菜穂 美少女女子高生の苦悶

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菜穂 美少女女子高生の苦悶
2021年06月29日 23時10分
DUGA

都内某所

菜穂は都内の高校に通う女子高生だ。通学には電車を使っており、毎朝満員電車で揉みくちゃにされるのが苦痛である。
(はぁー、こんなことなら・・・)
心の中で大きく溜息をつく。中学までは地方の片田舎でのんびり暮らしてきた彼女は、父親の転勤に乗じて都内へ上京したのだった。最初こそ、憧れの東京で過ごす毎日が楽しくて仕方なかったが、高校二年に進学する頃には飽きてしまった。友達に恵まれなかったのかもしれない。東京は思ったよりも単調な都会に感じてしまったのだ。そして、今年の春で高校三年を迎え、いよいよ進学か就職かの選択に迫られていた。
(実家に帰って・・・)
菜穂は進学も就職も気が進まなかった。とても東京でやっていく自信がなかったのだ。

電車がホームへ滑り込んでくる。菜穂の田舎とは大違いで分刻みで電車がやってくる。便利な反面、何か慌ただしい。これだけ電車がやってくるのに、朝のラッシュときたら、それはもう地獄なのだ。
(何で、こんなに人がいるわけ?)
サラリーマンや学生ならまだ許せるが、ラッシュに合わせたように老人やら定職に就いてない主婦達が乗り込んでくると心底うんざりする。
(時間ズラせばいいのに)
菜穂は小柄なので、どうしても空間の『隙間』へ押し込まれてしまう。もちろん、まっすぐに立っていられるわけもなく、不自然な姿勢で長時間我慢しなくてはならない。日が経つにつれ、何とか慣れてきたものの、どうしても慣れないことがある。痴漢だ。これだけ密度が高いと、身動きが取れないのをいいことに、菜穂の体に手が伸びてくるのだ。最近になって痴漢に対する社会的非難が高まってきて、痴漢の数は減っているはずなのだが、菜穂は毎朝のように痴漢に遭遇してしまう。

(うー、きついよー)
今朝は右手が前方のスーツ男性の脇に挟まれてしまい、やや前傾姿勢で固定されたまま電車が発車した。快速電車なので、停車駅の間隔が長い。一度姿勢が固定されるとこのまま我慢しなくてはならない。ちなみに各停電車だと間に合わない。
(あっ・・・)
サワサワと尻が撫でられている。指が尻の割れ目をそっとなぞり、下までいくとゆっくりと撫で上げられる。
(いやぁ)
前掲姿勢ということは背後の人間に対しては僅かに尻を突き出している格好であり、性欲を抑えきれなくなった背後の人間が手を出しているのだろうか。指は太ももの裏辺りをゆっくりとさすっている。
(だめっ!そこは感じるのっ!!!)
痴漢の指は菜穂の無抵抗を錯覚したのか、我が意を得たようにどんどん大胆に撫でまくる。菜穂は抵抗したくても出来ないのだ。左手でつり革を握っているので離せない。
(とにかく右手を!)
スーツ男性の脇に挟まれた右手を抜こうと藻掻くが、逆にスーツ男性に睨まれてしまった。思わず『すみません』と小声で謝ってしまう。彼だって無理な姿勢で動けないのは同じなのだ。痴漢の指はついにパンティへ到達した。
(離してー。っ!!)
菜穂は濡れている。今朝の痴漢はかなりのテクニシャンで、菜穂は痴漢の刺激に感じてしまっている。それを痴漢に知られたくない。痴漢の指が迷いなくパンティの中へ侵入し、クチュッという愛液の感触を感じて、一瞬動かなくなった。
(あぁ・・恥ずかしいよー)
今、絶対に痴漢にバレた。自分が濡れてることを。菜穂は顔から火が出るほど恥ずかしかった。痴漢の指は再び動き出し、器用に菜穂のクリトリスを剥き、刺激を始めた。
(~~~~ッ!!)
頭が真っ白になり、思わず声が出そうになって慌てて左手で口を塞ぐ。その瞬間、支えがなくなり、右手のスーツ姿の男性に体重が乗ってしまった。すぐに睨まれ、再び『すみません』と小声で謝る。スーツ男性は軽く舌打ちをした。菜穂が老人や主婦達の存在にうんざりすると同じように、彼らから見れば女子高生も同じようなものなのだろう。そんな二人のやり取りの最中も痴漢の指は刺激を続け、菜穂はクネクネと腰を振って藻掻くだけだった。

