよ、そんな簡単に死ぬ事なんかできないんだから‥‥なるようになるよきっと。心配したって身構えたってなるようにしかならないんだからさぁ‥‥」
「そうかぁ‥‥?」
「大丈夫だよ‥‥アタシだってさんざん悪い事してきたけど、こうしてミノルの許にたどり着くことができたんだから‥‥神様なんているワケない、ってつらい時は思ってたけど、やっぱりどこかで暖かく見守ってくれてるんだよ。だからこの胸の十字架は外さないんだ」
 曲がりくねった峠道を上りきると急に視界が大きく開けて、月明かりに照らされた遠くの稜線が闇夜にもはっきりと映る。眼下には麓の村の灯りも‥‥その灯りに向けて今度は一気に道を下っていく。
「アンタは今まで、狭い所でムリヤリ頑張っていたんだよ。ミノルのそういう強さはアタシすごく信じてるから‥‥もうちょっと広い所に行こうよ。二人ならきっと大丈夫‥‥あ、そこ右入って」
 ひたすら下るだけの道から別れて、だだっ広い草原のボコボコ道に入っていく‥‥こんなとこ通って一体どこに行くんだろう?
「あれ‥‥?行き止まりだよ。道間違えたんじゃねーの?」
「ううん、ここでイイの‥‥停めて。ちょっと休もうよ」
 行き止まりのちょっとした広場にクルマを停めると、樹はまるで子供みたいにすぐにドアの外に飛び出していった‥‥ここは一体どこなんだ?グルリと見渡す限り草原が広がってまるで牧場みたい。
 それにしても疲れた、ねむい‥‥椅子を思いっきり寝かせてその場にぶっ倒れると、すぐに睡魔が襲ってきて意識を奪っていく‥‥
 しかし、眠りに落ちようとしたその時、運転席のガラスをコンコンたたく音が再びオレを揺り起こす。窓の外を見ると樹がしきりに手招きしていて‥‥表に出ろ、って事らしい。
「何なんだよ、ねむいんだよオレは‥‥ホントにもうしょうがねぇヤツだなぁ」
 しぶしぶドアを開けてクルマから降りると、樹はやけに嬉しそうに空を指差していた。
「ねぇちょっと上見てみなよ‥‥これ、ホントすごいよ」
 ‥‥なんでこんなに興奮してるのかさっぱり分からないけど、とりあえずねむい目をゴシゴシこすって空を見上げてみる。

 そこには‥‥

 うわぁ‥‥

「ね、スゴいでしょこの星空‥‥ここまで澄んだ空はアタシも初めて見るよ」
 ホントだ。こりゃスゲェや‥‥
 思わずその場に座り込んで、空いっぱいにバラ撒かれた燃える宝石の輝きに見入ってしまう。

 そういやここんとこずっと、小さい事にグチグチ言ってばかりで‥‥こんな大きな景色を見ようともしてなかったなぁ。

「一服どうよ?」
 樹のやわらかな温もりが背中に覆い被さってきて、火のついた煙草を唇の前にそっと差し出す。
「え‥‥いや、オレ煙草なんて吸ったこと無いから‥‥」
「じゃあ記念すべき初体験だね‥‥イイじゃないの一本ぐらい、オンナの誘いは有り難く受けるものよ」
 そんなこと言いながら半ば強引に煙草をくわえさせる、冷たく乾いた指の感触がゾクッとするほどに優しい。
「スゥ‥‥ッて吸ってみな」
 甘い囁きの言いなりになって、茶色のフィルターから煙を思いっきり吸い込む。大きく膨らむ赤い灯が先端の紙をゆっくりと溶かして‥‥言いようのない濃い感触が身体の奥深くまで入り込んでくる。
 少しクラつくような煙の味をかみしめてからフゥ‥‥ッと吐き出すと、途中で喉がチリッと焼けるように痛くてゲホゲホと咳き込んでしまう‥‥なんでこんなもの美味そうに吸えるんだろ?オレにはやっぱり分からん。
「ははははっ、ホントに煙草吸うの初めてなんだね。アタシよりオトナのくせに‥‥大丈夫?ムリして吸わなくてもいいよ」

 どこからともなく吹き抜ける一陣の風が、紫の煙を根こそぎかっさらっていく。

「‥‥ところで、ここは一体どこなの、樹?」
 背中にぴったりくっついた樹に問いかけると、つながりを確かめるように腕をギュッと締め付けながら答えを返してきた。
「アタシが生まれた場所だよ」

