一瞬空気の流れが止まった。それと同時に周りの音もかき消され、聞こえるのはただ自分の鼓動だけ。 “どくっ‥‥どくっ” まるで喉の辺りに心臓がきているのかと錯覚するような早い鼓動。 車通りの激しい道をはさんで向こう側に……
一瞬空気の流れが止まった。それと同時に周りの音もかき消され、聞こえるのはただ自分の鼓動だけ。 “どくっ‥‥どくっ” まるで喉の辺りに心臓がきているのかと錯覚するような早い鼓動。 車通りの激しい道をはさんで向こう側に……
今日は彼氏の部屋に初お泊まり。 色んな期待に胸をはずませて、チャイムを鳴らす。 色んな期待とは言うものの、彼が好きそうな下着を身につけてるあたりそういう期待もちょっと。 「開いてるよ~」 中から彼の浮かれた声がす……
「結構いけてるんじゃない?」 今日の私はご機嫌です。買ってきたばかりの浴衣に袖を通し、鏡に映った浴衣姿の自分を見て、色々なポーズを取っていました。 明日は、大好きな彼と夏祭りデート! 2人で手をつないで歩く夜店通り・・・……
「令奈先生・・・。貴女のおかげで私はこの学校を追われることになったんですよ?」 椅子に腰掛けている私の目の前には、保健体育の青木先生が恨みがましい表情で立ちはだかっています。怒りを表す握りこぶしがブルブルと震えているのが……
1. あたしの隣の家に住む磯村るりは、かなりのアホである。 まあ、頭が悪いのは遺伝なんだろうが、いつもオドオドしているあの態度は、いかがなもんかと思う。るりは一つ年下で、高校一年生だ。あたしたちは同じ学校に通っている……
都内某所 今、私は底知れぬ喜びに打ち震えている。汗ばんだ手の平には1つの赤いカプセルがある。このカプセルこそが人類の永遠の夢、「物体の透明化」を可能にする秘薬なのだ!私は天才的な才能によってこの薬の開発に成功したのだ。こ……
「こんにちは~。由紀子です~。徳治さ~ん。開けて下さ~い。」 玄関の前で呼び鈴を押した私はなるべく大きく、元気な声で挨拶をしました。 私の仕事は訪問介護員です。一人暮らしのお年寄りの家に訪問し、身体に必要な介護と、調理、……
雨が降ってきた。すれ違う女の人が、慌てて傘を広げている。 きれいなブルーの傘。さっき亨が着ていたTシャツの色によく似ている。そう思っただけで、また涙が溢れてきた。 雨が降ってきて良かった。頬を濡らすものが、雨なのか……
1. ひとつ年上の遥は、変な少女だ。 それに異を唱える人間は、たぶんこの世にはいない。彼女の生みの親でさえ、うなだれながらもそれを肯定せざるを得ない、というくらいに変だった。 オトコ言葉を話す。まあ、これは許そう。……
「もしもし?大丈夫ですか?」 ハッと我にかえった私の前に、アパートの隣の部屋に住んでいる男性が立っていました。 アパートのドアの前で突っ立っている私の様子がおかしいので、声をかけてきたのです。 「なんだか物凄く汗をかいて……