電車が停車した。水が押し出されるようにドッと人の波が車内から溢れ出た。車内はかなり広々として、菜穂はホッと溜息をついた。毎朝、何回溜息をついたか数えてグラフにしてみると面白いかもしれない。
(あっ、痴漢は?)
いつの間にか、痴漢の指はどこかへ消えてしまい、菜穂は思い出したように後ろを振り返った。七人掛けのシートに四人のスーツ男性。三人が眠っていて、一人は本を読んでいる。窓際には目の覚めるような美人が携帯電話を操作している。スーツ男性達の向かいのシートの中央で二人の主婦が楽しそうにおしゃべりとしており、両端にスーツ男性と老婦人がそれぞれ座っている。こちらも四人。
(さっきの駅で降りたのかな)
そう考えるのが自然だった。菜穂は主婦達の隣の空いている空間に腰を下ろした。パンティには恥ずかしいシミが出来ているに違いない。
(ふぅ)
この二駅先が菜穂の降車駅だ。ここからは痴漢に遭うことはない。

ホームへ降り立つとすぐにポンポンと肩を叩かれた。びっくりして振り返ると、先ほど窓際に立っていた美人だった。見れば見るほど綺麗で、甘い香水の香りがした。
(なんだろう。モデルの人みたい・・・)
彼女はにっこりと微笑むと、菜穂の頬をソッと撫でた。いきなり頬を撫でられて菜穂は後ずさりした。
「綺麗な肌ね」
「あ、あの・・・」
「あなた、さっき感じてたよね?」
「え?」
菜穂は直感的に先ほどの痴漢の正体を見破った。
「あなただったんですか?さっきの!」
「あら、怒った顔も可愛い」
「ちょっ!・・・何考えてるの?」
相手は明らかに自分より年上。私服だから、多分大学生だろう。スタイルは抜群で、とにかく余裕がある。ルックスとスタイルなら菜穂も自信があるが、圧倒的に彼女には敵わない。
「見た目の割にはあんまり怒ってないんじゃない?」
「そんなことないです!」
「でも、痴漢されたって分かったのに駅員とか呼ぼうともしないじゃない?」
「あ・・・」
一瞬の隙。菜穂はいきなり抱きつかれた。股間が熱くなる。
「あなた、可愛い。最高」
「離して・・・声出しますよ」
女はすぐに離れた。そして戯けたように肩を竦めた。完全に彼女のペースだ。あり得ない行為に翻弄されて、感情が高ぶり、菜穂は急に泣き出してしまった。周りには誰もいない。久しぶりに泣いた。田舎の時は絶対泣かなかったのに。
「大丈夫?」
そっと背中をさすられて菜穂は複雑な気持ちになってしまった。痴漢の正体が女性だと分かってどうして良いのか分からないのだ。
「ねえ、名前なんて言うの?」
「・・・菜穂・・です」
「そう。じゃあ、菜穂ちゃん、今日は学校休んじゃえ」
菜穂は魔法に掛けられたように、素直に肯いた。

「はい・・すみません」
菜穂は電話を切った。仮病を使ってしまった。学校に嘘をつくのは初めてだ。
「よしよし」
痴漢の女性に頭を撫でられて、菜穂は口を尖らせた。
「あの・・子供扱いしないでください」
「あら、ごめんね。・・・そうね、体は立派に大人だったし」
頭に血が上る。怒りというよりは、彼女に『濡れていたこと』を知られてしまったという羞恥である。