 へぇ‥‥

 答えの意味をかみしめながら、オレはじっと目を凝らして草原と星空の境界線を見つめる。

 なるほどね。

「ここはアタシが小さい頃からのお気に入りの場所なんだ‥‥満月の綺麗な夜にここに来ると月明かりを見ながらいつまでもボーッとしていたものだから、アンタそのうち変身しちゃうんじゃないの?、ってママに言われたこともあったよ‥‥そうそう、あの灯りのすぐ横には神社があって、縁日でパパが買ってくれたりんご飴がスゴく美味しくってさぁ‥‥」
 それからしばらく、樹は故郷の思い出を一つ一つ話して聞かせてくれた。桜吹雪の事、花火の事、落ち葉狩りの事、雪かきの事‥‥そういえば、こんなに無邪気で穏やかに話をする樹って、初めてだ。
 やがて疲れて話も途切れると、生暖かく気だるいため息が首筋を優しく撫でていく。
「‥‥何でこんな事になっちゃったんだろうね」
 意味深な低い囁きの後にもう一度深いため息‥‥想いを溜め込むように充分に間を置いて、吐き出されたのがこの一言だった。

「アタシの両親、今日離婚しちゃったんだ」

 突然に突き付けられた重い一言。
 それって、樹にとってどういう事なんだろう?オレは何を返したらいいんだろう?
 沈黙のスキマを埋める風のざわめき‥‥返す言葉を一つ探すだけなのに、いろんな事を想ってじわっと汗をかいてしまう。

「‥‥辛かった?」

 さんざん考えた揚げ句に、オレはそんな事しか言えなかった‥‥どれだけピッタリくっついてみても、ホントの事情とココロなんて結局分からんもん。無責任な慰めなんて言えないよ‥‥
 それでも樹は背中にくっついたまま、クスクスと穏やかに笑っている。何が可笑しいんだろう?何も分からんバカなオレをあざ笑ってるんだろうか‥‥?
「辛い?‥‥そうねぇ、アンタとあんまり変わんないんじゃないかなぁ?ケリがついてスッキリしました、ってカンジはするけど、これからどうしようか‥‥帰る場所も無くなっちゃったし‥‥ねぇ」
 やわらかな乳房を背中にグッと押し付けながら、樹はまるで揺りかごみたいにオレの身体を揺する‥‥その仕草は親に甘えるコドモみたいで、または何かを求めてるようでもあった。
「‥‥オレにどうして欲しいの?」
 なんとなく答えは分かるけど、あえて問いかけてみると‥‥しばらく間を置いて、樹は呆れたような苦笑いを挟みながら答えを返してくる。
「やれやれ、まだ分からないの?‥‥ん~もぉいいや、アタシから言っちゃうよ‥‥こんなアタシだけど面倒見てくれますか、って事だよ‥‥5秒以内に返事しな、でないと‥‥オトしちゃうぞ」
 甘い囁きの合間に樹の細い腕がシュルッと絡み付いてきて、オレの首をスリーパーホールドに固めてしまう。
「ほら早く答えなよ‥‥4‥‥3‥‥2‥‥」
 細い腕が真綿のようにジワジワと締まってきて、息が苦しい‥‥ヤバい、コイツ本当にこのまま首を締めるつもりだ。

 答えはもう分かりきっているんだ。ただどう伝えるか困っていただけで‥‥だって[愛してる]って言葉は禁句なんだもん‥‥

「1‥‥0‥‥早く答えないと締めちゃうぞ、ほら‥‥」
「ま、待てって‥‥分かったよ樹、できる限り面倒見るよ。オレにできる限り‥‥って、大していい生活はさせられないし解り合う事もできないかもしれないけど‥‥でもオレの側にいて欲しいしカラダだってたっぷり欲しいし‥‥樹にしてやれるのはそんな事しか無いけど、それでいいんなら‥‥」
 うわ‥‥ドサクサに紛れて何ずうずうしい事を言ってるんだオレは?こんな答えじゃ首締められてもしょうがねぇよな‥‥
 でも、案外これが正直な答えなのかもしれない。
「ふぅん、なるほどね‥‥ま、いいでしょ。解放してあげるよ」
 完全に意識が切れる一歩手前で、絡み付いた腕からようやく力が抜ける‥‥あ~死ぬかと思った。すぐに二つ三つ深呼吸して、花の香りの混じった甘い空気を胸いっぱいに吸い込むと、オレはようやく落ち着きを取り戻す。
「‥‥こんな答えで良かったの?息が苦しくて焦って、すごくヘンな事言ったような気もするけど?」
「いいんじゃないの、正直な答えだと思うよ‥‥ミノルは独りじゃいられないから、アタシは他に帰る場所が無いから、だから一緒に居る‥‥それだけの関係なんだからカッコつけなくったっていいんだよ。カラダだって何だって、欲しいなら素直に求めればいいじゃない‥‥ねぇ、そうでしょ?」