「こんなところにいたらマズイです」
「そうね」
さすがに高校の最寄り駅でぶらつくわけにもいかなかったので、二人は再び電車に乗り、若者に人気のある街へ繰り出すことにした。電車の中は比較的空いており、通学時間をとっくに過ぎていたので、制服姿の菜穂はとても目立った。
「あの・・・」
「なあに?」
「名前、教えてください」
「え?」
「名前です。私は教えました」
「ああ、そうね」
痴漢の女性は僅かに首を傾げて、人差し指を顎に当てた。あまりの美しさに菜穂は思わず見とれてしまった。同姓にここまで惹かれた経験はない。
「えーと、ユウナ」
「ユウナ?」
彼女の素振りから偽名であることは明らかだったが、変な名前でもなかったので、菜穂は一応安心した。
「じゃあ、ユウナさん、これからどうするんですか?」
「どうするって、若者の街へ繰り出すのだよ、不良女子高生殿」
「違います!その後です!」
「そんなこと言わせる気?」
ユウナの目が怪しく輝く。菜穂はドキッとして目を逸らした。変なことを聞いてしまった。でも・・・
「ユウナさん、私、そっち系じゃないんです」
他の乗客に聞こえないように声を潜める。
「でも、濡れてたよー」
ユウナは菜穂の真似をして声を潜めた。菜穂は諦めた。
(だめだ、この人のペースに乗ったら)
弱みを握られている以上、彼女には敵わない。そんな菜穂の心情を読んだのか、ユウナは頭の後で手を組んで余裕の体勢だ。
「女子高生っていいよねー。若くて」

目的の駅に到着して、改札口を抜ける。駅前の繁華街は平日の昼間だと言うのに若者で一杯だった。
「バカな奴らばっか」
低い声で吐き捨てるユウナ。僅かに殺気が混じっていて、菜穂は背筋がゾクッとした。一瞬だけ、彼女の裏の顔を見た。
(この人に逆らわない方がいい)
「行こっ!菜穂ちゃん」
「あ、はい」
いきなり手を掴まれて、満面の笑顔のユウナに菜穂は面食らいつつも、彼女の後をついていく。

今頃になって気付いたのだが、ユウナはかなり大胆な服装だった。フレアのミニスカートから伸びる脚は『美脚』という言葉すら色褪せてしまうほど綺麗だった。
「脚、綺麗ですね」
そう言わざるを得なかった。すれ違う同姓、異性、すべてがユウナの脚に視線を送る。
「そう?でも、すっごい綺麗な友達もいるし。菜穂ちゃんの脚も綺麗だよ。早く食べちゃいたい」
「え?」
「ウソウソ。あんまし可愛い反応してると本当に襲っちゃうぞ」
ユウナは菜穂の手を引いてどんどん歩き続ける。