 ポンポンと頭をはたく手のひらがとてもやわらかくて‥‥黙ったままコクリと頷くと、甘い香りを乗せたつむじ風が二人をクルリと巻いていった。

「‥‥さぁて、と。言いたい事も言っちゃったし‥‥」
 耳元で甘く囁くのと同時に、長くしなやかな指がシャツの裾に伸びてきて‥‥ハッと思う間もなくシュルッと簡単に脱がされてしまう。
「ぅわ!?ちょっ‥‥待てって、オマエ展開が急すぎ‥‥」
 言ってはみるけど抵抗はできなくて‥‥まるで人形みたいに手脚を引っ張り回されながら、靴下以外の衣服がなす術も無く引き剥がされてしまう‥‥その間推定8秒。いくら薄着だとしても信じられない早業だ。
「へへっ‥‥遊ぼうぜぇミノル」
 フカフカした草むらに押し倒した上に樹が馬乗りにまたがって‥‥楕円形の月の明かりを背に三日月のような妖しい笑みがオレを見下ろす。
「ちょっと待てって、こんな何も無い所でもし人が来たら‥‥隠れる事もできないぞ」
「バァカ、人なんか呼んだって来やしないよ‥‥せっかく最高の夜なんだからさ、目一杯気持ち良くなっとこうぜ」
 話してる間に樹も素早く服を脱いで、オレと同じく靴下を残して裸になってしまう。月明かりに照らされた白いムチのような肉体は、もう[艶っぽい]も通り越してただひたすらに[野性]を主張していた。

 絹のような肌に全身を包み込まれてギュウ‥‥ッと締め付けられると、もう抵抗する気力すら涌いてこない。熱い吐息を吹きかけながら、ヴァンパイアみたいに首筋にかぶりつく‥‥いつもの分かりきった責め方なのに抵抗する術も無くて、たっぷりと力を吸い取られてしまう‥‥
 深く刻まれた歯型をなぞる舌先は、ぬるい唾液を塗り付けながらゆっくりと首筋を這い上がって、やがて耳たぶにまでたどり着く‥‥ジュルッ、と脳髄を突き刺す湿った音‥‥耳全体に唇を吸い付けて、まるで飴をしゃぶるみたいに溶かしてしまおうとする。時々歯を立てる鈍い痛みさえ、ズキンと響いてオレを痺れさせる‥‥
 本当バカみたいだオレ‥‥いつもおんなじ責め方をされてるのにいつもおんなじように気持ち良くなってしまう。分かっていても逆らう事なんかできやしない。
 なんで樹に抱かれるとこんなにも気持ちいいんだろう?
 息も詰まるような深い口づけを食らいながら、無いアタマで懸命に考えてみる。

 気持ちいいから‥‥だけじゃ無いよな。単純にそれだけならすぐ飽きるもん。
 樹に抱かれる、という事自体が無条件に気持ちいいのかな‥‥カラダだけじゃ無くてココロとか魂とか全部引っくるめて、側にいるだけで満たされるような感覚があるのかもしれない。

 熱く吸い付いた唇にちょっとだけスキマが開いて、湿った吐息が苦しそうに息継ぎをする。でもお互いまだ全然足りなくて、甘い蜜の味を求めてもう一度やわらかい唇を吸い付け合う。

 まるで共食いみたいだな。理性より何よりも、側にある肉体の美味しいところをしゃぶり尽くそうとする本能だけで相手を求めてしまっている‥‥いくら好きだからって言っても迷惑な干渉の仕方だよなぁ。
 でもそう思う一方で、このまま樹に骨の髄までしゃぶられて吸い尽くされてしまいたい‥‥っていう欲望があったりもする。
 狂ってる?そりゃそうだよな。
 でも‥‥二人とも同じように狂っていて、お互いを求め合ってるとしたら、それは‥‥

 甘い余韻を残しつつ唇がゆっくりと離れていく。ハァッ、ハァ‥‥ッと大きく息をつく二人‥‥たぶん窒息するまで求め合っても、唇だけで完全に満たされるのは無理だろう。
 樹は腕の中からオレを解放して、すぐ隣の草むらにコロンと横たわった。二人の間のわずかなスキマを駆け抜ける乾いた風が、軽く汗ばんだ身体を拭ってくれるようで心地良い。
「フフ‥‥さぁ今度はミノルの番だよ」
 ねっとりとしたヤラしい視線を絡ませて、樹が誘惑を仕掛けてくる‥‥オレはフレンチキスの間に考えた事に挑戦すべく、樹のしなやかなスレンダーボティを蜘蛛のように捕らえて、美味しそうな柔肌にそっと歯を立てて食らいついた。
「‥‥痛っ!」
 ドクッ、ドクッ、と脈打つ鼓動を感じながら、さっき樹がそうしたように首筋にかぶりつく。咬む力に強弱をつけて、与える痛みの強さで樹を揺さぶってみたりもする。
「ぁ‥‥はぁ‥ぁ、つぅ‥‥ぁぅ‥‥ぁんっ‥‥」
 強く歯を立てる度に漏れるか細い声が、硬く疼くモノで串刺しにする時の喘ぎ声に似ているのは気のせいかな‥‥?
 綺麗な首筋に鮮やかな印を残して、次はもっと綺麗で美味そうな頬に食らいつく。やわらかな歯ごたえが心地良くて思わず食いちぎってしまいそうで‥‥昴ぶる気持ちと力加減の折り合いが難しい。
「あっ‥‥つぅっ‥‥痛いよぉ、もっと優しくして‥‥」
 いけない、ちょっと強くしすぎたかな?‥‥痛みを拭うように舌先で歯型をそっとなぞってから、今度は反対側の頬にさっきよりも優しくかぶりつく。

 このまま食い散らかしてしまいたい。全て吸い尽くしてしまいたい。だって樹が好きだから、どこにも行かないように自分の中に取り込んでしまいたいから‥‥

 自分勝手な想いと狂った欲望を鈍い痛みに溶け込ませて、彫り物みたいにゆっくりと柔肌に刻みつけていく‥‥こんな求め方をするオレを樹はどう受け取ってくれてるのかな‥‥?
「ねぇ樹‥‥オレもっともっと樹が欲しくて、少しでも樹を奪ってしまいたいんだけどさ‥‥オレ、どうしたらいいのかなぁ?」
 耳の中にビチャビチャとたっぷり唾液を塗り付けながら、正直な想いと欲望をそのまま甘い囁きにして樹の中に挿入する。
 樹はオレを欲しがってくれてるのかな?
 それとも一方通行のカンチガイの[愛]なのかな‥‥?
 分からないから不安になる。いくら求めても手が届かなそうで‥‥
「‥‥こうすればいいんだよ、ミノル」
 ハスキーな囁きにハッとした次の瞬間、首筋にズキッと痛みが突き刺さる‥‥ほんの一瞬気を抜いたスキに、樹はオレの首筋の急所に食らいついていた。

 気持ちを越えて届く、理屈抜きの強い快感。

 どうして、樹はこんなにもオレの感じるツボを熟知してるんだろう?いつも自分から求めてくるうちに勝手に覚えてしまったんだろうか‥‥深く歯が食い込む度にボウッと頭が浮ついて、体中の血管に電気が流れていくみたい‥‥

 気持ちいい。
 そして、なんだか悔しい‥‥

 気持ちを越えて届く、こんな強い快感をオレも樹に与えてみたい。

 身体をスッと起こして、程良くふくらんだ白い乳房を真上から見下ろしてやる。二つのふくらみの谷間には、首から掛かった銀の十字架が月明かりを一杯に吸い込んで輝いている。
 いつ見ても綺麗と思えるその眺め‥‥綺麗すぎて勿体無くて、乳房にはあまり手を掛けないでいたけど、今夜は違う。澄みきった月明かりの下で、どうしても樹の全てを手に入れてしまいたいんだ。
 冷たい手触りの十字架をそっと除けて、やわらかなふくらみの真ん中に頬をうずめて‥‥谷間の白い地肌に濡れた舌先をツウッと滑らせてみる。