大型のゲームセンターに入り、プリクラの個室へ連れて行かれた。菜穂の心臓は高鳴りっぱなしだ。未だに自分の置かれている状況に戸惑っている。学校サボって痴漢の犯人とゲームセンターにいる自分が他人事のように思える。
(ここでエッチなことされるのかな・・・)
ゲームセンター内は騒がしいので、カーテンの下から覗かれたりしない限りは、何をしてもバレそうにない。
「ちょっとエッチなことしてもいい?」
突飛に言われて菜穂は何も考えずに肯いてしまった。実際は彼女が何を言ったのか、あまり聞こえなかったのだ。
「あん!」
ユウナがいきなり抱きついてきて、菜穂の尻を鷲掴みにした。
「感度良し。お尻完璧・・と」
ひとりごとのようにユウナが菜穂の耳元で呟く。次に彼女の手がスカートを捲り、菜穂のパンティを絞り上げた。
「あっ・・だめっ!」
いろいろな箇所が同時に刺激されて、菜穂は悶えた。ユウナは何度も絞り上げては放し、感触を確かめているようだった。
「あん!そんなに・・・やん!」
立っていられなくなり、ユウナに体を預けるような格好になった。
「すごいねー、まだ何にもしてないのに感じまくり!」
嬉しそうにユウナが微笑む。菜穂は青息吐息で、完全にエッチな気分に浸っていた。
(この人、うますぎる)
尻を撫でるのも、パンティを絞り上げるのも、何をするにしても彼女がやると、とても感じてしまうのだ。レズッ気は全くないはずだったが、菜穂はユウナの虜になっていた。
(早く、アソコ触って欲しい・・・おっぱいも)
ユウナは菜穂を焦らすように体中を丹念に舐めたり、触ったりした。まるで性感帯を発掘するかのように。
「あ、そこだめ!」
太ももの裏を舐められた時、菜穂は我慢できずにしゃがみ込んだ。
「やっぱりね。電車の中でも感じてたもんね、そこ」
そう言うと、しゃがみ込んだ菜穂をヒックリ返し、四つん這いにして尻を突き上げさせた格好で、太ももの裏を集中的に舐め始めた。
(~~~~ッ!!)
菜穂は必死で藻掻いたが、ユウナの力は意外に強かった。どんどん舐められ、同時にパンティの中に手が滑り込み、クリトリスを刺激された。こうなると菜穂はどうしようもなかった。ユウナのテクニックにあっけなく降参し、プリクラの個室の中で二度昇天させられてしまった。

「菜穂ちゃん、合格」
「はぁ・・はぁ・・え?」
まだ、アソコが痙攣している。こんなに短時間に二回もイカされたのは初めてだ。というよりも、菜穂は田舎育ちだったので、元々経験値が低い。
「合格って何がですか?」
「内緒」
言葉と同時に、ユウナの唇が菜穂の唇に重なった。すぐに舌が侵入してきて、菜穂は初めて異性とディープキスを交わした。

「はう・・はふぅ・・ユ、ユウナさん」
「なあに?」
「あん!だめぇ・・・」
菜穂に何度も舌を絡められて、菜穂はトロトロに溶けそうな気分だった。
(ユウナさんは女の人なのに・・・)
異性に感じてしまっている自分を抑えきれない。体は言うことを聞かず、先ほどから為されるがままである。
「菜穂ちゃん、おっぱいも綺麗」
いつの間にか、ブラジャーが外され、服も脱がされていた。剥き出しになった胸の谷間にユウナの顔があった。
「ここも感じちゃうの?」
「あっ!!!いや・・・あん!もう!」
体が鉛のように重い。ユウナの責めはあまりに強烈で、何かされる度に頭の中が真っ白になる。
「あの!・・・はっ・・はっあっ!」
「なあに?」
「あっ・・うぅ・・また・・」
「またイッちゃうの?エッチな子ね」
「でもぉ・・でもぉ・・・」
「そうやってお姉さんを興奮させないでよー」
ユウナの舌が菜穂の蜜壺へねじ込まれた。耐えきれずに菜穂は昇天した。

その後もローターで二回昇天し、最後は再びディープキスを交わした。途中から菜穂は意識が朦朧とした状態でひたすら快楽に身を委ねていた。
「菜穂ちゃん、可愛すぎだよー」
優しく髪を撫でられて、菜穂は気持ちが高ぶり号泣してしまった。
「こらこら、お姉さんを困らせるなって」
ユウナは菜穂を抱き起こし、菜穂が泣きやむまで抱擁を続けた。
「うぅ・・ユウナさんのバカ」
「いちいち可愛いね。菜穂ちゃんのバカ」