「‥‥ひあっ!?」

 ビクッ、と身体をくねらして、カン高く素っ頓狂な喘ぎ声を鋭く吐き出す‥‥突然の反応に戸惑いながら、もう一度同じようにゆっくり舌を這わせてやると‥‥

「‥‥あぁ‥‥イヤッ、くすぐったい‥‥ダメぇ‥ハァ‥‥そこはヤメて‥‥ぁぅ、はぁ‥ぁ‥‥」

 身体を激しくくねらせて逃げ出そうとする樹を、オレは脇をグッと締めて押さえ付けた。
 こんな美味しい反応をしてるのに‥‥逃がすワケにはいかないよ。
 形の綺麗な乳房を逃がさないようにしっかり捕まえて、人差し指で乳首の突起をゆっくり、グリグリとねぶってやる。さらに親指と他の三本の指で乳房全体を挟み込んで、リズミカルに揉みしだきながら綺麗なふくらみをメチャクチャに崩してしまう。
 そして再び顔を深くうずめて、乳房の輪郭をなぞるようにゆっくりと舌を滑らせてあげる‥‥
「はぁっ、ハァ‥‥っ‥‥イヤ‥‥あ‥っ‥‥ひゃっ、はぁん‥‥‥‥ハァ‥‥ハァ、ぁぁ‥‥」
 じんわりと汗ばむ白いふくらみの間から、目をきつくつむって金魚みたいに口をパクパクさせながら激しく喘ぐ樹の顔を覗き見る‥‥自分の指と舌だけでここまで感じさせるのは初めてでなんだか嬉しくて、もっともっと樹を弄んでみたくなる。
「へぇ‥‥オマエ変わった所にツボがあるんだな。この谷間をペロッ、てなめるとビクッと感じちゃうんだ‥‥あ~分かった、裸になっても十字架を外さなかったのはここを隠すためなんだろ?」
「ちがうよぉ、そんなんじゃ無くって‥‥ぃやんっ、ダメぇ‥‥カラダに力が入らないよぉ‥‥はぁぁ、あぁ‥‥そんな、揉まれたら‥‥おかしくなっちゃうよ‥‥‥‥あんっ、あぁ‥‥」

 面白いぐらいに悶えてくれる樹の反応を楽しむうちに、オレはもっと面白い事を思いついてしまった。

 すっかり無抵抗になった樹の上に馬乗りになって、汗ばんで赤みがさした裸体を優しく見下ろす。そのまま覆い被さるように上体を屈めて、アイサツ代わりに軽く口づけしてやる。
 そして再び上体を起こして、腰をグッと前に突き出すと‥‥白くやわらかい乳房と太く浅黒い剛直がツンッ、と軽く触れ合った。
 ハァハァと息を乱しながら、樹はキョトン、とした顔をして接点を見つめる。
「???‥‥何をするつもりなのミノル?」
 まだ樹が戸惑ってる間に両手で乳房をしっかり捕まえて、その真ん中に熱いモノを強く押し付けてしまう。そして‥‥
「こうするんだよ‥‥見ててごらん」
 扇情するように甘く囁きながら乳房の上でゆっくりと腰を揺すって、今まで見た事も無いぐらいに淫らな姿を樹に見せつけてやる。

「そぉら‥‥へへっ、気持ちいいだろう?こんなヤラしい責め方、今までしたこと無かったもんな‥‥」

 白くやわらかな乳房を溶かして崩してしまうぐらいに、硬く疼く欲望をたっぷりと暴れさせる‥‥なぶるように腰をくねらせながら樹の表情をじっと見つめると、息を弾ませて目一杯に悶えながら、何故か可笑しそうに笑みを浮かべているようにも見えた。
「どうしたんだい樹、こんな責め方をされておかしくなっちゃったのか?」
「いや‥‥ハァ‥‥だってさぁ、アタシ胸そんなに大きくないから‥‥ぁんっ‥‥こんなことされるなんて思わなかったんだもん‥‥はぁ‥ぁあん‥‥」
 フゥ‥‥と一息ついて、さんざん暴れさせた太いモノを唇の前に差し出すと、すぐに熱い舌が絡み付いてきてローションみたいな唾液をたっぷりと塗り付けてくれる‥‥再び胸の谷間に戻すと今度は樹が自分から乳房を挟みつけてきて、太いモノを貪りながら指をくねらせて乳首も一緒に弄んでしまう。
「あぁ、唾液で滑るからさっきよりも気持ちいいよ‥‥フフ、樹オマエその格好すごくヤラしいぞ。そんなに乳房をくねらせてまでオレのモノが欲しいの?」
「‥‥はあっ、はぁ‥‥そうだよ、ミノルのその太いモノが欲しいんだよ‥‥だって、熱くてくすぐったくって、スゴく気持ちイイんだもん‥‥ぃや、はぁんっ‥‥もっと大きく腰を振って、アタシのおっぱいをめちゃくちゃにしちゃってよぉ‥‥」

 そんなに大きくない乳房を精一杯にくねらせて奔放に悶える樹の姿を眺めながら、オレは確かな満足感をかみしめていた‥‥感じるツボを見つけて快感を与えて、逆に樹からも貪欲に求めてくるようになって‥‥これでやっと対等な関係になれたような気がする。

「そろそろいいかな、樹‥‥おねがいね」
 脱ぎ捨ててあったズボンのポケットからコンドームを取り出して、いつものように樹に手渡す。間違いを起こさないようにっていう責任感もあるんだけど、ホントはゴムをはめてくれる樹の手つきの優しさが気持ちいいからなんだ。
 たっぷりと乳房を虐めてガチガチに膨らみきったモノに細い指が絡み付いて、そこにやわらかい唇がそっと被さってくる‥‥そのままねっとりと唾液を塗り付けて充分に濡らしてから、ゆっくり丁寧にゴムを付けてくれるはずだった。
 ところが‥‥唇での愛撫を終えた途端、なんと樹は草むらの中にゴムを投げ捨ててしまった。
 突然の出来事にビックリして、投げた方向をただ呆然と見つめるオレ‥‥
「バカッ!‥‥オマエ何やってるんだよ?あれ一個しか持ってきてないのに‥‥ゴム無しでヤる気かよ?オマエそれでいいのか?」
 すっかり慌ててしまったオレに対して、樹は全く呑気に笑いながら言葉を返してくる。
「別にイイじゃん一回ぐらい。今夜は生身のミノルが欲しいんだよ‥‥ていうかバカはアンタだよ。一個だけゴム持ってきても足りるワケないでしょ?」
 からかうようにクスクスと笑いながら、樹は馬乗りになったオレの背中で長い脚を思いっきり開いてみせる。後ろを向いて割れ目に指を添えてみると‥‥何もしてないはずなのにそこはもうしっとりと濡れていて、すぐにでもオレを受け入れられるように唇を緩めていた。