二人はゲームセンターを出ると、カフェで軽い食事を取った。
「ふぅ」
無意識に出た菜穂の溜息にユウナが目を細めた。
「可愛かったよー」
菜穂は唇を尖らせただけだった。
「あれ?怒ってる?」
「怒ってません」
「じゃあ、お姉さんにキスして?」
そう言って、ユウナは微笑んで心持ち身を乗り出し、顔を近づけた。
(こんなに綺麗な人なのに。どうして?)
彼女ならどんな男性でもモノに出来るだろうし、リスクを冒して痴漢なんかしなくても快楽を得る方法なんていくらでもありそうなものだ。
(でも・・・)
菜穂はユウナに惹かれていた。口にはしないが、彼女の軽口は聞いていて楽しいし、気持ちが明るくなる。エッチはメチャクチャ上手だし、彼女の妹分でいるのも悪くない。
(でも・・・)
時折垣間見せる、裏の顔。他人を見下す冷たい視線。すれ違う人間がどんなに彼女の肢体に好奇の視線を送ろうとも、微動だにしない強靱な意志。
(この人は私達が住む世界の人じゃない)
それが菜穂の正直な感想だった。

いつしか夜になっていた。カフェを出た二人はショッピングを楽しんだ。たった数時間で手に持てないくらいの荷物ができた。当然、高校生の菜穂には経済力がない。全部、ユウナが買ってくれたのだ。初めのうちは恐縮していた菜穂だったが、菜穂が何かを欲しがると嬉しそうに買ってくれるユウナに甘えてしまった。ユウナは上物の財布から当たり前のようにゴールドカードを取り出し、次々と精算していった。店員達はユウナの存在感に圧倒されて、制服姿の菜穂を怪訝に思う余裕もなかった。

「もう夜だねー」
ユウナが寂しそうに呟いた。今日、初めて見る表情だった。星を眺めているのか、物思いに耽っているのか、ユウナはしばらくの間、じっと夜空を凝視していた。そんな彼女を見た菜穂は急に切なくなった。映画を見て感動して泣いてしまった時のような気持ちの高ぶりだった。
「ユウナさん!」
「ん?」
ユウナが空から目を離し、菜穂の方へ向いた瞬間、菜穂がユウナの唇を奪った。さすがのユウナも驚いた。
「どうしたの?ついに目覚めちゃった?」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべるユウナに菜穂は躊躇なく抱きついた。
「ありがとうございます」
「なんで?」
「なんか、ユウナさんのこと、勘違いしてました!」
「ふーん。でも、横断歩道のど真ん中で抱きつくなんて、菜穂ちゃんもなかなかの強者だね」

二人は駅へ向かっていた。菜穂はこのまま別れたくなかった。駅へ着いたら、彼女はきっと何事もなかったかのように帰宅の途へついてしまうだろう。
「あの!」
「ん?」
ユウナに見つめられて、菜穂は体が熱くなった。心臓が暴れ牛のように跳ね狂う。
「もう少し・・・だけ」
「あら、そう?」
その時のユウナの笑顔は忘れないだろう。おもちゃを買ってもらった子供のような無邪気な笑顔だった。

その後、菜穂は何の説明もなく、『隠れ家』と呼ばれる建物へ連れて行かれた。入り口に警備員らしき人達がいて緊張したが、ユウナは彼らに微笑んだだけで通された。
(なんか、大丈夫かな・・・)
急に心配になったが、ユウナは何度も『大丈夫だよ』と声を掛けてくれた。地下への階段を下りて、ドアを開く。突然、異世界の空気が流れ込んできたような錯覚。来てはいけない禁忌の場所へ来てしまったという軽い後悔と興奮。
(なんか・・・すごい・・・)
内装は極めてシンプルだが、高級モデルルームのような品の良さ。そして、外見以上の広さ。
(でも・・・)
異形の怪物がいるわけでもない。異空間が広がっているわけでもない。しかし、足が竦んで動かない。気を抜くと、跳ねとばされそうな気さえする。怯え竦んで立ちつくす菜穂に気付いたユウナは、菜穂を安心させるように微笑んで、菜穂の手を取った。菜穂は最大限の勇気を振り絞って、部屋の中へ足を踏み入れた。部屋の奥で一人の男性が立ち上がるのが見えた。

「この子か」
「はい」
『彼』は菜穂に優しく微笑みかけた。あまりに『格』が違ったので、菜穂は何度もユウナに助け船を求めた。『彼』の前に立つ自分があまりに哀れに思えて、感情が高ぶった菜穂は泣き出した。
「おやおや」
「また、泣いちゃった。この子、すぐ泣いちゃって。感受性が高い年頃なのね」
ユウナが自分の背中を撫でてくれている。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「いいよ。私こそ、ごめんねー。いきなりだったもんね」
「とりあえず、ソファーに座りなさい。衣緒菜、紅茶を」
「はい」
ユウナは元気よく返事をして、キッチンへ向かった。
(衣緒菜?)
菜穂は頬を伝う涙を拭いて、思い切って顔を上げた。『彼』と目が合った。
「あの・・・」
「どうした?」
「あの・・・その・・・衣緒菜って」
『彼』は僅かに首を傾げて、キッチンにいるユウナを指さした。
「彼女の名前だ。名前も聞いてないのか?」
「あ、いえ・・・ごめんなさい」
衣緒菜がカップを乗せたトレイを運んでくる。
「はい、菜穂ちゃん」
「ありがとうございます、ユウナさん。・・・でも、衣緒菜さん、なんですね?」
「へ?」
「衣緒菜、妹の名前をオモチャにするのは止めなさい」

腕時計の針は夜の十一時を回っていた。終電はまだ間に合う。菜穂は駅へ急いだ。早足で歩きながら、『隠れ家』でのひとときを思い浮かべた。
(すごい空間だった)
あの後、次から次へと美女が現れ、菜穂に話し掛けてきた。衣緒菜の妹の『本当の』ユウナもいた。
(『本当の』ユウナさんもすっごく美人だった)
あそこにいた美女達は『彼』の奴隷らしい。どうやら衣緒菜は菜穂を『彼』の新たな奴隷に加えようとしていたようだ。驚いたことに菜穂は『それもいいかも』と思ってしまった。『彼』は今までに出会ったどんな男性よりも抜群に素敵だったし、女性達もとても優しかったからだ。

頃合いを見計らって、まるでパーティーに誘うような感じで衣緒菜が菜穂に訊いてきたのだ。
「ねえ、菜穂ちゃん、どうかな?」
すっかり打ち解けていた菜穂には否定する理由がなかった。
「えーと、いきなりはあれですけど、いいかも・・・」
一瞬、ざわめいた『隠れ家』のリビングは『彼』の一言で静かになった。
「だめだ」
数秒の沈黙の後、一番早く反応したのは衣緒菜だった。
「何で?彼女、最高に可愛いし、エッチも抜群だし!」
衣緒菜が必死に自分を弁護してくれているようで、菜穂は嬉しかった。しかし、『彼』は首を横に振った。
「彼女はまだ高校生だ。大切な時期だ。大学へ進学してからでも遅くないだろ?それに、今の彼女はどちらかというと、衣緒菜、お前に虜のようだしな」
「へ?」
気の抜けた衣緒菜の顔が面白くて、菜穂は声を上げて笑ってしまった。そんな菜穂の笑顔を見て、衣緒菜は一瞬戸惑ったように肩を竦めて、微笑んだ。笑いは次第に伝染し、部屋中が笑いに包まれた。こんなに笑ったのは随分と久しぶりだった。

物思いに耽っていたら、終電ギリギリになってしまった。もうすぐ最終電車がホームへやってくる。長い一日だった。
(また、『隠れ家』に行きたい)
彼らを見ていたら、進学か就職かで悩んでいた自分がとても小さく思えた。もう答えは出ていた。

都内の大学に進学しよう。親も喜ぶし、きっとみんなも喜んでくれるだろう。

菜穂は携帯電話を取り出し、教えてもらった衣緒菜のメールアドレスを検索し、文字を打ち込んだ。

『また、会いたいです』

送信すると、すぐに返事が返ってきた。

『頑張ってね。愛しているぞ、菜穂ちゃん』

菜穂は込み上げる喜びを抑えて、いつの間にか目の前で扉を開けて待ち構えていた最終電車へ乗り込んだ。

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シリーズ連載 : 私と性奴隷たちとの日々