「おいで、ミノル‥‥大丈夫だよ、どんな結果になっても少なくともアタシは後悔しないから。二人で気が済むまで求め合おうよ‥‥」

 どうなっても知らないぞ。

 程良く熟した花びらに、生身の熱いモノを深々と突き刺してあげる。

 煌々と灯る月明かりのステージライトが淫らに結び付いた二人を照らして、広がる草原の上に黒いシルエットを浮かび上がらせる‥‥腰を大きくグラインドさせると動きに合わせて黒い影も淫らに揺れて、ケモノみたいな肉欲を否応無しに焚きつけていく。
「‥‥ぃや、ぁあぁん‥‥あんっ、あっ、あっ、あっ‥‥はぁあんっ‥‥激しいよミノル、もうちょっとゆっくりして欲しいよぉ‥‥はぁ‥んっ‥‥」
「へへへ‥‥だって月明かりに照らされた樹のカラダが綺麗すぎるから、つい虐めてみたくなるんだよ‥‥ハァ‥‥満月の夜はおかしくなるってよく言うけど、こんなカラダを見せつけられて平気でいられるほうがおかしいと思うぜ‥‥」
 そんなカラダをもっと欲しくなって、のしかかるように上体を被せて全身で樹を包んでしまう。そのままやわらかい乳房の中に顔をうずめて、さっき見つけたばかりの[弱点]を濡れた舌先でじっくりと責めてあげる。
「ひゃっ!‥‥ぁ‥‥はぁ、ぁ‥っ‥‥ぁ‥‥あっ、ぁ、あ、あんっ、ぃやんっ、ひゃあ‥‥あっ、あっ、あっ、あぁ‥‥」
 くすぐるような舌遣いで全身から力が抜けるのを見計らってから、一気に腰を激しく揺すって奥底まで貫いてしまう‥‥こう言っちゃなんだけどエゲツない責め方だ。
「ははははっ、そんなに喘いじゃうのは感じちゃってるって事なんだろ‥‥どうなの?口に出して言ってごらん。[気持ちいいよ、ミノル]ってさ‥‥」
 深々と貫いたまま動きを止めてのしかかって、大きく息を乱す可愛い唇をじっと見つめてあげる‥‥いつもは[気持ちいい]って言わされてる立場だけど、今夜はオレが樹に言わせる番だ。
「ハァ、ハァ‥‥そんなに、見つめないでよミノル‥‥こんな顔じゃ恥ずかしいよぉ‥‥ぁぁ‥‥」
 なかなか降参しない樹に業を煮やして、ピンと張った乳房をぐにゃぐにゃに揉みつぶしてしまう‥‥うん?コイツおっぱい揉むとお尻も一緒にキュッキュッ、と締まって気持ちいいぞ。初めて見つけたクセだけどこりゃいいや、もっとイジメてやろう‥‥
「‥‥ほぉら、ホントはこの太いモノでもっと奥までエグって欲しいんだろ?そんなにキュッキュキュッキュ締め付けちゃってさぁ‥‥早く吐いてラクになっちまいなよ、[気持ちいい]ってさ‥‥」
 舌と指と囁きでなぶるように責める事しばし‥‥途切れとぎれの息をなんとかつないで、ようやく樹が降伏の言葉を口にする。

「‥‥気持ちいいよぉ、セイくぅん‥‥」

 ンんっ!?

[セイ]‥‥君???

「ちょっと‥‥今の聞き捨てならねぇな樹?誰なんだ、その[セイ君]ってのは?」
 乳房の間から顔を上げてじぃっと樹の目を見つめると、なんとか視線を外らそうとして顔をそむけてしまう‥‥そう、それは都合が悪い時のコイツのクセ。きっと今の樹には、月明かりを背にしたオレの顔が悪魔みたいに見えるんだろうな。
「‥‥オトコだろ?」
 両手に捕えた乳房をジワジワと虐めながら、なおも樹を追い詰めていく‥‥答えはもう分かりきってるんだけどね。

 ホント言うと昨夜コイツを抱いた時に薄々感づいてはいたんだ‥‥違うオトコと抱き合ったんだな、って事。だってカラダの反応がやけに早かったし、それに‥‥黒のランジェリーのワケも[ゴメンね]の意味も、なんとなくは分かっていたんだ。
 でもオレは樹を責められない。
 だって独りに戻るのがイヤなんだもん。嫉妬なんてする余裕、オレには無いよ‥‥

「答えてよ、怒ったりしないから‥‥な、樹」
 身体ごと覆い被さって目の前まで顔を持っていくと、ようやく観念して樹が答える。

「‥‥ゴメンよぉミノル。昔のオトコにたまたま出会って、ついデキゴコロでさぁ‥‥悪気は無かったんだよ」

 責めたりはしない。
 そんな事するよりも、今、腕の中に樹は確かにいるんだから‥‥
 奪ってしまえばいい。

 靴下を履いたままの足首を手にして、長くしなやかな脚を肩の上まで思いっきり持ち上げる。
 そのままゆっくりのしかかっていくと、しなやかな脚は地面についてしまうぐらいに屈曲して‥‥真上から打ち下ろすような腰の動きが子宮まで貫いてしまう。
 こんな言い方キライかもしれないけど‥‥ケモノみたいに犯してやる。

「あ‥‥つぅ、あぁ‥‥あ、あ、あっ‥‥ハァア、っ‥‥はあっ、あっ、ぁあっ、はぁん‥‥ハァッ、ハアッ‥‥あっ、あぁぁぁ‥‥」

 ズチャッ、ズチャッ、ズチャッ、グチャッ、グチュ‥‥ジュブッ‥‥ヌチュッ、ヌチュ、ヌチャッ‥‥ズチャッ、グチャグチャグチャッ‥‥

 白く照らされた脚のラインと乳房のふくらみが輝くほどに綺麗で、息を乱して喘ぐ表情さえもクールで均整のとれた天使の顔立ち‥‥だけどその真ん中にはオレの太いモノが深々と突き刺さって、熱い蜜をたっぷりと溢れさせながら肉壷の奥深くまでをしゃぶり尽くそうとする。

 今この瞬間、樹の全てはオレだけのモノ‥‥誰にも触れさせはしない。

 そんな激しい肉欲もやがては疲れ果てて、白い脚を挟んで二人してハァハァと息を切らせてしまう。これだけ激しく求め合ったのにいまだ絶頂には達しない‥‥どこまでも貪欲なオスとメスだこと。
 オレはスローモーションみたいにゆっくりと起き上がり、熱くとろけた唇の中から太いモノを抜いて、樹との結合を一旦解いてしまう。
 そして気だるさに任せるように隣の草むらに身体を転がすと‥‥痛ってぇ!裸の背中に尖った石が刺さって、とても寝転がるどころではない。
「なぁにやってるの‥‥ほら、こっちにおいでよ。ここなら石も無いしフカフカして気持ちいいよ」
 さっきまで抱き合っていた場所を樹に譲ってもらって、疲れた身体を横たえる‥‥ホントだ、石が無くてまるで毛布みたいにやわらかい。
 それだけじゃない。樹の汗と温もりがたっぷりと伝わってきて、まるでもう一人の樹に背中から抱き締められてるみたいだ‥‥

 闇を切り裂くように星が流れる。

 どうにか息を整えて星空を見上げる樹の優しい横顔に、オレは一つだけそっとお願いをする。
「樹‥‥オレの上に乗ってくれるかい?‥‥オレ、最後はオマエに連れられてイッちゃいたいんだ」
 オレにとってはちょっとした賭けのつもりだった。全てを委ねる事で樹が本当にオレを求めてくれてるかどうか、解ってしまうから‥‥

「‥‥いいよ」

 はにかむような笑顔を見せて樹が答える。そしてゆっくりと、絹で包み込むように‥‥暖かいふくらはぎで腰を挟みながら、太いモノの真上でしなやかに脚を開いてくれた。
 ぱっくりと開いた唇からはまるで泉のように蜜が溢れ出して、ツウッと滴って早くも二つの身体を結び付けてしまう。そそり立つモノに細い指がそっと絡み付いて、溢れる蜜の奥深くへとそれを導いていく‥‥涼しげな星空と月明かりを背にして、透明な微笑みがオレに優しく降り注ぐようだった。
 熱く締め付ける樹の奥深くに沈んでいく。
 流れる涼風が身体をそっとくすぐって‥‥ゆっくり、ホントにゆっくりと腰を揺すって樹がオレを求める。再び一つになった二人の周りには、見渡す限りの草原と澄んだ星空‥‥こんなに綺麗な風景の中で育った樹だから、こんなにも優しくなれるんだね。
「‥‥気持ちいい?」
 天使の甘い囁きに何の抵抗もできずに、コクンと頷いてしまう。カラダもココロもなにもかもが溶かされていくみたいで、許されるならいつまでもこのままでいたかった。

 樹からオレを求めてくれてるこの瞬間だけは、絶対に樹はオレのモノだと思えるから‥‥

「ゴメンねミノル、内緒でフタマタかけちゃったりして。でも、アタシ本当にミノルが‥‥えぇいもういいや、蹴りでもなんでもくれりゃあいいさ‥‥‥‥愛してるよ、ミノル」

 言ったな。

「とうとう言ったな樹、そのセリフを‥‥さっきの[セイ君]の件も合わせて蹴り二発、後でゆっくりと‥‥な」
 意地悪な視線で腰の上の樹を見上げてやると、バツが悪そうに苦笑いしながらも何故か嬉しそうで‥‥ゆっさゆっさとお尻を揺すって性急にオレを求めてくる。

 ウソだよ。蹴り入れるなんて乱暴なマネしないよ。
 だって[愛してる]って樹に言わせただけで、もう充分に満足なんだから‥‥不安定で自分勝手な言葉って分かっていても、ハスキーな声のその響きが何よりも心地良いんだよ。

 息を乱して激しく躍る樹からたっぷりと快感をもらって、今夜はそのままごまかされてしまう事にしよう。

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シリーズ連載 : black angel